認知症高齢者に対する疼痛評価はどのように行っているのか?

今回は,介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態調査を行った論文を紹介します.

 

何回も紹介していますが、がん患者さんの痛みは大きな問題です。

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特に高齢者では痛みの強さや痛みの部位などが日常生活に大きな支障をきたすということでした。

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2022年7月4日

しかし、高齢になるにつれて認知機能が低下して疼痛の評価が難しくなったりしてきますよね。

特に、乳がん患者さんは治療の影響もあって、認知機能が低下しやすいという報告もあるので、高齢者やがん患者さんでは認知機能が低下した場合の疼痛評価が重要になってきます。

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2022年4月20日

 

実際に認知機能低下がある患者さんに対して、どのように疼痛評価を行っているのかを知りたいですよね。

そこで、今回は,介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態調査を行った論文を紹介します.

まとめ
・介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態調査を行った論文を紹介。

・3 職種の疼痛評価の実施割合はいずれも高く, 認知症高齢者の身体可動を伴う生活場面において 疼痛評価が実施されていた。

・3 職種とも に約半数が疼痛評価に困難を感じており,職種間の情報共有が不十分である可能性が推察された。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態調査を行った内容になっています。

「山本 道代, 宮本 真由香, 尾崎 香麟, 他. 介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態. 日本健康学会誌. 88 巻 (2022) 」 2022年に発行された最新の論文になります。

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対象

山本 道代, 宮本 真由香, 尾崎 香麟, 他. 介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態. 日本健康学会誌. 88 巻 (2022)

対象者は,介護老人保健施設で看護業務,介護業務,機能訓練業務に従事する専門職です。

対象者全体の職種内訳は,看護職34名(29.1%), 介護職51 名(43.6%),リハ職32 名(27.4%)で す。

看護職は,女性33 名(97.1%),平均年齢48.9 ±8.1 歳,職業経験年数22.0±7.5 年, 疼痛評価を実施している28 名(82.4%)でした。

介護職は,女性34 名(66.7%),平均年齢38.7 ±10.4 歳,職業経験年数11.0±6.2 年,疼痛評価を実施している31 名(60.8%)でした。

リハ職は,女性17 名(53.1%),平均年齢36.0 ±7.1 歳,職業経験年数10.5±5.9 年,疼痛評価を実施している26 名(81.3%)でした。

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方法

調査項目は以下の通りです。

 

1)疼痛のセルフレポートが困難な認知症高齢者に対する疼痛評価の実施頻度

1.1 日1 回,2.1 日2 回,3.1 日3 回,4. 疼痛の 訴えがあったとき,5. その他,6. 疼痛評価を行っていない、から選択してもらっています。

2)使用している疼痛評価ツール

1. FRS, 2. VAS,3. NRS,4. APS-J,5. 日本語版DOLOPLUS- 2,6. その他,7. 使っていない、から選択してもらっています。

3)疼痛評価ツールの必要性

「必要ない」から「必要であ る」の5 段階で調査しています。

4)疼痛評価を行う困難感

「難しく ない」から「難しい」の5 段階で調査しています。

5)疼痛評価の実施場面

臥床,起居,移乗,移動,階段昇降,食事, 整容,入浴,着替え,トイレ動作,処置・検査, リハビリテーションの各項目について,「常に着目 している」から「全く着目していない」の4 段 階で調査しています。

6)疼痛評価の項目

訴え,動作,表情,睡眠, 移動,自立度の低下,生理反応,コミュニケーショ ン,行動心理症状の各項目について「常に観察し ている」から「全く観察していない」の4 段階で調査しています。

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結果

山本 道代, 宮本 真由香, 尾崎 香麟, 他. 介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態. 日本健康学会誌. 88 巻 (2022)

こちらの表は疼痛評価ツールの使用と疼痛評価の困難感の結果です。

看護職は,疼痛評価ツールを使用しているのは10 名 (35.7%)で、 介護職は5 名 (16.1%)で、リハ職は,14 名 (53.8%)でした。

疼痛評価を行う困難感は,難しいと答えたのが看護職は53.6%、介護職は45.2%、リハ職は69.2%でした。

職種間において,疼痛評価ツールの使用(p= 0.014),疼痛評価ツール使用の必要性(p=0.028), 疼痛評価を行う困難感(p=0.003)に有意差がみられた。

リハ職の方が、疼痛評価ツールを使用する率が高く、ツール使用の必要性や疼痛評価の困難感を強く感じているようですね。

評価ツールは看護職がフェイススケール、リハ職がVAS、NRSを使用するのが多くなっています。

認知機能低下があると、フェイススケールのような表情の変化の方が答えやすいと一般的に言われていますね。

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山本 道代, 宮本 真由香, 尾崎 香麟, 他. 介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態. 日本健康学会誌. 88 巻 (2022)

こちらの表は疼痛評価の場面についての結果です。

階段昇降,食事,入浴の場面において,職種間で着目している割合に有意差がみられました。

階段昇降に着目していた割合は,看護職75.0%,介護職61.6%,リハ職96.0%でした(p=0.009)。

食事に着目していた割合は,看護職68.0%,介護職65.5%,リハ職34.8%でした(p=0.044)。

入浴に着目していた割合は,看護職95.5%,介護職93.3%,リハ職60.9%でした(p=0.002)。

看護や介護職は、リハ職よりも日常生活動作時の疼痛に着目しているという結果ですね。

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結論

3 職種の疼痛評価の実施割合はいずれも高く, 認知症高齢者の身体可動を伴う生活場面において 疼痛評価が実施されていた。しかし,3 職種とも に約半数が疼痛評価に困難を感じており,職種間 の情報共有が不十分である可能性が推察された。

山本 道代, 宮本 真由香, 尾崎 香麟, 他. 介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態. 日本健康学会誌. 88 巻 (2022)

やはりどの職種でも疼痛評価に困難感を感じており、特にリハ職で高かったようです。

今後の課題としては,その場で関わった専門職が職種の特殊性をいかした疼痛評価を行い,さらに職種間で相互理解が可能な情報に変換する工夫が必要ですね。

どの評価ツールが適切かなどの検討も職場で行う必要がありそうです。

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まとめ
・介護老人保健施設における看護職,介護職,リハ職の認知症高齢者に対する疼痛評価の実態調査を行った論文を紹介。

・3 職種の疼痛評価の実施割合はいずれも高く, 認知症高齢者の身体可動を伴う生活場面において 疼痛評価が実施されていた。

・3 職種とも に約半数が疼痛評価に困難を感じており,職種間の情報共有が不十分である可能性が推察された。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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