血液がん移植後の体力低下やフレイルの有症率は?

今回は、血液がん患者さんの移植後のフレイルの有症率について調査した論文を紹介します。

 

最近は、がん患者さんのフレイルについて紹介しています。

高齢がん患者の健康に対する自己評価とフレイルの関係性

2022年4月8日

リハビリの対象となるがん患者さんとしては、血液がんの移植患者さんが多いです。

そこで今回は、血液がん患者さんの移植後のフレイルの有症率について調査した論文を紹介します。

まとめ
・血液がん患者さんの移植後のフレイルの有症率について調査した論文を紹介。

・移植前の時点で老年医学評価にやフレイルに該当する患者は一定数存在する。

・移植後の経過とともにフレイルの有症率は増加する。

・移植6か月後のフレイルや死亡は、ベースラインの老年医学評価やフレイルとは関連しなかった。

・移植前の状態に関わらず、移植後は早期から運動を行うことが望ましいと思われる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、血液がん患者さんの移植後のフレイルの有症率について調査した内容になっています。

「Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199.」、2022年に発行された新しい論文です。

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対象

Data were collected from persons 60 years of age or older undergoing allogeneic stem cell transplantation for hematologic disorders. Between June 2010 and August 2012, patients who were seen in the Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy Center at the University of Texas (UT) MD Anderson Cancer Center were screened for eligibility. After completing their initial examination and pre-SCT screening of cardiac and pulmonary disease and performance status by their medical team in the SCT clinic, only patients whose oncologist recommended SCT were considered eligible. Further eligibility requirements included patients who were 60 years of age and older, had a hematologic malignancy, and were English-speaking. We chose patients 60 and older based on a higher likelihood of undiagnosed, age-related deficits in this population [31]. We excluded people undergoing autologous SCT or SCT for solid tumors. We excluded non-English speaking persons, as only some of the GA tools used in the study had been validated in other languages. For this pilot study, we aimed for a minimum accrual of 50 patients.

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199.

対象は、2010年6月から2012年8月の間に、テキサス大学(UT)MDアンダーソンがんセンターの幹細胞移植および細胞治療センターで血液疾患のために同種造血幹細胞移植を受けている60歳以上の患者さん50名です。

対象者には、60歳以上で血液悪性腫瘍のある患者が含まれています。

自家移植または固形腫瘍の移植を受けている人は除外しています。

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方法

Data were collected from persons 60 years of age or older undergoing allogeneic stem cell transplantation for hematologic disorders. Between June 2010 and August 2012, patients who were seen in the Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy Center at the University of Texas (UT) MD Anderson Cancer Center were screened for eligibility. After completing their initial examination and pre-SCT screening of cardiac and pulmonary disease and performance status by their medical team in the SCT clinic, only patients whose oncologist recommended SCT were considered eligible. Further eligibility requirements included patients who were 60 years of age and older, had a hematologic malignancy, and were English-speaking. We chose patients 60 and older based on a higher likelihood of undiagnosed, age-related deficits in this population [31]. We excluded people undergoing autologous SCT or SCT for solid tumors. We excluded non-English speaking persons, as only some of the GA tools used in the study had been validated in other languages. For this pilot study, we aimed for a minimum accrual of 50 patients.

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199.

包括的な老年医学的評価(GA)とフレイル評価を行っています。

評価は移植前、移植後3か月、および移植後6か月に行っています。

フレイルの評価はフリードらによる、1)自己報告による疲労感、2)自己による低い身体活動-3)自己報告による体重減少、4)低い握力、および5)遅い歩行速度、で定義されています。

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結果

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199.

こちらの表は対象者の特徴を示しています。

登録された患者のほとんどは、若く(60〜64歳)、男性、白人、既婚でした。

患者は高い教育レベルを報告し、ほとんどが雇用されていました。

ほとんどの患者(70%)は急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群(MDS)でした

50人の内33人の患者(66%)は老年医学評価に該当し、11人(22%)はフレイルでした。

特に慢性リンパ性白血病患者さんが老年医学評価に該当していました。

他に老年医学評価に該当する特徴としては、高齢、女性、失業中、移植時に寛解していない患者、パフォーマンスステータスの悪い患者などが挙がりました。

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199.

こちらの表は3ヶ月と6ヶ月のフレイルの割合を示しています。

ベースラインでは50人中11人(22%)が基準を満たしていました。

3か月の時点で、40人の患者のうち22人(55%)がフレイルに該当か死亡していました。

これらのうち、14人(63.6%)はベースラインでフレイルではありませんでした。

6か月の時点で、38人の患者のうち27人(71.1%)がフレイルに該当か死亡しており、そのうち18人(66.7%)はベースラインでフレイルではありませんでした。

  

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199

こちらの表は、ベースラインの老年医学評価やフレイルが、移植3か月後、6か月後のフレイルや死亡に関係するかを示しています。

老年医学評価の構成要素は、いずれの時点でも、フレイルまたは死亡と関連していませんでした。

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結論

GA deficits and frailty are prevalent in older adult SCT recipients at baseline and after transplant. Future studies should aim for larger enrollment in order to validate associations between these deficits and outcomes, especially survival, functional status, and quality of life following SCT.

Ombres R, des Bordes JKA, Popat UR, et al. Serial frailty assessments following allogeneic stem cell transplant in older adults: A pilot study. J Geriatr Oncol. 2022 Mar;13(2):194-199

老年医学票の該当やフレイルは、ベースライン時と移植後の高齢成人移植患者に多く見られました。

移植後の経過とともにフレイルの割合は増えていき、それはベースラインでのフレイルや老年医学評価の結果とは関係ありませんでした。

6か月後のフレイルや死亡が、ベースラインの状況と関連がないということは、移植前がどんなに元気であっても、移植後はフレイルに陥らないように注意をしないといけないということですね。

移植前は筋力、体力をつけておくにこしたことはないでしょうし、移植後も体調に合わせて運動するように注意しておきましょう。

この研究は症例数が50名と少ないので、今後は症例数が増えて追加の研究を行うことが課題となっているようです。

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まとめ
・血液がん患者さんの造血幹細胞移植後のフレイルの有症率について調査した論文を紹介。

・移植前の時点で老年医学評価にやフレイルに該当する患者は一定数存在する。

・移植後の経過とともにフレイルの有症率は増加する。

・移植6か月後のフレイルや死亡は、ベースラインの老年医学評価やフレイルとは関連しなかった。

・移植前の状態に関わらず、移植後は早期から運動を行うことが望ましいと思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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