今回は、入院中にリハビリを受けた骨転移患者さんが自宅退院するための要因について調査した研究を紹介します。
前回は骨転移患者さんの運動の有効性や安全性、注意すべき動作について紹介しました。
運動は有効であると思いますが、安全に行うためには、痛みが出ないように、ゆっくり動くなど注意点が多くありましたね。
入院中にも骨転移患者さんがリハビリを行うことは多いと思います。
最終的には自宅退院を目標にすることが多いと思いますが、自宅退院できるようになる方はどのような特徴があるのでしょうか?
そこで今回は、入院中にリハビリを受けた骨転移患者さんが自宅退院するための要因について調査した研究を紹介します。
64万人の患者様の声から誕生した腰痛対策マットレス『ドクタータフィ』今回紹介する研究の概要
今回紹介する論文は、入院中にリハビリを受けた骨転移患者さんが自宅退院するための要因について調査した内容になっています。
「Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.」、2021年に発行された論文です。日本の先生が調査した研究ですね。
64万人の患者様の声から誕生した腰痛対策マットレス『ドクタータフィ』対象
2.1. Design We conducted a retrospective observational cohort study of cancer patients with bone metastasis who underwent rehabilitation at Kyoto University Hospital between April 2014 and March 2017. 2.2. Subjects During the study period, 98 patients with bone metastasis received rehabilitation in the rehabilitation unit. No patients were excluded from the study. All patients received physical therapy, occupational therapy, or speech therapy every weekday.
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
対象は2014年4月から2017年3月に京都大学医学部附属病院でリハビリテーションを受けた骨転移がん患者さん98人です。
対象の患者さんは、平日に、理学療法、作業療法、または言語療法を受けています。
64万人の患者様の声から誕生した腰痛対策マットレス『ドクタータフィ』方法
We reviewed the electronic medical records of all patients to determine the response variable for home discharge after treatment. Patients were divided into 3 groups based on whether they were discharged to home, to another facility, or if they died. The medical record for every identified patient was reviewed and studied: age, sex, details regarding Barthel Index (BI) at hospital admission and hospital discharge, Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status (PS) at hospital admission and hospital discharge, Katagiri Score at hospital admission, number of bone metastases, type of bone metastasis (lytic or blastic metastases), length of hospital stay (days), number of times attending rehabilitation therapies, and number of immediate family members living at home, not including the patient.[9]
The following patient-related explanatory variables were studied: age, sex, BI at hospital admission and hospital discharge, PS at hospital admission and hospital discharge, number of bone metastases, type of bone metastasis (lytic or blastic metastases), length of hospital stay (days), number of times attending rehabilitation therapies, and number of immediate family members living at home with the patient
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
治療後の自宅退院の要因を調査、全患者の電子カルテから情報収集を行っています。
患者さんは、自宅退院、転院、死亡の3群に分けられました。
調査項目は年齢、性別、入院時と退院時のBarthel Index(BI)、入院時と退院時のEastern Cooperative Oncology Group Performance Status(PS)、入院時の片桐スコア、骨転移数、骨転移の種類、入院期間、リハビリ実施回数、同居家族の人数です。
結果
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
こちらは対象者の特徴です。
平均年齢は68.6歳で、42人が女性で、56人が男性でした。
平均追跡期間は18.8±3.4カ月となっています。
原発がんは、肺がん36例、前立腺がん15例、乳がん9例、多発性骨髄腫9例、消化器がん5例、子宮がん5例、腎臓がん5例、皮膚がん3例、膀胱がん2例、リンパ腫2例、その他7例です。
これまでのがん治療は、手術25回、化学療法・ホルモン療法94回、放射線療法56回となっています。
やはり、骨転移が多いがん種の症例数が多くなっているようですね。
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
さらに骨転移の部位は、脊椎81、骨盤49、大腿骨35、肋骨16、肩甲骨6、上腕骨3、頭蓋骨3、鎖骨2、胸骨1、前腕骨1となっています。
骨転移の総数は、4人が6個、8人が5個、14人が4個、23人が3個、24人が2個、17人が1個となっています。
骨転移の治療法は、手術17例、化学療法・ホルモン療法62例、放射線療法81例です。
骨転移のタイプは、溶解性79例、造骨性19例でした。
平均在院日数は48.2日±43.7日で、リハビリテーションの実施は、理学療法が95例、作業療法が22例、言語療法が3例でした。
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
入院時の平均BIは51.5±27.3、退院時のBIは55.0±24.9でした。
BIというのはADLの評価の点数で、入浴や歩行、階段などの日常生活動作が自立していれば100点になります。50点台というのは、自立できていなくて、介助が必要な状況ということです。
入院時の平均PSは2.54±0.94、退院時のPSは2.48±0.97でした。
PSは日中に臥床していなければ0で、点数が増えるにつれて臥床傾向となり、4になるとほぼ寝たきりということです。2-3というのは比較的臥床傾向ということになります。
同居家族数は4名が4名、11名が3名、28名が2名、38名が1名でした。一人暮らしの患者は17人です。平均家族数(患者を含まない)は1.49人となっています。
自宅退院は50名、他施設への退院は38名、死亡は10名でした。
64万人の患者様の声から誕生した腰痛対策マットレス『ドクタータフィ』Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
群間で比較すると、在宅退院患者の入院時BI(62.0±4.1)は、転院患者(43.8±4.1、P=0.0003)および死亡患者(30.5±7.6、P=0.0012)より有意に高くなっていました。
さらに、在宅退院患者の入院時PS(2.22±0.12)は、転院患者(2.73±0.142、P=0.0087)および死亡患者(3.36±0.26、P=0.0002)より有意に良好でした。
在宅退院患者の同居家族数(1.71±0.90)は転院患者(1.16±0.99、P = 0.0145)より有意に多くなっていました。
骨転移の数は,自宅退院者では2.67±0.21,他施設退院者では2.60±0.24,死亡者では2.55±0.44であり,差はありませんでした.
骨転移の種類も群間で差はありませんでした。
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
こちらはROC曲線という解析方法です。
細かい説明は難しいので省きますが、結果として、入院時のBIが60点以上、入院時のPSが2以下、同居家族数が1人以上という項目が自宅退院の予測因子となっています。
結論
In conclusion, in rehabilitation for cancer patients with bone metastasis, patients’ BI and PS at the time of hospital admission and the number of family members living at home must be examined when considering home discharge. The predictive factors for home discharge are a BI of more than 60 points at admission, a PS level of more than 2 at admission, and more than 1 family member living at home. Rehabilitation for cancer patients with bone metastasis can be performed without SREs. Inter-professional team collaboration is also essential in preventing SREs. Researchers should continue to present evidence of the effectiveness of rehabilitation for cancer patients. Future research is needed to investigate the effectiveness of rehabilitation for cancer patients and the predictive factors for activity improvement by rehabilitation.
Ikeguchi R, Nankaku M, Yamawaki R, et al. Immediate family support is important to discharge home for cancer patient with bone metastasis after rehabilitation: A retrospective study. Medicine (Baltimore). 2021 Sep 17;100(37):e27273.
結論として、骨転移を有するがん患者のリハビリテーションにおいて、自宅退院を検討する際には、患者の入院時のBIやPS、在宅で生活する家族の人数などを調べる必要があります。
在宅退院の予測因子としては、入院時のBIが60点以上、入院時のPSが2以下、在宅で生活している家族が1人以上であることが挙げられます。
ADLやPSなどの体の動きがいいことが自宅退院の要因であることは予測していましたが、同居家族がいることも自宅退院に大事なことのようですね。
自分で日常生活を自立されられるように頑張ることも大事ですが、周りのサポートも受けられるように環境作りが重要ですね。
64万人の患者様の声から誕生した腰痛対策マットレス『ドクタータフィ』・骨転移患者さんは比較的介助が必要な方が多く、臥床傾向であることが認められた。
・自宅退院を予測する因子として、BIが60点以上、PSが2以下、同居家族が1人以上という項目が抽出された。
・自分で日常生活を自立されられるように頑張ることも大事ですが、周りのサポートも受けられるように環境作りが重要である。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
最近のコメント