進行したがん患者で問題となる悪液質について解説

今回の記事では、進行したがん患者さんで問題となる悪液質について紹介します。

以前の記事で、進行がん患者さんや悪液質患者さんが運動に対してどのように感じているのかを紹介しました。

進行がん、悪液質の患者さんは運動についてどのように感じているのか?

2022年5月25日

 

悪液質というのは、がんが進行した状態のようなイメージを持っている方が多いと思いますが、具体的な疫学や診断基準などは知らない方が多いのではないでしょうか?

 

がんを治療する医療者も、がん患者さんも、がんの病態を知ることは非常な大事なことですので、ぜひとも悪液質についての知識をまとめておきましょう。

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まとめ
・進行したがん患者さんで問題となる悪液質について紹介。

・がん悪液質とは、「通常の栄養療法では完全に回復することができず,進行して機能障害に至る,骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無にかかわらず)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されている。

・Precachexia(前悪液 質),cachexia(悪液質),refractory cachexia(不応性悪 液質)の 3 つのステージに分類される。

・多種多様な因子が骨格筋や 脂肪組織だけでなく,脳,肝臓,骨,膵臓,心筋,消化 管といった全身の臓器に作用することで悪液質が惹起されている。

・悪液質の有病率は膵臓がんが最も高く, 消化器がん, 骨軟部肉腫,婦人科がん,頭頸部がん、進行肺がんの順で多い。

がん悪液質の診断

悪液質は 2006 年に米国で開催された Cachexia Consensus Conference において Evans らによ り「基礎疾患に関連して生ずる複合的代謝異常の症候群 で,脂肪量の減少の有無にかかわらず,骨格筋量の減少 を特徴とする」と定義されています.

 

その後.Fearon らは 2011 年の European Palliative Care Research Collaborative:EPCRC の コンセンサスレポートの中で,がんによる悪液質を「通常の栄養療法では完全に回復することができず,進行して機能障害に至る,骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無にかかわらず)を特徴とする多因子性の症候群」 と定義しています。

 

つまり、特徴としては筋肉が減少して、体重が減っていくけれども、食事や栄養補給だけでは回復が難しいような状態ですね。

 

Fearon K, Strasser F, Anker SD, Bosaeus I, Bruera E, Fainsinger RL, et al. Definition and classification of cancer cachexia : an international consensus. Lancet Oncol. 2011;12:489-495.

こちらの図は、悪液質の病期と診断基準を表しています。

 

①Precachexia(前悪液質)

食欲不振や代謝異常を伴うものの、過去6ヶ月の体重減少率は 5% 未満の状態

②cachexia(悪液質)

過去 6 ヵ月以内に,①5% を超える体重減少, ②BMI<20 の場合は 2% を超える体重減少,③サルコペ ニアを合併している場合は 2% を超える体重減少のいず れかがある場合にがん悪液質と診断する

③refractory cachexia(不応性悪液質)

異化亢進かつ治療抵抗性を示し,PS の低下を伴う生命 予後 3 ヵ月以内の状態

異化亢進とは、筋肉の合成より分解が強い状態となっており、どんどん筋肉が減少してしまうような状態のことです。

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がん悪液質の病態生理

がん悪液質に関連する因子としてグルココルチコイドや腫瘍壊死因子(TNF)-α,インターロイキン(IL)-6,成長分化因子(GDF)-15,GDF-11,副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)などがあります.

特に GDF-15 の血液濃度上昇は脳幹の食欲中枢 に直接作用して食欲不振を引き起こし,さらに骨格筋で も過剰発現し筋萎縮を誘発させます.

PTHrP は筋萎縮関連遺伝子の発現が増強させ,安静時エネルギー消費量の増加や除脂肪体重の減少を引き起こすとされています.

 

Siddiqui JA, Pothuraju R, Jain M, Batra SK, Nasser MW. Advances in cancer cachexia: Intersection between affected organs, mediators, and pharmacological interventions. Biochim Biophys Acta Rev Cancer. 2020;1873:188359

こちらの図が示すように、これら多種多様な因子が骨格筋や 脂肪組織だけでなく,脳,肝臓,骨,膵臓,心筋,消化 管といった全身の臓器に作用することで悪液質が惹起されると考えられています。

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がん悪液質の疫学

Sun L, Quan XQ, Yu S. An Epidemiological survey of cachexia in advanced cancer patients and analysis on its diagnostic and treatment status. Nutr Cancer. 2015 ; 67 : 1056-1062.

こちらのグラフは、がん種別の悪液質の有病率を表しています.

悪液質の有病率は膵臓がんで 88.9% と最も高く, 消化器がん, 骨軟部肉腫,婦人科がん,頭頸部がんについで進行肺がんでは 25.8% と報告されています.

他の研究では 531 人の進行非 小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち悪液質患者が 38.7%, 前悪液質状態の患者が 33.8% を占めていました報告されています.

このようながん種の患者さんは、食欲不振、体重減少、筋萎縮が強くなっていないか、注意しておかないとですね。

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今回は、がん悪液質の診断、病態生理、疫学について紹介しました。

悪液質の状態や、なりやすいがん種を理解して、注意しておくことが大事ですね。

 

次回以降は、悪液質が及ぼす影響や、その治療方法について紹介します。

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まとめ
・進行したがん患者さんで問題となる悪液質について紹介。

・がん悪液質とは、「通常の栄養療法では完全に回復することができず,進行して機能障害に至る,骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無にかかわらず)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されている。

・Precachexia(前悪液 質),cachexia(悪液質),refractory cachexia(不応性悪 液質)の 3 つのステージに分類される。

・多種多様な因子が骨格筋や 脂肪組織だけでなく,脳,肝臓,骨,膵臓,心筋,消化 管といった全身の臓器に作用することで悪液質が惹起されている。

・悪液質の有病率は膵臓がんが最も高く, 消化器がん, 骨軟部肉腫,婦人科がん,頭頸部がん、進行肺がんの順で多い。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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