前回は、抗がん剤治療による末梢神経障害（CIPN）の頻度や治療後の機関との関係性について紹介しました。
治療後1か月以内には、約68.1%の患者さんがCIPNを経験し、その後も時間が経つにつれて発生率は減少しますが、6か月後でも30.0%の患者さんがCIPNに悩まされていましたね。
がん患者さんの悩みって数多くありますが、CIPNは実際にはどれくらいのがん患者さんが悩んでいるのでしょうか？
他の悩みと比べるとどれくらい強い悩みになるんでしょうね？
そこで、今回はがん患者さんの悩みについて調査した資料を紹介します。
今回紹介する研究の概要
今回紹介する資料は、静岡がんセンターさんが、がん患者さんの悩みについて調査した内容になります。
「「がんの社会学」に関係する研究グループ2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書. 2016」 少し古いですが2003年～2016年の調査結果をまとめた資料になります。
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方法
調査対象
がん診療連携拠点病院など全国の医療機関で外来通院中のがん患者とがん関連患者団体（患者支
援団体）会員を対象とした調査を実施しています。
a) 医療機関：
外来通院中の 20 歳以上のがん患者
b) 患者団体：
がんに関する患者会･患者支援団体に所属し、20 歳以上で、事前に同意が得られたがん体験者
調査方法
a) 無記名郵送法による自記式アンケート調査
※調査参加者（アンケート回答者）が調査用紙に自分で回答を記入する形式で、無記名で
実施するアンケート調査。記入済み調査票は、委託を受けた調査機関に返送としています。
b) 調査票
調査票は、調査票 A、調査票 B の 2 種類準備し、調査に参加する医療機関や患者団体が、選
択することとしています。
c) 調査項目
① 基本情報としての病気や治療に関すること
② 悩みや悩みへの対応に関すること
③ 治療前･治療中･治療後の悩みや負担
④ あなたご自身に関すること
⑤ 仕事に関すること
d) 自由記述回答の設問
① 悩みや負担：がんと診断された頃、診断から現在に至るまでの間、現在
② 相談内容（相談相手も自由記述）
③ 悩んだ時の自身の対処
④ 悩みを和らげるためにほしいと思った情報や支援
⑤ 治療開始前・治療中・治療終了後に知りたかったこと
結果
回収状況
（全体） 調査票配付数 8,185 通
調査票回収数 4,054 通（内、調査票 A 3,749 通、調査票 B 305 通）
回収率 49.5%
（医療機関）
調査票配付数 5,708 通
調査票回収数 3,546 通
回収率 62.1%
（患者団体）
調査票配付数 2,477 通
調査票回収数 508 通
回収率 20.5%
8000通以上の郵送による大規模調査になっていますね。
今回の結果では基本的に全体の回答数（4,054 通）を母数としてまとめられています。
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「がんの社会学」に関係する研究グループ2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書. 2016
2003年時点では末梢神経障害やしびれといった副作用は10位以内に記載されていませんが、2013年になると悩みの3位にランキングしています。
薬剤の開発とともに副作用も数多く出現するようになってしまい、しびれで悩む方が多くなってきたということですかね。
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「がんの社会学」に関係する研究グループ2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書. 2016
乳がんに関しては、2003年時点でも手術に伴うしびれやツッパリ感というのは悩みの上位にランキングしており、2013年でもそのままとなっています。
しかし、抗がん剤治療に伴う末梢神経障害やしびれといった副作用は2003年に10位以内にはありませんが、2013年になると悩みの3位にランキングしています。
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「がんの社会学」に関係する研究グループ2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書. 2016
大腸がんでは、抗がん剤治療に伴う末梢神経障害やしびれといった副作用は2003年に10位以内にはありませんが、2013年になると悩みの1位にランキングしています。
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結論
2003年には、しびれについての悩みはほとんどありませんでしたが、2013年には抗がん剤に伴うしびれの副作用は悩みの上位にランキングしています。
抗がん剤の種類によってもしびれの出現は変わってきますので、がん種によって悩む割合は変わってくるわけですね。
特に乳がん、大腸がんの患者さんは抗がん剤後のしびれに注意しておいた方がよさそうですね。
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CIPNの発症，症状，評価についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
CIPNの予防・治療についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
・全体では、2003年時点では末梢神経障害やしびれといった副作用は10位以内に記載されていないが、2013年になると悩みの3位にランキングしている。
・乳がんでは、抗がん剤治療に伴う末梢神経障害やしびれといった副作用は2003年に10位以内にないが、2013年になると悩みの3位にランキングしている。
・大腸がんでは、抗がん剤治療に伴う末梢神経障害やしびれといった副作用は2003年に10位以内にはないが、2013年になると悩みの1位にランキングしている。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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