慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴

今回の記事では、慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴について紹介します。

 

前回の記事で、急性痛と慢性痛の違いについて紹介しました。

急性痛と慢性痛の違いについて解説

2022年7月9日

急性痛は痛みの原因に対して薬で治療しますが、慢性痛は痛みのシステムの異常に対して心身が対応できるように運動療法と心理社会的介入が中心となるんでしたね。

 

慢性痛はどの年代でも出現する可能性はありますが、最近では高齢者の疼痛治療というのが注目されています。

高齢者は様々な問題を抱えているので、慢性痛治療でも考慮しなければならないことが多くなってきます。

ですので、高齢者の特徴というのを一度整理したほうがいいでしょう。

 

そこで、今回は、慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴について紹介します。

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まとめ
・慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴について紹介。

・身体機能の低下として、腎機能障害,肝機能障害,消化管機能障害などに注意が必要である。

・軽度認知障害のような脳機能低下や心理的問題にも配慮する必要がある。

・さらには、社会的因子の問題(経済的問題,独居,老々介護など)についても考慮する必要がある。

身体機能の低下

腎機能低下

腎機能に特に影響するような疾患がなくても, 小~細小動脈の内腔狭小化によって腎血流が低下す ることや,加齢による糸球体毛細血管の減少・消失 によって腎機能が低下します.

高齢者では特に合併疾患がなくても約1%/年ずつ低下すると言われています。

さらに、これに糖尿病・高脂血症・喫煙などが悪化因子 として影響することで,結果として高齢男性の約 30%,高齢女性の約 40% が 慢性腎臓病患者となってしまいます。

 

肝機能低下

肝重量は加齢とともに減少し 80 歳代では 10~30% 減少し,さらに肝臓の機能そのものも低下していく .

しかし肝臓は、予備力が大きいので検査データにはすぐには反映されませんので、薬を飲んでいる高齢者は定期的に血液検査を検討したほうがいいでしょう.

 

消化管機能低下

消化管機能も加齢によって影響を受けます.

胃は加 齢によって粘膜保護機能が低下するため消化性潰瘍のリスクが増加するので、ロキソニンのような非ステロイド系抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)を処方している場合には注意が必要となります.

小腸の消化液分泌機能も低下する場合があり消化吸収が悪くなってしまいます.

大腸では蠕動運動の低下や,肛 門括約筋の収縮力の低下,腹圧の低下などから,便 秘を起こしやすくなります.

結果として脱水や栄養障害を起こしやすくなり、栄養障害によって,薬剤の作用が想定よりも強く現れることもあるので注意が必要です.

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脳機能の低下

脳機能の低下は認知症として現れる場合が多く. 認知症の高齢者における有病率は 8~10% とされています .

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

また,上記のような定義からなる軽度認知症にも注意が必要です。

65 歳以上で軽度認知症(MCI: Mild Cognitive Impairment)の割合は 15~25% と 推定されています

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心理的問題

心理的問題は認知症と鑑別するひつようがあります.

高齢者の 1.8% に大うつ病,9.8% に小 うつ病,13.5% に臨床的に明らかな抑うつ状態が認 められるという報告もありますが,認知症と合併することもありえるので,鑑別はかなり困難です.

家族など第三者から見て,意欲の低下,食欲不振, 睡眠障害などがみられた場合には,専門の精神科に 紹介することも検討したほうがいいかもしれません.

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社会因子の問題

高齢者の慢性痛治療において,社会的因子の問題もだいじになってきます.

経済面としては、所得平均は全世 帯では 551 万円だが,高齢者世帯では 335 万円と 6 割に減少してしまいます.

また,世帯による格差も大きく,家 計にゆとりがない世帯が 25% 程度ある一方で,家計にゆとりがあり全く心配がないという世帯も 20% 程度存在するようです .

「薬などの治療費が高くて困っている」という高齢者も増加してきているので、不要な薬剤や処置を できる限り減らしつつ,ソーシャルワーカーなどの援助を求めることも考慮する必要があります.

 

さらには,最近では高齢夫婦のみの世帯が増えてきており、「老老介護」が問題となっております。

同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護の うち,介護をする側と受ける側がお互いに 65 歳以上 の「老老介護」の割合は約 60% とされています。

介護する側もされる側も認知機能低下のリスクもありますので、薬剤管理も含めて注意が必要になってきますね。

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このように、高齢者は多くの問題を抱えていることが多いですので、高齢者の慢性痛を治療する場合には,身体諸機能の低下(腎機能障害,肝機能障害,消化管機能障害,脳機能低下など),様々な合併疾患とその治療薬,社会的因子の問題(経済的問題,独居,老々介護など)について考慮する必要があるということですね.

まとめ
・慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴について紹介。

・身体機能の低下として、腎機能障害,肝機能障害,消化管機能障害などに注意が必要である。

・軽度認知障害のような脳機能低下や心理的問題にも配慮する必要がある。

・さらには、社会的因子の問題(経済的問題,独居,老々介護など)についても考慮する必要がある。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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