がんの痛みに使用するオピオイドの疫学や問題点について解説

今回の記事では、がんの痛みに使用するオピオイドの疫学や問題点について解説します。

以前、がん患者さんの痛みの治療として鎮痛薬を紹介しました。

がん患者の痛みに対する治療~鎮痛薬について~

2022年2月26日

鎮痛薬の種類としては、オピオイド、NSAIDs、アセトアミノフェン、鎮痛補助薬などが挙げられます

 

でも、オピオイドというと、医療用麻薬が多いので、なんだか使用するのを躊躇してしまいがちですよね。

 

そこで、今回は、がんの痛みに使用するオピオイドの疫学や問題点について解説します。

記載内容は、Kalso Eija, 井関 雅子. Chronic pain and opioids —how to control proper prescribing ?. PAIN RESEARCH/37 (2022) 、から引用させていただいております。

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まとめ
・がんの痛みに使用するオピオイドの疫学や問題点について解説。

・海外ではオピオイドの過剰摂取や依存に関して、多数報告されている。

・周術期もオピオイドは非常に有効だが、長期間の使用は濫用リスクが高くなるので注意が必要である。

・緩和ケアにおけるオピオイドは、複数の投与経路や種類を選択可能であり,状況に応じて処方が可能である。

・慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬使用は、疼痛緩和も限定的であり,む しろ長期使用によって直接もたらされる有害事象が増えるので注意が必要である。

オピオイド鎮痛薬の疫学─処方と死亡について─

アメリカでは,80 年代終わりから 90 年代初 めに経口オピオイド鎮痛薬の供給が開始されたため、オピオイド鎮痛薬の不適切使用や過量摂取による死亡が,オピオイドクライシス として大きな社会問題となりました。

 

ただし米国疾病予 防管理センター (CDC)の調査によると,過去10 年において後半では経口オピオイド鎮痛薬の処方は減少しているが,その反面,ヘロインやフェンタニル、トラマドールの使用が増えており,この増加は現在も継続しているようである。

 

ヨーロッパの状況はアメリカとは大きく異なり,オキシコド ンの処方は着実に増加していますが,それ以外の強オピオイド鎮痛薬の処方は横ばいです。

 

フィンランドの調査では, オピオイド鎮痛薬の不適切な使用が 2005 年に0.13~0.21%,2012 年には 0.38~0.43%であ り (Häkkinen M, Duodecim 2015; 131: 711),薬物依存者における死亡件数の増加が,特にプレガバリンとオキシコドンの両方を使用する者において多いという報告もあります。

オキシコドンやその他のオピオイド鎮痛薬の血中濃度が下がった場合に患者は不安を覚 え,高用量のプレガバリンを使用する傾向にあるようです。 

 

2017 年の時点で, 4050 万人 が オピオイド鎮痛薬 に 依 存 し , 109500 人が過剰摂取により死亡しています(TheGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study, Lancet 2018; 392: 1789‒858)。

これは、海外の論文ですので、日本の場合はもっと少ないと思いますが、注意が必要でしょうね。

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周術期におけるオピオイド

オピオイド鎮痛薬は,慎重に使用した場合には急性術後痛にも非常に有効です。

 

悪い点としては,呼吸抑制,悪心,鎮静,便秘,尿閉などの副作用が手術後の回復の遅延や活動低下を招く可能性があることです。

 

その他の問題点としては,①病院での急性期管理から在宅 管理への移行に伴いオピオイド鎮痛薬の誤用, ② オピオイド鎮痛薬のみの投与量の増大,③ 個々の患者に合わせた処 方をしていない,④ オピオイド鎮痛薬が不要 になった時点でも投与が継続されている,など があげられます。

フィンランドにおける乳がん術後の大規模調査では,患者の一部に最初の 1 週間弱オピオイド鎮痛薬を必要としていましたが,北米では,強オピオイドを術後数ヶ月にわたり処方さ れていたという例もあります。

 

多くの研究をまとめた結論としては、オピオイド鎮痛薬使用期間が 1 週間延びるごとに濫用リスクは 3 割高まるらしいですので、術後疼痛管理にオピオイド鎮痛薬を使用する場合 には,必要最小限の期間とする必要があります。

術後の長期間のオピオイドが処方されている場合には注意したほうがいいですね。

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緩和ケアにおけるオピオイド

日本ではオピオイドが使用されるのは、がん患者さんや緩和ケアの場面が多いです。

緩和ケアにおけるオピオイド鎮痛薬の良い点として,緩和ケア時に急性痛や終末期の痛みの 緩和において生活の質を改善するために極めて重要な役割を担っていることです。

また効果的な鎮痛や不安緩和が得られ,経口,経皮,舌 下,経静脈,皮下注射 脊髄 (くも膜下腔 硬 膜外腔)と複数の投与経路の選択も可能であり,即効性のあるものから徐放性,持続性と豊富な種類があります。

 

悪い点としては,周術期とは若干異なり,悪心と便秘が主な有害事象となります

他の問題点として,① 処方量が患者にとって不十分もしくは過量投与になる可能性があること, ② オピオイド鎮痛薬以外の他の治療手段が無視される場合があること,③ 患者が死,家族, 経済状況,過去の出来事などに関して大きな不安を抱いている場合,単にオピオイド鎮痛薬を処方するのではなく心理士や精神科医の関与を求めた方がはるかに良い,ことなどになります。

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慢性疼痛におけるオピオイド

最近は日本でも非がん性疼痛に対してオピオイドを使用することも増えてきました。。

海外でも、関節疾患等、幅広い疾患に対してオピオイドを使用する場合があります。

 

慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬使 用は、疼痛緩和も限定的であり,む しろ長期使用によって直接もたらされる有害事象が増えるなど,悪い点の方が目立ちます。

悪い点 として,呼吸抑制・死亡,悪心,鎮静・事故, 抑うつ,便秘,尿閉,痒み,発汗,ホルモン異 常,免疫抑制,耐性と痛覚過敏,依存と濫用があります。

他の問題点としては,本来処方すべきでない適 応や患者にオピオイド鎮痛薬が処方されること, また長期間に投与されることが挙げられます。

 

オピオイド鎮痛薬を処方されている方 が骨折率が高い (Solomon DH et al., Arch Intern Med 2010; 170: 1968‒78),オピオイド鎮痛薬を 高用量長期使用するほど,うつの発生が高まる(Scherrer JF et al., J Gen Intern Med 2014; 29: 491‒9)などの報告もあるので注意が必要です。

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オピオイドは上手に使えば非常に効果的ですが、疫学や適応などをしっかり理解して使用する必要がありますね。

まとめ
・がんの痛みに使用するオピオイドの疫学や問題点について解説。

・海外ではオピオイドの過剰摂取や依存に関して、多数報告されている。

・周術期もオピオイドは非常に有効だが、長期間の使用は濫用リスクが高くなるので注意が必要である。

・緩和ケアにおけるオピオイドは、複数の投与経路や種類を選択可能であり,状況に応じて処方が可能である。

・慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬使用は、疼痛緩和も限定的であり,む しろ長期使用によって直接もたらされる有害事象が増えるので注意が必要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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