がん患者の痛みに対する鎮痛薬の使い方

前回は、がんサバイバーも知っておきたい疼痛や痛みについて紹介しました。

がん患者の痛みの原因、評価について解説

2022年2月25日

疼痛をちゃんと評価して分類することが、適切な治療につながるんでしたね。

では、適切な治療というのはどのように行うのでしょうか?

疼痛の治療として、最優先されるのは、やはり鎮痛薬ですね。

ただし、鎮痛薬って実はたくさんの種類があって、その使い分けが重要になってきます。

がんサバイバーの方がそこまで細かく知っておく必要はないと思いますが、ある程度の種類は知っておいて使い分けるようにしておいた方がいいと思います。

そこで今回は、がんサバイバーも知っておきたい鎮痛薬について紹介します。

首・肩・腰の痛みを寝てるうちに治したい!

徐放性製剤と速放性製剤(レスキュー)

まず、鎮痛薬の大きな分類方法として徐放性製剤と速放性製剤があります。

徐放性製剤とは1日1-2回飲むだけで、長く作用するような鎮痛薬です。

速放性製剤とは、よく「レスキュー」と呼ばれていますが、短時間で早く効くような鎮痛薬です。

これらの使い分けは、痛みのパターンを把握する必要があります。

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版. 金原出版

痛みのパターンはこのような1-4のパターンが考えられます。

3や4のように1日の内で痛みが強い時間帯が長い場合には、1日の内で鎮痛薬が長く作用するように徐放剤を使用したほうがいいです。

それに対して、2のような普段痛みがないけど、1日の中で何回かだけ痛くなるような場合は、徐放剤を使用していると、痛みがないのに鎮痛薬が作用している時間が多くなってしまいますね。

そのようになると、不要な鎮痛薬の使用で副作用が生じる場合があります。

そこで、痛みが出現するときにだけ、上手にレスキューを使用することが必要になるというわけです。

3のような基本的に痛いけど、1日の中で痛みが強くなることが何回かある場合には、基本的な痛みは徐放剤で対応して、急に強くなる疼痛に対してレスキューも使用するという形ですね。

このように、自分の痛みのパターンに合わせて、徐放剤とレスキューを組み合わせるようにしましょう。

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鎮痛薬の種類

がん患者さんの痛みに対する鎮痛薬は,①オピオイド②非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal
Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)③アセトアミノフェン④鎮痛補助薬といった種類があります。

それぞれについて解説していきます。

 

オピオイド

オピオイドとは,中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体に反応する鎮痛薬の種類を指します。

ざっくり言うと、「医療用麻薬」の大半がオピオイドとなりますので、オピオイド≒医療用麻薬と考えていいでしょう。

ただし、トラマドールのように医療用麻薬ではないオピオイドも一部存在はしますので、誤解の内容にしておいてください。

「医療用麻薬」といったら驚くかもしれませんが、最近では「医療用麻薬」はがん患者さんの鎮痛薬として一般的に使用されています。

痛みを軽くするために使用する分には、比較的安全に使えるようです。

どうしても「麻薬」って響きにびっくりしちゃいますよね。

でも、オピオイドは、がんの浸潤による痛みに対して効果が高いので、ガイドラインでも中等度の疼痛に対して使用することが推奨されています。

さらに、オピオイドは持続する安静時痛に対して徐放性製剤、急激に増強する疼痛に対してレスキューというように使い分けができますので、うまく使うようにしましょう。

鎮痛薬の種類としては、一番有名なのはモルヒネですね。

それ以外にも、オキシコドンやフェンタニルなど、最近は多くのオピオイドが使用できますので、うまく調整してもらうようにしましょう。

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非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)

NSAIDsは、皆さんが鎮痛薬として一番イメージしやすいものではないでしょうか。

炎症を抑えて痛みをとってくれるお薬になります。

いわゆる傷で腫れたり熱を持っている部分の痛みを減らしてくれるような作用になります。

炎症に対して効果があるので、がんそのものへの効果も期待できますし、骨転移や変形性関節症などの痛みに対しての使用が推奨されます。

鎮痛薬の種類としてはロキソプロフェンなどが有名ですね。

ただし、漫然と使用しすぎると胃に負担がかかる副作用があるので注意しましょう。

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、最も副作用が少ない鎮痛薬になります。

鎮痛薬の種類としてはカロナールなどが有名です。

子供の解熱剤なんかでも使用されますね。

鎮痛効果は期待できるんですが、炎症を抑える作用がないことに注意です。

つまり、炎症が起こってすごく腫れている場所の痛みなんかには効果が薄い可能性があるということです。

ただし、副作用は少ないので、他の鎮痛薬が副作用がきつくて使用できない方なんかは試してみた方がいいでしょう。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬とは、その名前の通り、鎮痛薬だけでは十分に痛みが取れない場合に補助するお薬となります。

補助薬というくらいなので、もともと鎮痛薬として開発されたものではない薬になります。

例えば、プレガバリンは抗てんかん薬、デュロキセチンは抗うつ薬として使用されているものを、鎮痛補助薬として使用するという形です。

従来の鎮痛薬で効果が薄い神経障害性疼痛などに対して、効果が期待できます。

じんじんびりびりするような痛みが強い場合には試してみてもいいかもしれません。

 

少し難しい鎮痛薬のお話でしたが、自分の現在の痛みがどのような痛みで、どのような鎮痛薬を使用しているのかは少し考えてみてもいいかもですね。

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まとめ
・がんサバイバーも知っておきたい鎮痛薬について紹介。

・持続する痛みには徐放性製剤、突然強くなる痛みにはレスキューを使用する。

・がんの疼痛にはオピオイド、炎症の痛みにはNSAIDs、神経障害性疼痛には鎮痛補助薬など痛みに応じて鎮痛薬を調整する。

・自分の現在の痛みがどのような痛みで、どのような鎮痛薬を使用しているのかは少し考えてみてもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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