乳がんと前立腺がんの骨粗鬆症になりやすい治療は?【レビュー解説】

今回は、乳がんと前立腺がんのがん治療による骨量減少についてまとめたレビューより、骨粗鬆症になりやすい治療法について記載している内容を紹介します。

がん患者は筋力や体力低下だけでなく、骨粗鬆症にも注意する必要があることは、以前紹介いたしました。

がん患者の身体機能低下~骨粗鬆症について~

2022年2月24日

 

数多いがん種の中でも、乳がんや前立腺がんなどが特に骨粗鬆症に注意が必要と言われています。

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2023年7月13日

それでは、特にどのような治療法の時に骨粗鬆症に注意する必要があるのでしょうか?

 

そこで今回は、乳がんと前立腺がんの骨粗鬆症になりやすい治療について記載している内容を紹介します。

記載内容は、Cancer Treatment-Induced Bone Loss in Women With Breast Cancer and Men With Prostate Cancer. Taxel P, Faircloth E, Idrees S, Van Poznak C. J Endocr Soc. 2018 May 21;2(7):574-588、から引用させていただいております。

まとめ
・乳がんと前立腺がんの骨粗鬆症になりやすい治療について記載している内容を紹介。

・乳がんの化学療法は早発性卵巣不全と関連しており、骨密度低下に注意が必要である。

・ホルモン療法は骨再吸収の速度が加速されるため、骨密度低下に注意が必要である。

・放射線療法は、骨への血管供給の中断と、骨芽細胞機能を阻害し破骨細胞新生を相互に増加させる影響があるため、骨密度低下に注意が必要である。

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化学療法

化学療法は、前立腺がんと乳がん患者さんにおいて、ネオアジュバントまたはアジュバント治療という、補助的な治療として使用されることがあります。

閉経後女性における化学療法は、1年間の前向き研究では、化学療法を受けていない乳がん患者に比べて骨量減少と関連していました。

がんの治療に用いられる化学療法は、分裂の早い細胞を傷つけ、閉経前の女性に用いると、しばしば卵巣機能不全と関連し、閉経は平均的な自然閉経より約10年早く起こります。

早発性卵巣不全は、化学療法を受けた女性の40%~95%に発生し、年齢が高くなるほど早発卵巣不全の割合が高くなるようです。

そのことが原因で、化学療法を行うと骨粗鬆症のリスクが高くなるようですね。

 

前立腺がんでは、化学療法は一般的に骨転移のある転移性疾患の場合に使用されます。

ドセタキセルは、非転移性疾患においてアンドロゲン除去療法(ADT)とともに使用されます。

ADTの使用は骨密度低下と関連することは報告されていますが(後述)、早期前立腺がんに対する化学療法の使用および骨の健康に対するその影響に関するデータは十分ではありません。

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ホルモン(内分泌)療法

ホルモン感受性乳がんまたは前立腺がんの成長の可能性を減少させる治療法には、性腺ホルモン産生を阻害することが含まれます。

骨は内分泌に反応する器官であるため、エストロゲンまたはアンドロゲンが減少すると、骨再吸収の速度が加速される可能性があります。

閉経前乳がんの〜60%がホルモン受容体陽性であり、閉経後乳がんの〜80%がホルモン受容体陽性とされています。

 

前立腺がんでは、アンドロゲンがアンドロゲン受容体を介してがん細胞の成長および増殖を刺激します。

性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストまたはGnRHアンタゴニスト(ADTとしても知られている)は、一般的に使用されている治療法です。

前立腺がん患者では、33%~70%が疾患の経過中のある時点でGnRH-agonistを投与されることになります 。

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抗エストロゲン療法

ホルモン受容体陽性の乳がんでは、抗エストロゲン療法が治療の主流となっています。

タモキシフェンは、乳房内では閉経の有無にかかわらず抗エストロゲン作用を示し、骨内ではエストロゲンアゴニストとして作用します。

タモキシフェンを唯一のアジュバント抗エストロゲン剤として使用する場合、治療期間は10年です 。

タモキシフェンにアロマターゼ阻害剤(AI)を順次使用する場合は、治療期間が短くなる可能性があり、治療期間はAIの使用によって影響されます。

AIは、チトクロームP450 CYP 19ファミリーのアロマターゼ酵素を阻害することにより、主に脂肪組織におけるアンドロゲンからエストロゲンへの変換を阻害し、血清エストロゲン値を大きく低下させます。

AI使用にはいくつかの戦略があり、AIで始めて5年、タモキシフェン2〜3年後にAIを使用、またはタモキシフェン5年後にAIを使用するなどがあります。

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放射線療法

放射線療法は、手術や全身療法と併用される局所療法です。

乳がんおよび前立腺がんの治療において、早期癌の局所腫瘍制御および骨転移を含む進行癌の緩和のために一般的に使用されています。

放射線治療の生物学的標的は、がん細胞において修復機構の範囲を超えた広範なDNA損傷を誘発し、最終的に有糸分裂細胞死を誘導することです。

しかし、骨への血管供給の中断と、骨芽細胞機能を阻害し破骨細胞新生を相互に増加させる影響もあります。

これらの影響は、線量に関連しており、照射野内の骨量減少と関連している。

放射線毒性には、骨折のリスクを高める骨減少または骨粗鬆症、および血管壊死、髄膜線維症、および二次悪性腫瘍のリスクが含まれます。

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まとめ

以上が乳がんや前立腺がんに対して、骨粗鬆症をきたす可能性がある治療でした。

 

ホルモン療法は骨密度低下することが有名ではありますが、化学療法や放射線療法も骨密度低下するメカニズムはあるようなので注意する必要がありますね。

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まとめ
・乳がんと前立腺がんの骨粗鬆症になりやすい治療について記載している内容を紹介。

・乳がんの化学療法は早発性卵巣不全と関連しており、骨密度低下に注意が必要である。

・ホルモン療法は骨再吸収の速度が加速されるため、骨密度低下に注意が必要である。

・放射線療法は、骨への血管供給の中断と、骨芽細胞機能を阻害し破骨細胞新生を相互に増加させる影響があるため、骨密度低下に注意が必要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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