がんのむくみやリンパ浮腫は、採血、注射、血圧測定と関係するのか?

前回の記事では、採血や注射等が、意外とリンパ浮腫を増悪させるかははっきりしていないということを紹介しました。

これはいいの?ダメなの?意外とリンパ浮腫との関連が不明な5つの項目

2023年6月11日

 

紹介した内容は、ガイドラインに記載されていた内容なんですが、前回の記事だけでは、どんな調査をして、どんな結果だったかまでは記載されていません。

 

そこで、今回は、リンパ浮腫と採血、注射、血圧測定、飛行機の関係を調査した論文を紹介します。

 

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、乳がんの治療を受けた患者の、採血、注射、血圧測定、外傷、蜂窩織炎、飛行機と腕の容積の増加との関連を調査する内容となっております。

「Ferguson CM, Swaroop MN, Horick N, et al. Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. J Clin Oncol. 2016 ;34(7): 691-8.」2016年に発行された論文です。

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対象

Between 2005 and 2014, patients undergoing treatment of breast cancer at our institution were screened prospectively for lymphedema. 

Ferguson CM, Swaroop MN, Horick N, et al. Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. J Clin Oncol. 2016 ;34(7): 691-8.

 

対象は、2005年から2014年の間に、乳がんの診断を受けた患者さん632名です。

センチネルリンパ節生検のみで、リンパ節郭清が行われていない患者や、両側乳房切除術を受けた患者など、治療内容は様々です。

遠隔転移や再発の患者さんは除外されているようです。

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方法

Bilateral arm volume measurements were performed preoperatively and postoperatively using a Perometer. At each measurement, patients reported the number of blood draws, injections, blood pressure measurements, trauma to the at-risk arm(s), and number of flights taken since their last measurement. Arm volume was quantified using the relative volume change and weight-adjusted change formulas. 

Ferguson CM, Swaroop MN, Horick N, et al. Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. J Clin Oncol. 2016 ;34(7): 691-8.

 

腕の容積の測定は、ペロメーターという機械を使用して、術前と術後に実施しています。

ペロメーターとは、四角い枠の中に腕を通すだけで容積を測定してくれる、すごい機械です。

 

以前の記事で、リンパ浮腫に気付くには周径を測定ましょうと話しましたが、

予防が大事!!リンパ浮腫の発症に気付く3つの方法??

2023年6月8日

この機械だと、それよりも正確に浮腫の状態を把握することができます。

それなりのお値段がするでしょうから、個人ではなかなか買えないでしょうが・・・。

 

そして、採血、注射、血圧測定、腕への外傷、飛行機に乗った回数を報告して、腕の容積との関係性を調査しています

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結果

Ferguson CM, Swaroop MN, Horick N, et al. Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. J Clin Oncol. 2016 ;34(7): 691-8.

統計解析をしたところ、上の図に載っているBMI、腋窩リンパ節郭清(ALND)、局所リンパ節照射(RLNR)、蜂窩織炎(Cellulitis)の4つが、リンパ浮腫と関係ありそうな原因として残りました。

つまり、この時点で 採血、注射、血圧測定、外傷、飛行機は、リンパ浮腫の増悪とあまり関係がないという結果になっていますね。

最終的には、 BMI、腋窩リンパ節郭清(ALND)、蜂窩織炎(Cellulitis)の3つが、リンパ浮腫の増悪と関係があるという結果です 。

肥満やリンパ節郭清、感染はリンパ浮腫が増悪しやすいということですね。

リンパ節郭清は、手術する医師に任せるしかないですが、肥満と感染対策は自分で頑張らないとですね。

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結論

This study suggests that although cellulitis increases risk of lymphedema, ipsilateral blood draws, injections, blood pressure readings, and air travel may not be associated with arm volume increases. The results may help to educate clinicians and patients on posttreatment risk, prevention, and management of lymphedema

Ferguson CM, Swaroop MN, Horick N, et al. Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. J Clin Oncol. 2016 ;34(7): 691-8.

この研究の結果では、蜂窩織炎はリンパ浮腫のリスクを高めますが、採血、注射、血圧測定、飛行機はリンパ浮腫の増悪に関係しない可能性があることを示しています。

むやみやたらに、手術側の腕で採血や注射等をする必要はないですが、反対側で処置がしにくい場合には、手術側でするのも検討してもよさそうですね。

飛行機での旅行もあまり気にせずに行っていいかもしれません。

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まとめ
・乳がんの治療を受けた患者の、採血、注射、血圧測定、外傷、蜂窩織炎、飛行機と腕の容積の増加との関連を調査する内容の論文の紹介。

・BMI、腋窩リンパ節郭清(ALND)、蜂窩織炎(Cellulitis)の3つが、リンパ浮腫の増悪と関係があった。

・採血、注射、血圧測定、外傷、飛行機は、リンパ浮腫の増悪とあまり関係がなかった。

・どうしても反対側で処置がしにくい場合には、手術側で採血や注射をするのも検討してもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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