今日は、がんの治療に役立つかもしれないウェアラブルデバイスについてお話ししたいと思います。
ウェアラブルデバイスとは、FitbitやApple Watchなどのことで、体の状態や運動量などを測定する機器のことです。例えば、心拍数や活動量、睡眠などを測ることができます。
ウェアラブルデバイスは、健康に気をつける人や運動する人に人気ですが、がんサバイバーにも効果的かもしれません。
今回紹介する研究は、がんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用状況について、2019年から2022年の間に調べたものです。
2022年といえば、新型コロナウイルスの流行が始まった年ですね。
新型コロナウイルスのせいで、がんの人は外出や運動ができなくなったり、病院に行くのが難しくなったりしました。
そんなときに、ウェアラブルデバイスが役に立ったのでしょうか?
そこで今回は、コロナ禍でのがんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用状況はどう変化したのかを調査した論文を紹介します。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、コロナ禍でのがんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用状況はどう変化したのかを調査した内容になっています。
「Zhou W, Cho Y, Pu J, Shang S. Trends in wearable device use among cancer survivors in the United States from 2019 to 2022. J Geriatr Oncol. 2024 Feb 14:101729. doi: 10.1016/j.jgo.2024.101729. 」
2024年に発行された最新の論文です。
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方法
この研究は、2019年から2022年までの4年間にわたり、がんの患者さんがウェアラブルデバイスをどの程度使っているかを調べたものです。
具体的な調査方法は以下の通りです:
- 2019年の調査:インターネットでアンケートを行い、がんと診断されたことがある841人から、ウェアラブルデバイスの使用状況や種類、使用目的について回答を得ました。
- 2020年の調査:同様にインターネットでアンケートを行い、がんと診断されたことがある612人から同様の情報を得ました。
- 2021年の調査:アメリカの3つの地域でがんの登録をしている人たちに対してインターネットでアンケートを行い、1213人から回答を得ました。
- 2022年の調査:再びインターネットでアンケートを行い、899人から回答を得ました。
調査項目は以下の通りです。
- ウェアラブルデバイスの使用状況:がんと診断されたことがある人たちに、現在ウェアラブルデバイスを使っているかどうかを尋ねました。また、過去に使ったことがあるかどうかも尋ねました。
- ウェアラブルデバイスの種類:どのような種類のウェアラブルデバイスを使っているかを尋ねました。例えば、FitbitやApple Watchなどのブランド名や、心拍数を測るもの、活動量を測るもの、睡眠を測るものなど、具体的な機能についても尋ねました。
- ウェアラブルデバイスの使用目的:ウェアラブルデバイスを何のために使っているかを尋ねました。例えば、健康管理、運動量の確認、睡眠の質の改善など、具体的な目的についても尋ねました。
解析方法としては、まずは、各年度の調査で得られたデータを集め、それぞれの項目(ウェアラブルデバイスの使用状況、使用するデバイスの種類、使用目的など)について基本的な統計量(平均、中央値、標準偏差など)を計算しました。
さらに、年齢、性別、人種、民族、教育、収入、がんの部位、診断からの経過時間、併存疾患、自己評価による健康状態を考慮した多変量ロジスティック回帰分析を行いました。
これにより、特定の項目がウェアラブルデバイスの使用状況に影響を与えている可能性があることがわかります。
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結果
Table1では、2019年から2022年までの間に、がんサバイバーが健康や活動を監視するために電子的なウェアラブルデバイス(FitbitやApple Watchなど)を使った割合の変化を示しています。
Figure1は、がんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用に関連する要因を示しています。ウェアラブルデバイスの使用者と非使用者の比較を行っています。
年齢、性別、人種、教育レベル、収入、がんの種類、診断からの経過時間、合併症の数、自己評価の健康状態など、さまざまな特徴によって分けられています。
結果を以下にまとめます。
- 2019年から2022年までの間に、がんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用率は、21%から31%に増加しました。この増加は統計的に有意でした。
- ウェアラブルデバイスの使用率の増加は、50~64歳と75歳以上の年齢層、女性、非ヒスパニック系白人、高等教育を受けた人、年収が2万~3.5万ドルと7.5万ドル以上の人、皮膚がんを患った人、2つ以上の合併症を持つ人、健康状態が良いと自己評価した人に顕著でした。
- ウェアラブルデバイスの使用率は、年齢が高くなるほど低く、男性よりも女性が高く、教育レベルや収入が低いほど低く、健康状態が悪いほど低いという傾向がありました。
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結論
- ウェアラブルデバイスの使用率は、2019年から2022年にかけて増加しました。
- この論文では、2019年から2022年までの4年間に、がんの診断を受けた人たちに、ウェアラブルデバイスを使っているかどうかを聞いた調査を行いました。
- その結果、2019年には21%だったウェアラブルデバイスの使用率が、2022年には31%になっていることがわかりました。これは、10%もの大きな増加です。
- この増加は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、ウェアラブルデバイスの需要が高まったことが一因と考えられます。
- ウェアラブルデバイスは、自宅で自分の健康状態をチェックしたり、運動したりするのに便利なので、外出が制限されたり、医療機関への受診が困難になったりする中で、がんの治療を受けている方にとって、重要なツールになったのかもしれません。
- ウェアラブルデバイスの使用率は、年齢や性別、教育や収入などによって差がありました。
- 年齢が若いほど、ウェアラブルデバイスを使っている人が多かったです。
- 特に、18歳から49歳の人たちは、50%近くがウェアラブルデバイスを使っていました。一方、75歳以上の人たちは、24%しかウェアラブルデバイスを使っていませんでした。
- 性別では、女性のほうが男性よりも、ウェアラブルデバイスを使っている人が多かったです。女性は、38%がウェアラブルデバイスを使っていましたが、男性は23%でした。
- 教育や収入が高いほど、ウェアラブルデバイスを使っている人が多かったです。
- 大学卒業以上の教育を受けた人は、32%がウェアラブルデバイスを使っていましたが、高校以下の教育を受けた人は、8%しかウェアラブルデバイスを使っていませんでした。
- また、年収が7万5千ドル以上の人は、35%がウェアラブルデバイスを使っていましたが、2万ドル以下の人は、11%しかウェアラブルデバイスを使っていませんでした。
- ウェアラブルデバイスは、がんの治療を受けている方にとって、様々なメリットがあります。
- ウェアラブルデバイスは、がんの治療に伴う身体的な機能の低下や症状の重さ、生活の質や副作用のリスクなどを、数字で見ることができます。これによって、自分の状態を客観的に把握したり、医師や看護師と共有したりすることができます。
- ウェアラブルデバイスは、運動や睡眠などの生活習慣を改善するのにも役立ちます。ウェアラブルデバイスは、目標を設定したり、フィードバックを受けたり、仲間と競ったりすることができます。これによって、運動や睡眠の質を高めたり、モチベーションを維持したりすることができます。運動や睡眠は、がんの治療に伴う疲労や不安、うつなどを軽減するのに有効です。
がんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用状況を参考にしながら、活用できていない方は積極的に活用することを試みてみましょう!!
24時間365日充電不要の活動量計
コチラにもがん患者さんの活動量を阻害・向上させる要因をまとめています。参考にしてください。
・2019年から2022年で使用率は21%から31%に増加していた。
・ウェアラブルデバイスを使っている人たちは、若い人や女性の人、白人の人、学歴や収入が高い人、皮膚がんの人、健康状態が良い人が多かった。年配の人や男性の人、学歴や収入が低い人、健康状態が悪い人は、ウェアラブルデバイスを使う機会が少ないかもしれない。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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