ウェアラブルデバイスを使用した健康管理について、以前紹介しました。
今日は、大腸がんの生存者にインターネットを使った運動プログラムがどんな効果があるかを調べた論文についてお話しします。
この論文は、インターネットを使って運動を促すことで、体力や生活の質、症状などがどう変わるかを見ています。
大腸がんは、世界で3番目に多いがんで、2番目に多くの人が亡くなるがんです。
最近では、早く見つけたり、治療したりすることで、大腸がんの生存者が増えています。治療が終わっても、健康に気をつけることが大切です。
運動は、治療の副作用を和らげたり、病気になりにくくしたり、生活の質を高めたりするのに役立ちます。
運動の目安は、週に150分くらい、中くらいの強さで動くことです。
しかし、大腸がんの生存者の多くは、十分な運動をしていません。
だから、運動を増やすための効果的な方法を考える必要があります。
インターネットは、今や多くの人が使っている便利なものです。
インターネットを使って、運動のやり方や効果を教えたり、運動の記録や目標をつけたり、応援したりすることができます。
インターネットを使った運動プログラムは、がんの生存者にとって有益な効果があるという研究があります。
しかし、大腸がんサバイバーに対するインターネットを使った運動プログラムの効果は、まだよくわかっていません。
この論文は、大腸がんサバイバーに対するインターネットを使った運動プログラムの効果を調べるために、インターネットを使った運動プログラムを受けたサバイバーと、普通のケアを受けたサバイバーを比べています。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、大腸がんサバイバーに対するインターネットを使った運動プログラムの効果について調べた内容です。
「Su CC, Guo SE, Kuo YW. Effects of internet-based digital health interventions on the physical activity and quality of life of colorectal cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2024 Feb 20;32(3):168. doi: 10.1007/s00520-024-08369-7. 」。
2024年の最新の論文になります。
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対象と方法
この研究では、インターネットを使った運動プログラムの効果を測定するために、以下の二つの方法を使いました。
- 質問紙(SQUASH)を使って、参加者の運動量や運動の種類を尋ねる。
- 歩数計(Actigraph GT3X BT)を使って、参加者の運動量を客観的に測定する。
これらの方法は、研究の開始前、3ヶ月後、6ヶ月後に行われました。また、参加者の生活の質や疲労感、不安やうつの症状も、質問紙(EORTC QLQ-C30, CIS, HADS)を使って測定しました。
この論文では、3つのことを調べています。1つ目は、運動量です。
運動量は、自分で記録したものと、身につけた機器で測ったものの両方で評価しました。
2つ目は、生活の質です。生活の質は、自分の体や心の状態について尋ねるアンケートで評価しました。3つ目は、疲労感です。
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結果
Su CC, Guo SE, Kuo YW. Effects of internet-based digital health interventions on the physical activity and quality of life of colorectal cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2024 Feb 20;32(3):168. doi: 10.1007/s00520-024-08369-7.
Fig. 3Aは、介入後3か月でアクティグラフィーを用いてPAを測定した2つの研究の結果を示しています。
この図から、介入後3か月でのPAには、介入群と対照群の間に有意な差はなかったことがわかります(SMD = 0.05, 95% CI = -0.23 to 0.33)。
Fig. 3Bは、介入後6か月でアンケートを用いてPAを測定した2つの研究の結果を示しています。
この図から、介入後6か月でのPAには、介入群の方が対照群よりも有意に高かったことがわかります(SMD = 0.23, 95% CI = 0.09 to 0.38)。
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Su CC, Guo SE, Kuo YW. Effects of internet-based digital health interventions on the physical activity and quality of life of colorectal cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2024 Feb 20;32(3):168. doi: 10.1007/s00520-024-08369-7.
Fig. 4のAの結果から、3ヶ月後のQoLについては、介入群と対照群の間に有意な差がないことがわかります。
Fig. 4のBの結果から、6ヶ月後のQoLについては、介入群が対照群よりも有意に高いことがわかります。
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Su CC, Guo SE, Kuo YW. Effects of internet-based digital health interventions on the physical activity and quality of life of colorectal cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2024 Feb 20;32(3):168. doi: 10.1007/s00520-024-08369-7.
このメタ分析の結果を見ると、以下のことが分かります。
- 3ヶ月後(A)では、全体的なSMDは-0.11で、95%CIは-0.28から0.06でした。これは、介入群の方が疲労が低い傾向があるものの、統計的に有意ではないことを示しています。また、I2は0%で、研究間の異質性は低いことを示しています。
- 6ヶ月後(B)では、全体的なSMDは-0.18で、95%CIは-0.35から-0.02でした。これは、介入群の方が疲労が有意に低いことを示しています。また、I2は0%で、研究間の異質性は低いことを示しています
上のことから、インターネットベースの介入は、6ヶ月後に疲労を改善する効果があると言えますが、3ヶ月後には効果が認められませんでした。
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Su CC, Guo SE, Kuo YW. Effects of internet-based digital health interventions on the physical activity and quality of life of colorectal cancer survivors: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2024 Feb 20;32(3):168. doi: 10.1007/s00520-024-08369-7.
Fig. 6のAでは、インターネットベースの介入がうつ病に与えた効果量を、標準化平均差(SMD)という指標で表しています。
インターネットベースの介入は、6ヶ月後の大腸がん生存者のうつ病に対して有意な効果を持たなかったと結論づけられます。
Fig. 6のBでは、インターネットベースの介入が不安に与えた効果量を、SMDで表しています。
Fig. 6のBでは、インターネットベースの介入が不安に対して有意な効果を持たなかったことを示しています。
したがって、インターネットベースの介入は、6ヶ月後の大腸がん生存者の不安に対して有意な効果を持たなかったと結論づけられます。
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考察
研究者たちは、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入が、大腸がんの生存者の身体活動や生活の質を6か月後に有意に改善したことを報告しています。
これは、他の研究とも一致する結果であり、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入が、大腸がんの生存者にとって有益であることを示しています。
インターネットを使ったデジタルヘルスの介入は、時間や場所の制約が少なく、個人化やフィードバックが可能で、コストも低いという利点があります。
そのため、大腸がんの生存者の身体活動の習慣化や持続に役立つと考えられます。
研究者たちは、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入が、がんや治療に関連する症状にも影響を与えたことを報告しています。
特に、疲労感が6か月後に有意に減少したことを指摘しています。
疲労感は、大腸がんの生存者にとって最も一般的で重要な症状の一つであり、身体活動や生活の質にも悪影響を及ぼします。
最後に、研究者たちは、自分たちの研究の限界性についても言及しています
一つは、研究の参加者の特性に関するものです。この研究では、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入に参加することに同意した大腸がんの生存者だけが対象となっています。そのため、参加者は、インターネットに親しんでいたり、身体活動に興味があったりする可能性が高く、一般的な大腸がんの生存者の代表とは言えないかもしれません。
参加者の多くは、がんの進行度が低く、治療を終えてから時間が経っている人でした。そのため、がんの進行度が高い人や治療中の人に対して、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入が同じように効果的であるかどうかは分かりません。
もう一つは、研究の方法に関するものです。この研究では、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入の内容や方法が、研究に参加した人によって異なる可能性があります。
例えば、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入の利用頻度や時間、身体活動の種類や強度などは、個人の好みや状況によって変わるでしょう。そのため、
インターネットを使ったデジタルヘルスの介入の効果を正確に評価するのは難しいかもしれません。
インターネットを使ったデジタルヘルスの介入は、大腸がんの生存者の身体活動や生活の質を改善する有望な方法であることが示されましたが、まだ改善の余地や検証の必要性があります。
今後の研究では、インターネットを使ったデジタルヘルスの介入の内容や方法をさらに工夫したり、より多様な大腸がんの生存者に対して適用したりすることで、その効果を確かめることが望まれます。
インターネットを使ったデジタルヘルスの介入は、大腸がんの生存者にとって、身体的にも精神的にもより良い生活を送るための一助となるでしょう。
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変形性膝関節症患者に対してもオンラインリハビリの効果がまとめられています。コチラにを参考にしてみてください。
・インターネットを使った健康支援プログラムを受けた患者の方が、運動量が増えて、生活の質が良くなった。
・インターネットを使った健康支援プログラムが、患者さんの運動のやる気や自信を高めたり、運動の効果や方法を教えたりすることで、運動量や生活の質を改善したと考えられる。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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