前回はリンパ浮腫患者さんは実際に運動を行っているのかについてまとめた記事を紹介しました。
運動指導にもあまり時間を取れないし、ガイドラインが推奨するような運動は実施できていないという実態でしたね。
それでは、リンパ浮腫患者さんに運動を実施してもらうためにはどうすればいいのでしょうか。
今回は、運動を行っているリンパ浮腫患者さんの特徴や看護師さんの運動支援の実態をまとめて、リンパ浮腫患者さんが運動を行うためにはどうしたらいいのかを紹介していきます。
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リンパ浮腫が増強したときの思考
リンパ浮腫の患者さんが浮腫が強くなってしまったときというのはどのような思考になるのでしょうか?
もちろんいろいろな思考があると思いますが、まずは負担をかけすぎたのではないかということを疑うかと思います。
どんなに運動の必要性を指導していたとしても、浮腫が増強してしまったら、「動きすぎ」を考えてしまうと思います。
そして、負担をかけすぎたと考えるだけならいいのですが、「看護師さんから無理に運動したらダメって教わったなぁ」と、自分にとって都合のいい考え方に陥りやすいです。
「運動」自体が悪者になってしまうわけですね・・・。
やっぱり1回だけの指導だと勘違いするのも無理はないですね。
特に、指導を行ってからリンパ浮腫が発症するまでに数年経過している方もいるわけですし・・・。
【リンパマッサージセルライトスパッツ】でスリムアップ運動を実施しているがん患者さんの特徴
それでは、運動を実施しているがん患者さんには特徴があるのでしょうか?
玉井 なおみ, 木村 安貴, 西田 涼子, 他, 乳がんサバイバーの運動実施の状況と関連要因, Palliative Care Research, 2019, 14, 97-105
こちらの研究では、3か所の医療機関の中で、外来受診中の乳がん患者さん303名を対象にアンケート調査を行っています。
調査内容は運動の実施状況や運動に対する知識についてです。
すると、運動を実施している乳がん患者さんは運動を行うことによるメリットを知っている割合が高かったということがわかりました。
具体的な運動の効果としては、「再発リスク軽減」、「倦怠感緩和」、「骨粗鬆症予防」、「転倒予防」、「疼痛緩和」、「身体機能改善」、「心肺機能改善」、「睡眠改善」、「自尊感情低下」、「不安軽減」、「抑うつ」、「日常生活の活性化」、「社会生活の活性化」、「QOL向上」となっています。
運動にはずいぶんたくさんの効果があるものですね。
このような効果を知っていることが、運動を行うモチベーションにつながるというわけですね。
やっぱり効果が期待できるかどうかを知っておくとやる気が違いますよね。
カード・電マネ・QR・ポイントも使えるお店の決済サービス看護師さんの運動支援の実態
しかし、なかなか運動の効果って知らない患者さんが多いのではないでしょうか?
そうなると、リンパ浮腫指導の際に、運動の効果についてしっかり指導しておく必要があるのですが、その実態はどうなのでしょうか?
玉井 なおみ, 木村 安貴, 神里 みどり, 看護師によるがんサバイバーの運動支援の現状と関連要因, 日本がん看護学会誌, 2019, 33
こちらの研究では、5か所の医療機関の中で、看護師さん470名を対象にアンケート調査を行っています。
調査内容は運動支援の実態についてです。
その結果、運動支援を「いつもしている」4.1%,「時々している」37.6%となっています。
必ずしも運動支援を全ての患者さんに行ってもらえているわけではないようですね。
運動支援の阻害因子として「看護師の運動効果,支援に関する知識不足」,「患者の知識不足」などが挙げられていました。
つまり、がん患者さんが運動を行うためにはその効果を知っておく必要があるわけですが、運動を指導・支援する看護師さん自体が運動の効果を知らないことも多いというわけですね。
患者さん、医療者ともに運動の効果や支援方法を学ぶことで、運動継続できるようになるでしょう。
タクシーが呼べる運動指導でみられる患者の誤解
そのように、患者さんも医療者も、リンパ浮腫に対する運動に関して知識が不十分であるために、よくみられる誤解がこちらです。
もちろん看護師さんは運動を行うことは推奨すると思います。
ただし、身体に負担がかかり過ぎるとリンパ浮腫は増悪してしまうため、無理はしないようにというように指導しがちです。
誤解がないように言っておきますが、この指導内容に間違いはありません。
負担をかけすぎてはいけないこと、重いものを持ち続けることが良くないことというのは本当のことです。
しかし、「無理はしないように」という言葉が曲者です。
このように指導されると、患者さんは「運動しすぎたらだめ」という思考に陥る可能性があります。
さらにそれが過剰になっていくと、最終的には、「安静にしておいた方がいい」という思考になってしまい、ベッド上で寝ておくことが優先される可能性があります。
医療者は、「無理に運動しすぎないように」≒「安静しておいた方がいい」と考えられてしまう可能性を懸念しておいた方がいいですね。
それでは、具体的にはどのように指導すればいいのでしょうか?
それは次回の記事でご紹介します。お楽しみに!!
◆スマイルゼミ◆タブレットで学ぶ 【小学生向け通信教育】が誕生!運動を指導・支援する看護師さん自体が運動の効果を知らないことも多い。
医療者は、「無理に運動しすぎないように」≒「安静しておいた方がいい」と考えてられてしまう可能性を懸念しておいた方がいい。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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