がん患者さんにとって問題となる体重減少の目安は?

今回は、がん患者さんの体重減少の目安について紹介します。

 

がん患者さんの特徴として、意図しない体重減少が挙げられます。

食欲不振やエネルギー消費の増加によって体重が減少しやすくなります。

栄養失調になると予後にも関係していることも紹介しました。

膵臓がん患者さんのQOL、栄養状態、予後について論文解説

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リンパ浮腫の改善には減量が必要である一方で、進行がん患者さんは体重が減少しすぎないように注意する必要があります。

体重減少が著明になって筋肉量まで減少するとサルコペニアという状態に陥ってしまいます。

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2022年2月22日

しかし、どれくらいの体重減少から注意しなければならないのか難しいですよね。

そこで今回は、がん患者さんの体重減少の目安について紹介します。

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まとめ
・がん患者さんの体重減少の目安について紹介。

・フレイルから考えると6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少が目安となる。

・悪液質から考えると過去6か月間で5%以上の体重減少が目安となる。

・サルコペニアから考えると下腿周径が33cm未満が目安となる。

・体重やふくらはぎの太さを定期的に測って確認するようにしておきましょう。

フレイルから考えると6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少

前回紹介したフレイルをチェックする項目の一つにも体重減少があります。

フレイルとは、簡単に言うと「加齢により心身が老い衰えた状態」のことでしたね。

厚生労働省 パンフレット 「食べて元気にフレイル予防」

フレイルの評価では「6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少がありましたか?」に「はい」と回答した場合が該当します。

ですので、ここ6か月間で2~3㎏以上体重が減少している場合には注意が必要かもしれません。

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悪液質から考えると過去6か月間で5%以上の体重減少

がんが進行すると、がん細胞が放出するサイトカインという物質により、食欲不振や体重減少が引き起こされます。

そのような状態を悪液質と言い、「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず,進行性の機能障害に至る,骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されています。

簡単に言うと、食欲もないし、頑張って食事をとったとしても筋肉を主体として痩せてしまう状態です。通常の食事が食べれなくて痩せるだけより、急激に痩せていく印象ですね。

その悪液質の診断基準は以下の通りになります。

Fearon K, et al. Lancet Oncol. 2011

①過去6か月間に5%以上の体重減少
②BMIが20未満 かつ 体重減少が2%以上
③サルコペニア かつ 体重減少が2%以上

のいずれかに該当するときですが、過去6か月間に5%以上の体重減少がわかりやすいですね。

体重60kgの方であれば、6か月間に3kg以上の体重減少ということになりますので、フレイルの評価と似たような評価になる場合もあります。

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サルコペニアから考えると下腿周径が33cm未満

体重減少ではサルコペニアにも注意する必要があります。

がん患者の運動機能低下~サルコぺニアについて~

2022年2月22日

簡単なサルコペニアの評価方法の一つとしては、ふくらはぎの最も太い部分が33cm未満が最初の該当項目になります。

メジャーがあれば簡単に評価できますが、ない場合には下記のような「指輪っかテスト」というのを活用してみてください。



厚生労働省資料 口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案と検証(地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業

 体重減少の評価も必要ですが、体重は水分の状態でも簡単に増減しますので、筋肉量の指標として、ふくらはぎの太さをチェックするのも一つの方法です。

しかし、浮腫やむくみがあると、水分が溜まっているだけなのに、筋肉量が十分になるように誤解してしまうことがあるので注意しましょう。

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このような体重の減少やふくらはぎの太さを確認しながら、体重や筋肉量が減った状態になっていないか注意するようにしましょう。

体重減少が強ければ、主治医や管理栄養士に相談して、適切な栄養補給を行いましょう。

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まとめ
・がん患者さんの体重減少の目安について紹介。

・フレイルから考えると6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少が目安となる。

・悪液質から考えると過去6か月間で5%以上の体重減少が目安となる。

・サルコペニアから考えると下腿周径が33cm未満が目安となる。

・体重やふくらはぎの太さを定期的に測って確認するようにしておきましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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