がんのむくみ、リンパ浮腫に対して運動は効果あるの?

 

以前の記事で、リンパ浮腫診療ガイドラインに記載されている体重管理やセルフケア指導の内容について紹介しました。

 

がんのむくみ、リンパ浮腫に対するセルフケア指導って効果はあるの?

2023年6月16日

がんのむくみ、リンパ浮腫の治療・予防に大事な体重管理:理由と効果について解説!!

2023年6月18日

 

指導を行ってもらい、セルフケアや体重管理をしっかりと行うことの重要性がわかりましたね。

 

さて、リンパ浮腫の治療には、セルフケア指導以外にも、①用手的リンパドレナージ,②圧迫療法,③圧迫下での運動療法,④スキンケアがありましたね。

 

 

今回は、リンパ浮腫診療ガイドラインには、運動療法についてどのように記載されているのかを紹介します。

 

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なぜ運動が効果的なのか

 

リンパ液というのは、一番細い毛細リンパ管で吸収された後に、リンパ管を流れて、途中でリンパ節を通りながら、最終的に静脈に流れ込みます。

 

運動には、リンパ管を適度に圧迫して、その流れを良くするという効果があります。

 

筋肉をポンプのように働かせることで、リンパ液の流れを良くするというわけです。

 

さらに、リンパ液はお腹の深い場所にあるリンパ管を通ることもあるので、手足の筋トレだけでなく、腹式呼吸のようにお腹の奥を刺激するような運動も効果的です。

 

そして、リンパ節は脇や脚の付け根に多く存在しますので、リンパ節の動きがよくなるように肩回しや股関節の運動を行うことも推奨されています。

 

負担をかけないようにと指導されて、運動を控えてしまう人も多いですが、

このような機序から、適度な運動は、リンパ浮腫にとって効果的と言われています。

 

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運動はリンパ浮腫改善に効果があるのか??

CQ 15 続発性リンパ浮腫に対して,運動(エクササイズ)は治療として勧められるか?

乳癌術後の上肢リンパ浮腫は,運動により軽減し得る。一方,下肢リンパ浮腫については,ランダム化比較試験はないが,負荷を伴う運動(伸縮性のバンデージを付けた状態での運動プログラム)が下肢の浮腫を軽減し得る,とする前向き研究が一つだけ存在する。したがって,行ってもよいが,十分な根拠はない。

上肢:グレードB 下肢:グレードC1

日本リンパ浮腫学会(編). リンパ浮腫診療ガイドライン 2018年度版. 金原出版, 2018

 

2018年度のリンパ浮腫診療ガイドラインでは、特に上肢のリンパ浮腫改善に対しては運動療法が推奨されています。

 

グレードBが「ある程度の科学的根拠があり、実践するよう推奨する」、グレードC1が「行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠はない」となっています。

 

上肢リンパ浮腫の改善に対する運動療法は、しっかりと根拠があって推奨されています。

 

下肢リンパ浮腫の改善に対する運動療法は、考慮してもいいとしか記載されていないですが、これは検討している論文が少ないため、根拠が乏しいということです。

グレードが低いから、やらない方がいい、やったら危険だというわけではありません。

 

リンパ浮腫と運動に関して調査した論文を9編に絞り込んで結果をまとめています。

やはり、下肢に関するリンパ浮腫の研究が少なくて、強いことは言えないようです。

リンパ浮腫の研究って乳がん患者さんを対象としたものが多いですからね。

 

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運動はリンパ浮腫の予防に効果があるのか??

CQ8 続発性リンパ浮腫のリスクのある患者が運動(エクササイズ)を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫の発症率は減少するか?

乳癌術後上肢リンパ浮腫のリスクを有する患者において,運動はリンパ浮腫の発症率を下げる。また,乳癌術後の上肢リンパ浮腫に対する従来の複合的治療と負荷を伴う運動療法(弾性着衣の着用下での十分に吟味された運動プログラム)は,患肢の増悪を招くことなく筋力を向上させ,心身の生活の質を改善する。

一方,下肢リンパ浮腫については,予防・治療ともランダム化比較試験はないが,身体活動により発症率が下がるとする症例対照研究が存在する。ほぼ確実とまではいえないが,発症率を下げることを示唆する根拠があると判断した。

上肢:Probable(ほぼ確実) 下肢:Limited-suggestive(可能性あり)

日本リンパ浮腫学会(編). リンパ浮腫診療ガイドライン 2018年度版. 金原出版, 2018

 

2018年度のリンパ浮腫診療ガイドラインでは、特に上肢のリンパ浮腫予防に対しては運動療法が推奨されています。

 

リンパ浮腫改善に対する運動の効果と同じような結果ですね。

上肢リンパ浮腫予防に対する運動療法は、ほぼ確実に効果があるということはすごいですね。

リンパ浮腫予防と運動に関して調査した論文を9編に絞り込んで結果をまとめています。

やはり、下肢に関するリンパ浮腫予防の研究は1編しかないため、強いことは言えないようです。

 

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やっぱり運動は大事

運動はリンパ浮腫の改善に対しても、予防に対しても効果がありそうな結果でした。

 

負担をかけすぎることと運動することはイコールではないということに注意しましょう。

毎日運動を行っても、手足のむくみが強くならなければ大丈夫です。

むしろ運動したほうがむくみがすっきりする可能性があります。

しかし、運動した日に毎回むくみが強くなるような感じがあれば、運動の強度を調整したほうがいいでしょう。

毎日むくみや皮膚の状態を観察して、運動の強度を調節することが大事というわけです。

それと、運動するときには必ず弾性ストッキングやスリーブで圧迫することも忘れないでくださいね。

せっかく運動しても、圧迫していないと効果が半減するのでもったいないですよ。

リンパ浮腫診療ガイドライン2018年版

 

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まとめ
・リンパ浮腫改善や予防に対する運動の効果について、ガイドドラインの記載内容を紹介。

・上肢リンパ浮腫改善や予防に関しては、運動の効果はほぼ確実である。

・下肢リンパ浮腫改善や予防に関しては、研究が少なく、効果についてははっきりいえない。

・毎日むくみや皮膚の状態を観察して、運動の強度を調節することが大事である。

・運動するときには必ず弾性ストッキングやスリーブで圧迫することも忘れないように。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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