がんの症状に対してホメオパシーは効果があるのか?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するホメオパシーの効果について記載している内容を紹介します。

以前にがんの症状に対するマッサージやアロマテラピーの効果について記載している内容を紹介しました。

がんの症状に対してマッサージは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年7月25日

がんの症状に対してアロマテラピーは効果があるのか?【ガイドライン解説】

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私もあまり詳しくはないですが、がんの治療にも様々な種類のものがありますね。

医療者的には、手術、化学療法、放射線療法の3本柱が治療のメインなんですが、他にも効果を謳っている治療法を聞くことはあります。

多くの治療が紹介されているからこそ、ちゃんと効果があるのかを知っておく必要がありますね。

そこで、今回は、がんの症状に対してホメオパシーの効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するホメオパシーの効果について記載している内容を紹介。

・ホメオパシーは治療に伴う有害事象に対してのみ効果がある可能性がある。

・そのほかの身体症状や精神症状、QOL、予後などに対しては、効果があるという根拠は認められない。

・日本学術会議も、その治療法を効果的と誇張することに警鐘を鳴らしているので、治療を実施するのは慎重に検討したほうがよさそう。

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ホメオパシーの概要

ホメオパシーは,約200 年前にドイツ人の医師サミュエル・ハーネマンが体系化した医療であり,2 つの基本原則があります。

 

①類似の原則:ある症状で苦しんでいる人に,健康な人に与えた場合に同じような症状を引き起こす物質〔ホメオパシー薬(レメディ)〕を投与すること。

②最小限で効果的な投与を行うこと:ある原料をレメディにする過程で非常に高い希釈率で薄め,心身に悪影響を及ぼさず,自然治癒力に働きかける作用のみを得るようにして,患者の治療を行うこと。

 

このようにして,ホメオパシーは,体に備わっている自然治癒力に働きかけ,患者が全体のバランスを取り戻しながら回復すると考えられています。

レメディは3,000 種以上あるが,なぜ効くのかはいまだ解明されていないようです

 

機序がよくわからないのに効果があるというのは解釈が難しいですね。

日本ではあまり有名ではありませんが、欧米や欧州では広く認知されているようです。

国によっては、医師のみが行える治療となっているようですね。

 

日本学術会議は,2010 年に『ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です』と発表しているようです。

実施するには慎重に検討しなければならない治療法のようですね。

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身体症状に対する効果

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

11編のシステマティックレビューをスクリーニングして、最終的に2編のレビューから検討しています。

さらに、5編のRCTからも検討しています。

 

身体症状

痛み、消化器症状、呼吸器症状、泌尿器症状、倦怠感、睡眠障害に対しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

RCTで2編の論文を認めています。

①手術,抗がん剤,放射線治療を完了した乳がんの女性のホットフラッシュに対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論しています。

しかし,全体的健康感の指標は改善する可能性があると述べています。

 

②乳がんサバイバーにおけるエストロゲン減少の症状に対して,プラセボと比較して,ホメオパシーが有用であったことを示す確証はないと結論しています。

 

よって,乳がん患者に対して,ホメオパシーによるホットフラッシュを含めたエストロゲン減少の症状を改善させる効果に対する根拠はないと結論付けています。

 

論文数も少ないためか、ホメオパシーが身体症状を改善させるといった根拠は乏しいようですね。

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精神症状に対する効果

不安・抑うつに対しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

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QOLに対する効果

QOLに対しては、ホメオパシーにはがん治療における効果(がんと闘うための体力増強,身体的・精神的な健康の改善,病気や治療の結果起こる痛みの緩和)を示す十分な確証はないと結論しています。

 

よって,がん患者に対してホメオパシーは,従来の治療のみを行った群と比較して,全般的なQOL を改善させる根拠はないと結論付けています。

 

身体症状や精神症状を改善させる根拠がないので、QOLの改善も強くは認められないようですね。

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ホメオパシーの有害事象

有害事象に関しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

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治療等に伴う有害事象に対する効果

①システマティックレビューでは,ホメオパシー薬(Calendula)が放射線治療中の急性皮膚炎を予防する可能性があると結論しています。

また,化学療法による口内炎がホメオパシー薬(Traumeel S)により改善する可能性があると述べられています。

 

② 無作為化比較試験では,標準的な悪心予防に複合ホメオパシー薬(Cocculine)を追加することは,早期乳がん患者における抗がん剤による悪心・嘔吐の予防には効果がないと結論しています。

 

③無作為化比較試験では,ホメオパシー薬(Traumeel S)が骨髄移植を受けた小児の口内炎の苦痛と病悩期間を改善する可能性があると述べています。

 

④無作為化比較試験では,放射線治療における皮膚炎において,皮膚の熱感に対しては,ホメオパシー薬(Belladonna, X-ray)によって改善する可能性があると述べています。

 

以上より,がん患者に対してホメオパシーは,プラセボと比較して,口内炎や放射線治療における皮膚炎を軽減させる可能性があると考えられます。

一方で,抗がん剤による悪心・嘔吐の予防を軽減させる根拠はないと結論付けています。

 

治療の有害事象に対しては、口内炎や皮膚炎への効果が多少期待できるようですね。

ただし、有害事象予防のためだけに、どこまで積極的にホメオパシーの治療を行うかは難しいところですね。

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ホメオパシーの予後に対する効果

予後に対して、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

ホメオパシーは治療に伴う有害事象に対してのみ効果がある可能性があるみたいですね。

日本学術会議も、その治療法を効果的と誇張することに警鐘を鳴らしていますので、治療を実施するのは慎重に検討したほうがよさそうですね。

有害事象予防だけが目的であれば、他にも方法はありますので、あえてホメオパシーを行う必要はないのかなという印象です。

効果が誇張されている場合には用心するようにしたほうがよさそうです。

2000 年1 月1 日~2014 年12 月31 日のPubMed での検索結果では,ホメオパシーが,がんの縮小や生存率向上に寄与したとする論文もないみたいですよ。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するホメオパシーの効果について記載している内容を紹介。

・ホメオパシーは治療に伴う有害事象に対してのみ効果がある可能性がある。

・そのほかの身体症状や精神症状、QOL、予後などに対しては、効果があるという根拠は認められない。

・日本学術会議も、その治療法を効果的と誇張することに警鐘を鳴らしているので、治療を実施するのは慎重に検討したほうがよさそう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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