膝OA患者に対する筋トレの効果~神経筋運動vs大腿四頭筋強化~ 

今回は、中等度~重度の変形性膝関節症患者さんに対する筋トレの効果として、神経筋運動と大腿四頭筋強化の2つの方法を比較検討した論文を紹介します。

 

前回は、中等度の変形性膝関節症患者さんに対して、弾性バンドでの筋力トレーニングを行うことの効果について紹介しました。

弾性バンドでの筋トレは中等度の変形性膝関節症患者にも効果がある 

2022年6月8日

1日10回×3セット×2回くらいで効果が出るのなら試してみてもいいのかなと思ってしまいますね。

 

それでは他の筋トレの方法の効果はどうなのでしょうか?

  

そこで、今回は中等度~重度の変形性膝関節症患者さんに対する筋トレの効果として、神経筋運動と大腿四頭筋強化の2つの方法を比較検討した論文を紹介します。

まとめ
・中等度~重度の変形性膝関節症患者さんに対する筋トレの効果として、神経筋運動と大腿四頭筋強化の2つの方法を比較検討した論文を紹介。

・神経筋エクササイズ群(NEXA)38名、大腿四頭筋強化群(QS)44名に分けて12週間の運動を実施。

・神経筋エクササイズは荷重での下肢コントロールを中心に、大腿四頭筋強化は非荷重での筋力強化を中心に運動した。

・どちらの群も12週間後には、疼痛の軽減や下肢筋力、起立能力、TUGといった運動機能の改善が認められた。

・しかし、膝関節内反モーメントは改善を認めなかった。

・改善の程度は2群間で差は認めなかった。

・どちらの運動様式でも、変形自体が改善しなくても、運動機能や疼痛が改善することは非常に有意義だと思われる。

・なかなか成果が出なくても3ヶ月くらい継続することを目標に、自分が行いやすい運動を頑張ってみましょう!

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、中等度~重度の変形性膝関節症患者さんに対する筋トレの効果として、神経筋運動と大腿四頭筋強化の2つの方法を比較検討した内容の論文になっています。

「Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.」 2014年に発行された少し昔の論文になります。

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対象

One hundred patients with medial knee pain, mostly moderate-to-severe radiographic medial knee OA, and varus malalignment were randomly allocated to one of two 12-week exercise programs.

Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

膝関節内側の疼痛、主に中等度から重度の膝関節内側部の変形、および膝関節の乖離を有する患者100名を、2つの12週間運動プログラムのいずれかに無作為に割付けています。

重症度はKL2が18%、KL3が42% KL4が40%となっています。

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方法

Each program involved 14 individually supervised exercise sessions with a physiotherapist plus a home exercise component. Primary outcomes were peak external knee adduction moment (3-dimensional gait analysis), pain (visual analog scale), and self-reported physical function (Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index).

Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

各プログラムでは、理学療法士による14回の個別指導の運動セッションと、自宅での運動を実施しています。

主要評価項目は,膝関節内反モーメント,疼痛,下肢筋力、起立能力、TUG、WOMACでした。

内反モーメントというのは、歩行時にどれくらい膝がO脚になるストレスがかかっているかの評価になります。

 

神経筋エクササイズ群(NEXA)38名、大腿四頭筋強化群(QS)44名に分けてプログラムを実施しています。

 

Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

こちらの図は神経筋エクササイズ群の運動の一つになります。

神経筋エクササイズ群の運動項目は、

1. Forward and backward sliding or stepping
2. Sideways exercises
3. Functional hip muscle strengthening
4. Functional knee muscle strengthening
5. Step-ups and down
6. Balance

となっており、基本的には荷重下で下肢をコントロールしながら動かせることに重点を置いた運動となっています。

 

それに対して、大腿四頭筋強化群の運動は、

1. Quads over a roll (inner range knee extension)
2. Knee extension in sitting
3. Knee extension with hold at 30° knee flexion
4. Straight leg raise
5. Outer range knee extension

で構成されており、基本的には体重をかけずに大腿四頭筋を強化する運動が中心となっています。

 

全ての運動は、週5-7回の頻度でそれぞれ10回×2-3セット12週間実施しています。

運動強度は修正RPE5-7という、「ややきつい~きつい」くらいの負荷となっています。

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結果

Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

こちらの表は、介入前後の2群の変化を比較した結果となります。

どちらの群も12週間後には、疼痛の軽減や下肢筋力、起立能力、TUGといった運動機能の改善が認められています。

しかし、内反モーメントの改善は認めませんでした。

そして、2群間で改善の程度に差はなかったようです。

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Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

こちらは、痛みなどの有害事象の出現率と鎮痛薬等の使用を2群で比較しています。

有害事象は神経筋エクササイズ群で30%、大腿四頭筋強化群で23%となっています。

鎮痛薬も20-30%の患者が使用していました。

2群で有害事象や鎮痛薬使用率に差はありませんでした。

自宅での自主練習を完遂できたのは、神経筋エクササイズ群で82%、大腿四頭筋強化群91%でした。

12週間の運動をしっかり行っていますが、高い完遂率となっていますね。

結論

Although comparable improvements in clinical outcomes were observed with both neuromuscular and quadriceps strengthening exercise in patients with moderate varus malalignment and mostly moderate-to-severe medial knee OA, these forms of exercise did not affect the knee adduction moment, a key predictor of structural disease progression.

Bennell KL, Kyriakides M, Metcalf B, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):950-9.

中等度の乖離を有し、ほとんどが中等度から重度の内側型膝関節症である患者において、神経筋力強化運動と大腿四頭筋強化運動の両方で同等の臨床転帰の改善が認められましたが、これらの運動は構造的疾患の進行の主要予測因子である膝内転モーメントに影響を及ぼしませんでした。

 

つまり、どちらの運動でも効果は期待できますが、O脚のストレスを改善することは運動だけでは難しいようですね。

しかし、変形自体が改善しなくても、運動機能や疼痛が改善することは非常に有意義だと思います。

どちらの運動でも同様の効果がありますので、結局は自分が行いやすい運動を長期間継続することが最も大事だということでしょうね。

 

運動効果を検証する論文は、少なくとも2-3ヶ月くらいの運動を実施することが多いですので、なかなか成果が出なくても3ヶ月くらい継続することを目標にして頑張ってみましょう!

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まとめ
・中等度~重度の変形性膝関節症患者さんに対する筋トレの効果として、神経筋運動と大腿四頭筋強化の2つの方法を比較検討した論文を紹介。

・神経筋エクササイズ群(NEXA)38名、大腿四頭筋強化群(QS)44名に分けて12週間の運動を実施。

・神経筋エクササイズは荷重での下肢コントロールを中心に、大腿四頭筋強化は非荷重での筋力強化を中心に運動した。

・どちらの群も12週間後には、疼痛の軽減や下肢筋力、起立能力、TUGといった運動機能の改善が認められた。

・しかし、膝関節内反モーメントは改善を認めなかった。

・改善の程度は2群間で差は認めなかった。

・どちらの運動様式でも、変形自体が改善しなくても、運動機能や疼痛が改善することは非常に有意義だと思われる。

・なかなか成果が出なくても3ヶ月くらい継続することを目標に、自分が行いやすい運動を頑張ってみましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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