サルコぺニアの定義、疫学、骨格筋量の評価方法について

以前、がんサバイバーも知っておきたいサルコペニアについて紹介しました。

がん患者の運動機能低下~サルコぺニアについて~

2022年2月22日

サルコペニアとは、簡単に言うと「加齢に伴う骨格筋量減少」のことでした。

 

基本的にはCTやDXA、BIAといった機器を用いて骨格筋量の評価を行うのですが、最近では超音波エコーでの評価も着目されており、それに伴い新たな診断基準も作成されました。

 

そこで今回は、サルコぺニアの定義、疫学、診断基準の最新情報のまとめについて、骨格筋量の評価方法も含めて紹介します。

1杯で20種類の栄養が摂れる!新マルチ栄養食『バランサー』
まとめ
・サルコぺニアの定義、疫学、診断基準の最新情報のまとめについて、骨格筋量の評価方法も含めて紹介。

・サルコペニアの最新の定義は、「骨格筋量の加齢に伴う低下に加えて,筋力および/または身体機能の低下」となっている。

・最新のレビューでは、異なる診断基準に基づくサルコペニアの有病率は若年成人で8~36%、高齢成人で10~27%であった.

・骨格筋量の評価としてCT、MRI、DXA、BIA、超音波などが挙げられる。

サルコペニアの定義

サルコペニアとは1988年から使用されている、比較的最近作成された言葉になります。

 

【サルコペニアの定義の歴史】

1988年:ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と喪失を意味する「penia」を組み合わせて「サルコペニア」という造語を提案した.(Rosenberg IH:Sarcopenia:origins and clinical relevance. J Nutr 1997;127:990S-991S)

 

2010年:European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によって、「身体的な障害や生活の質の低下,および死などの有害な転帰のリスクを伴うものであり,進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群」と定義された.(Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, et al, European Working Group on Sarcopenia in Older People:Sarcopenia:European consensus on definition and diagnosis:Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Ageing 2010;39:412-423)

 

2014年:Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によって、「骨格筋量の加齢に伴う低下に加えて,筋力および/または身体機能の低下」と定義された.(Chen LK , Liu LK , Woo J , et a l : Sarcopenia in Asia: consensus report of the asian working group for sarcopenia. J Ame Med Dir Assoc 2014; 15: 95-101.)

 

そして、2014年に提唱された上記の定義は、AWGS2019でも変更されずにそのままとなっております.もう9年間くらい定義が変わっていないということですね。

1杯で20種類の栄養が摂れる!新マルチ栄養食『バランサー』

サルコペニアの疫学

それでは、そのサルコペニアには一体どのくらいの割合の方が該当するのでしょうか?

比較的最新の調査した報告を紹介いたします。

 

・最新の系統的レビューによると、異なる診断基準に基づくサルコペニアの有病率は若年成人で8~36%、高齢成人で10~27%であった.(Petermann-Rocha F, Balntzi V, Gray SR, et al. Global prevalence of sarcopenia and severe sarcopenia: a systematic review and meta-analysis. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2022;13:86–99.)

 

・地域在住高齢者 1,099 人の骨密度調査において,骨粗鬆症の有病率は 24.9%で,そのうちの 18.9%がサルコペニアを合併していた.サルコペニアの有病率は 8.2%で,そのうち 57.3%が骨粗鬆症を合併していた.(Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al. Is osteoporosis a predictor for future sarcopenia, or vice-versa? Four-year observations between the second and third ROAD study surveys. Osteoporos Int 2017; 28: 189-99)

腰椎骨密度正常群,骨量減少群,骨粗鬆症群それぞれでのサルコペニア有病率は 10.4%, 16.8%,20.4%で,大腿骨近位部骨密度正常群,骨量減少群,骨粗鬆症群それぞれのサルコペニ ア有病率は 9.0%,17.8%,29.7%であった.(Miyakoshi N, Hongo M, Mizutani Y, et al. Prevalence of sarcopenia in Japanese women with osteopenia and osteoporosis. J Bone Miner Metab 2013; 31: 556-61.)

 

サルコペニアがある場合には、骨粗鬆症の合併にも注意が必要でしたね!!

高齢者の骨量、筋量は身体活動量低下と関連するか?

2022年3月11日

 

大腿骨近位部骨折群,脊椎椎体骨折群におけるサルコペニア有病率は 47.3%,48.5 %で対照群の31.8 %に比して高率であった .(Hida T, Ishiguro N, Shimokata H, et al. High prevalence of sarcopenia and reduced leg muscle mass in Japanese patients immediately after a hip fracture. Geriatr Gerontol Int 2013; 13: 413-20.)

 

骨粗鬆症や圧迫骨折などの既往がある方は、特にサルコペニアを合併していないか注意が必要ですね!!

1杯で20種類の栄養が摂れる!新マルチ栄養食『バランサー』

骨格筋量の評価

さて、サルコペニアの定義や疫学については理解できたと思います。

 

定義から考えると、サルコペニアの評価には骨格筋量が必須となってきます。

 

それでは、骨格筋量の評価とはどのようなものがあるのでしょうか?

いくつかご紹介いたします。

 

①CT,MRI

現在のところ,骨格筋量定量法のゴールドスタンダードは,核磁気共鳴画像法(MRI 法)やコンピュー ター画像診断法(CT 法)のような高度画像診断法となっています。

メリット:信頼性が高い

デメリット:測定機器が高額,高い測定技術 を持つスタッフや診断および解析に時間を要する.

 

研究目的としては使用しやすいかもしれませんが、日常の診療で骨格筋量を測定しようと思って、CTやMRIを使用するのは非現実的ですね。

  

②二重X線エネルギー吸収法(DXA)

体重を骨組織,体脂肪組織および除脂 肪軟組織の3 成分に分類する身体組成の測定装置です。

現在では主に骨密度診断のゴールドスタンダードとして臨床応用されています。

 

メリット:測定精度が高く,安全であり,仰臥位での全身スキャンはおよそ5 ~ 10 分で計測できる

デメリット:比較的高額の医療機器であることと若干のX 線による被爆を伴う

 

DEXAは骨密度測定には頻繁に使用されていますね。

骨密度測定ついでに筋量測定が簡単にできればいいのですが、なかなか難しいようですね。

 

生体電気インピーダンス法(BIA)

生体組織の電気抵抗値を測定することによって体組成を評価する方法です。

 

メリット:測定が手軽,安価

デメリット:BIA 法は体水分量の推定が基本となるた め,過度の飲食や激しい運動の後,発熱や下痢など体 調不良などの脱水状態では誤差を生む要因となるので注意が必要

 

臨床においてはBIAが簡便なので、頻繁に使用されているのではないでしょうか?

浮腫などの水分量が多い患者さんの結果には注意が必要ですね。

 

超音波

超音波画像診断装置は ,プ ロ ーブから生体へ超音波を発し,生体から反射した超音波を再びプローブで受信することにより身体内部の組織を画像化する装置です。

 

メリット:比較的安価で可搬性がある,計測が簡便で侵襲を伴わない,個々の骨格筋の形態をリアルタイムに観察・評価できる。

デメリット:全身の筋量の評価はできない(推定式で計算は可能)

 

臨床においては超音波も頻繁に使われている印象です。

BIAと異なり,筋量だけでなく筋収縮や滑走なども含めてリアルタイムで観察できるので、理学療法士にとっては使いこなせれば非常に便利そうですね。

 

全身の筋量の測定はできませんが、推定式やカットオフ値があるので、それらを参考にしてしようするといいみたいですね。

1杯で20種類の栄養が摂れる!新マルチ栄養食『バランサー』

今回はサルコぺニアの定義、疫学、骨格筋量の評価方法について解説しました。

次回は、実際にサルコペニアと診断する方法について紹介したいと思います。

まとめ
・サルコぺニアの定義、疫学、診断基準の最新情報のまとめについて、骨格筋量の評価方法も含めて紹介。

・サルコペニアの最新の定義は、「骨格筋量の加齢に伴う低下に加えて,筋力および/または身体機能の低下」となっている。

・最新のレビューでは、異なる診断基準に基づくサルコペニアの有病率は若年成人で8~36%、高齢成人で10~27%であった.

・骨格筋量の評価としてCT、MRI、DXA、BIA、超音波などが挙げられる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

       興味があったらシェアしてください