がん患者さんは骨粗鬆症になりやすいこともあるので注意が必要なことは、以前紹介しました。
骨粗鬆症の治療の一つとして運動が挙げられます。
今回は、中高度の衝撃運動が、骨の密度や構造にどのような影響を与えるかを調べた論文を紹介します。
骨の密度や構造は、骨折のリスクを予測する重要な指標ですが、これらは二次元のX線検査では十分に評価できません。
そこで、この論文では、三次元の画像技術を用いて、足首、手首、太もも、腰椎などの骨の部位を詳細に測定しました。
また、年齢や性別によって、衝撃運動の効果が異なる可能性があることを考慮して、子どもや若者、閉経後の女性、高齢の男性など、さまざまな人々を対象にしました。
この論文は、衝撃運動が骨の健康に及ぼす影響を理解するための重要な知見を提供してくれます。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、中高度の衝撃運動が、骨の密度や構造にどのような影響を与えるかを調べた内容となっています。
「Ng CA, et al. Effects of Moderate- to High-Impact Exercise Training on Bone Structure Across the Lifespan: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Bone Miner Res. 2023 Nov;38(11):1612-1634. doi: 10.1002/jbmr.4899.」。
2023年の論文になります。
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対象と方法
この研究では、CTやMRIという機器を使って、足の骨や腕の骨、腰の骨、太ももの骨を撮影しました。
まず、参加者をランダムに2つのグループに分けました。
1つのグループは、運動をするグループで、もう1つのグループは、運動をしないグループでした。
運動をするグループは、週に2回から5回、10分から90分の間、ジャンプやホッピング、ダンスなどの衝撃のある運動をしました。
運動の強さや回数は、途中で少しずつ増やしていきました。
運動をしないグループは、普段通りの生活を続けました。
運動の前と後に、骨の画像を撮って、骨の密度や構造にどのような変化があったかを比べました。
また、運動の効果が年齢や性別によって違うかどうかも調べました。
この研究では、平均の差や割合の差を計算して、運動をするグループとしないグループの間に、有意な差があるかどうかを検定しました。
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結果
Ng CA, et al. Effects of Moderate- to High-Impact Exercise Training on Bone Structure Across the Lifespan: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Bone Miner Res. 2023 Nov;38(11):1612-1634. doi: 10.1002/jbmr.4899.
Fig. 1は、このシステマティックレビューで選択された試験の流れを示す図です。
- 四つの電子データベースから1438件の研究抄録が検索されました。
- 1297件が重複や関連性のないものとして除外されました。
- 残りの141件の全文がスクリーニングされました。
- 適格基準を満たす31件の記事が見つかりました。
- 二つの試験は二つの関連記事で報告されていたため、一つの試験として扱われました。(40-43)
- 一つの試験は女子と男子で別々の記事で報告されていたため、一つの試験として扱われました。(46,47)
- 最終的に、28件の試験がこのレビューに含まれました。
Ng CA, et al. Effects of Moderate- to High-Impact Exercise Training on Bone Structure Across the Lifespan: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Bone Miner Res. 2023 Nov;38(11):1612-1634. doi: 10.1002/jbmr.4899.
Fig. 3は、生涯にわたって中高強度の衝撃運動が橈骨と脛骨の骨構造と体積骨密度(vBMD)に及ぼす主な影響を示した図式です。
- 子供と思春期では、衝撃運動は脛骨と橈骨の皮質骨と海綿骨の体積骨密度を増加させます。これは、骨形成が骨吸収を上回るためです。
- 成人では、衝撃運動は脛骨の皮質骨の体積骨密度を減少させますが、皮質骨の厚さを増加させます。これは、骨の内部から外部への骨移行が起こるためです。橈骨では、衝撃運動は皮質骨の厚さと体積骨密度を増加させます。これは、骨の外周に沿って骨形成が起こるためです。
- 閉経後の女性では、衝撃運動は脛骨の海綿骨の体積骨密度を増加させますが、皮質骨の体積骨密度と厚さには影響しません。これは、海綿骨が皮質骨よりも衝撃に敏感であるためです。橈骨では、衝撃運動は皮質骨の厚さを増加させますが、体積骨密度には影響しません。これは、皮質骨の骨移行が起こるが、骨密度には変化がないためです。
- 高齢の男性では、衝撃運動の効果は不明です。これは、高齢の男性を対象とした衝撃運動の研究が不足しているためです。
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以下に、本研究に記載されている結果の図をまとめます。
- 図4: 運動が脛骨遠位の体積骨密度に及ぼす効果
- 運動は、脛骨の遠位部の体積骨密度に有意な増加をもたらしました。この効果は、閉経後の女性で顕著でした。
- 図5: 運動が脛骨中央~近位部の体積骨密度に及ぼす効果
- 運動は、脛骨の遠位部の体積骨密度に影響をおよぼしませんでした
- 図6: 運動が橈骨の皮質骨厚に及ぼす効果。
- 運動は、橈骨の遠位部の皮質骨厚に有意な増加をもたらしました。
- 図7: 運動が大腿骨近位部の体積骨密度に及ぼす効果
- 運動は、大腿骨近位部の体積骨密度に有意な増加をもたらしました。
- 図8: 運動が大腿骨骨幹部の体積骨密度に及ぼす効果
- 運動は、大腿骨骨幹部の体積骨密度に影響をおよぼさなかった。
- 図9: 運動が腰椎の体積骨密度に及ぼす効果
- 運動は、成人と閉経後女性の腰椎体積骨密度の増加に効果があった。
考察
この論文の主な発見は、衝撃運動が、足の骨の一部や手首の骨の一部で、骨の密度や厚みを改善することがあるということです。
特に、足の骨の先端部分や大腿骨の付け根部分で、骨の密度が増加することがわかりました。
これらの部分は、骨折が起きやすい部分なので、衝撃運動が骨折予防に役立つ可能性があります。
また、手首の骨の中央や付け根部分で、骨の厚みが増加することがわかりました。
これは、衝撃運動が骨の外側の部分を強化することを示しています。
骨の外側の部分は、骨の強度に大きく寄与するので、衝撃運動が骨の強度を高める可能性があります。
しかし、衝撃運動が骨の構造に与える効果は、骨の部位や人の年齢や性別によって異なることもわかりました。
閉経後の女性では、衝撃運動による骨の密度の増加が最も顕著に見られました。
これは、閉経後の女性の骨はもともと減少しているため、衝撃運動の効果が相対的に大きく見えるためかもしれません。
しかし、高齢の男性に関しては、衝撃運動の効果を調べた研究が少なく、結論を出すのは難しいと言えます。
以上のことから、衝撃運動は、骨の構造に一部の部位で有益な影響を与えることがあるということがわかりました。
衝撃運動は、骨の健康だけでなく、筋力や心肺機能にも良い影響を与えると考えられます。
ですから、骨の健康を維持するためには、衝撃運動を日常生活に取り入れることがおすすめです。
ただし、衝撃運動には、関節や筋肉に負担がかかるという欠点もあります。
自分に合った強度や頻度で、無理のない範囲で行ってください。
衝撃運動を通して、骨の健康を守りましょう。
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がん患者さんの骨量減少をどのように管理すればいいかについてはコチラにを参考にしてみてください。
・骨の健康を維持するためには、衝撃運動を日常生活に取り入れることがおすすめ。
・自分に合った強度や頻度で、無理のない範囲で行うことが大事。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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