がん治療による骨量低下はどのように管理すればいいのか?

以前に、骨粗鬆症になりやすいがん種について紹介させてもらいました。

乳がん、泌尿器がん、皮膚がん、肺がん、婦人科がんなどが骨密度が低下しやすいんでしたね。

がんの種類によって骨粗鬆症のリスクが異なる!

2023年7月13日

がんサバイバーも骨粗鬆症については知っておくべきだと思いますので、興味がある方はこちらをご覧ください。

がん患者の身体機能低下~骨粗鬆症について~

2022年2月24日

そんながんサバイバーも気を付けないといけない骨粗鬆症ですが、実際にはどのように管理するのが推奨されているのでしょうか?

今回は、ホルモン治療を行っている乳がん患者さんと前立腺患者さんの骨量減少に対する管理をどのように行うべきかを紹介します。

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まとめ
・ホルモン治療を行っている乳がん患者さんと前立腺患者さんの骨量減少に対する管理をどのように行うべきかを紹介。

・ホルモン治療を行っているがん患者さんは骨粗鬆症の患者と同等以上の骨折リスクを持っている。

・ホルモン治療を行っているがん患者さんには、骨密度測定を行い、そのTスコアに応じて骨粗鬆症治療を検討する。

・このマニュアルの使用が骨折を減らし、QOLを改善できるかどうかを検証することが重要です。

今回紹介する論文の概要

今回紹介する論文は、ホルモン治療を行っている乳がん患者さんと前立腺患者さんの骨量減少に対する管理をどのように行うべきかを記載した内容になっています。

「Fukumoto S, Soen S, Taguchi T, et al. Management manual for cancer treatment-induced bone loss (CTIBL): position statement of the JSBMR. J Bone Miner Metab. 2020 Mar;38(2):141-144」

2020年に発行された日本人が執筆した論文です。

Naturecan 公式サイトはこちら

背景

Aromatase inhibitors (AIs) and androgen deprivation therapy (ADT) have greatly improved the clinical outcome of patients with hormone-sensitive breast and prostate cancers, respectively. On the other hand, these treatments are known to cause a decrease in bone mineral density (BMD) and an increase in fractures [1]. It has been reported that the occurrence of fractures not only significantly impairs the patients’ quality of life, but also almost doubles the frequency of subsequent fractures and worsens the prognosis of life

ADT has been shown to increase the risk of fractures by 2–3 times depending on the bone sites [3]. AIs have also been reported to cause approximately two times increase in fracture risk compared to tamoxifen treatment [4]. These results indicate that patients receiving ADT or taking AIs have a fracture risk equal to or greater than that of patients with osteoporosis with prevalent fractures.

The objective of this manual is to prevent fractures in CTIBL patients with high fracture risks who cannot be treated under the current guideline for the prevention and treatment of osteoporosis.

Fukumoto S, Soen S, Taguchi T, et al. Management manual for cancer treatment-induced bone loss (CTIBL): position statement of the JSBMR. J Bone Miner Metab. 2020 Mar;38(2):141-144

乳がんにはアロマターゼ阻害剤(AI)、前立腺がんにはアンドロゲン遮断療法(ADT)というホルモン治療が行われることがあります。

ADTは、骨の部位に応じて骨折のリスクを2〜3倍増加させるや、AIは、骨折リスクを約2倍増加させることも報告されています。

これらの結果は、ホルモン治療を行っているがん患者さんは骨粗鬆症の患者と同等以上の骨折リスクを持っていることを示しています。

しかし、現在の日本の骨粗鬆症診療のガイドラインにおいては、ホルモン治療を行っているがん患者さんに対する管理方法の記載がありません。

そこで、がんの治療に伴い骨量が低下するリスクが高いがん患者さんに対して、骨折を予防するためのマニュアルを作成しています。

Naturecan 公式サイトはこちら

推奨事項

Fukumoto S, Soen S, Taguchi T, et al. Management manual for cancer treatment-induced bone loss (CTIBL): position statement of the JSBMR. J Bone Miner Metab. 2020 Mar;38(2):141-144

論文に記載されている推奨事項としては、ADTまたはAIを開始するすべての患者は、血清25(OH)Dレベルおよびその他の骨折の危険因子を評価するようにアドバイスされ、適度に運動することが推奨されます。

まずはビタミンDや骨折リスクを評価することから始めましょうということです。

 

腰椎または大腿骨骨密度のTスコアが-1.5以上であれば骨密度測定を1〜2年ごとに繰り返して経過を見ます。

FRAX®という骨粗鬆症の評価ツールで10年以内の骨折の確立が15%以上であり、2.0≤Tスコア<-1.5であれば骨粗鬆症利用を開始します。

Tスコアが-2.0未満の場合も骨粗鬆症治療薬を開始します。

このように、ホルモン治療を行ったがん患者さんには、基本的に血清25(OH)Dレベルと骨密度の測定が推奨されています。

そして、骨密度の結果に応じて、骨粗鬆症治療を行うという流れです。

一般的な骨密度の測定結果では、骨減少症は T スコア -1.0 から -2.5 、骨粗鬆症はT スコアが -2.5 未満ですので、それより少しシビアにしている印象ですね。

このマニュアルでは骨粗鬆症治療薬は指定されていませんが、ゾレドロン酸とデノスマブといった治療薬が最適な薬と記載されています。

また、テリパラチドという治療薬は悪性骨病変を悪化させる可能性があるため、がん患者の骨粗鬆症治療には使用しないことが推奨されているので注意しましょう。

Naturecan 公式サイトはこちら

今後の方針

CTIBL patients without the diagnosis of osteoporosis may suffer from fracture, because CTIBL itself increases fracture risk by 2–3 times. Because these patients cannot be treated for the prevention of fracture under the Japanese guideline for the prevention and treatment of osteoporosis, this manual was created to reduce fracture risk in CTIBL patients. As mentioned before, there is not enough evidence concerning the incidence of fractures, the effect of treatment and the outcome of CTIBL patients in Japan. Therefore, it is important to verify whether the use of this manual can reduce fractures and improve QOL of CTIBL patients by prospective studies.

Fukumoto S, Soen S, Taguchi T, et al. Management manual for cancer treatment-induced bone loss (CTIBL): position statement of the JSBMR. J Bone Miner Metab. 2020 Mar;38(2):141-144

がんの治療に関連した骨粗鬆症は骨折のリスクを2〜3倍増加させるため、がん患者は骨折に苦しむ可能性があります。

がん患者の骨粗鬆症の治療は、日本のガイドラインの下では治療方針が記載されていないので、このマニュアルが作成されました。

日本ではがん患者さんの骨粗鬆症の骨折の発生率、治療の効果、転帰に関する十分なエビデンスはないので、今後の研究で、このマニュアルの使用が骨折を減らし、QOLを改善できるかどうかを検証することが重要です。

私も、現在のがん患者の骨粗鬆症診療がどのように行われているかを調査して、結果が出たらお伝えしますね。

がん患者さんの骨粗鬆症を支援するための研究を開始します!

2022年2月21日

ホルモン治療を行っているがん患者さんは、まずは骨密度を測定して、現在の骨の状況を確認しましょう。

Naturecan 公式サイトはこちら
まとめ
・ホルモン治療を行っている乳がん患者さんと前立腺患者さんの骨量減少に対する管理をどのように行うべきかを紹介。

・ホルモン治療を行っているがん患者さんは骨粗鬆症の患者と同等以上の骨折リスクを持っている。

・ホルモン治療を行っているがん患者さんには、骨密度測定を行い、そのTスコアに応じて骨粗鬆症治療を検討する。

・このマニュアルの使用が骨折を減らし、QOLを改善できるかどうかを検証することが重要です。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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