腰痛はサルコペニアよりフレイルと関連している

今回は、地域在住高齢者の腰痛とフレイル,サルコペニアとの関連を調査した論文を紹介します。

以前、変形性関節症とフレイルが関連していることを紹介しました。

変形性関節症患者さんはフレイルになりやすい

2022年10月16日

 

やはり整形外科疾患があるとフレイルに陥りやすいみたいですね。

 

変形性関節症は、上肢や下肢が中心となりますが、高齢者が抱える痛みの一つとして腰痛も非常に多いです。

また、フレイルと似たような概念としてサルコペニアもあり、高齢者はこれにも注意する必要があります。

がん患者の運動機能低下~サルコぺニアについて~

2022年2月22日

はたして腰痛はフレイルやサルコペニアと関連しているのでしょうか?

そこで今回は、地域在住高齢者の腰痛とフレイル,サルコペニアとの関連を調査した論文を紹介します。

まとめ
・地域在住高齢者の腰痛とフレイル,サルコペニアとの関連を調査した論文を紹介。

・腰痛はフレイルと強く関連していたが、サルコペニアとは関連していなかった。

・身体機能の低下だけでなく、腰痛を含む神経精神医学的要因もフレイルと関連し、フレイルの悪循環を形成している可能性が高いことを示唆している。

・腰痛がある患者は、身体機能だけでなく、心理・認知・社会性も含めたフレイルの評価・治療を検討する必要がある。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、地域在住高齢者の腰痛とフレイル,サルコペニアとの関連を調査した内容になっています。

「Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59」、2021年に発行された論文です。日本の先生が執筆された論文ですね。

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対象

The cross-sectional study was designed and named the Frail Elderly in the Sasayama-Tamba Area (FESTA).15-17 The study population, comprising individuals ≥65 years old, was recruited from the Sasayama-Tamba area, a rural area in Hyogo prefecture, Japan, between November 2016 and December 2018. Individuals who showed decreased cognitive function (Mini-Mental State Examination score <24) were excluded.

The average age of the 730 participants was 74.0 ± 5.9 years. Of these, 488 were women (66.8%) and 242 were men (33.2%).

Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

対象は、日本の兵庫県の農村地域である篠山丹波地域の65歳以上の高齢者です。

2016年11月から2018年12月の間に実施されています。

認知機能の低下(Mini-Mental State Examinationスコア<24)を示した方は除外されています。

最終的に730名が対象となり、平均年齢は74歳となっています。

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調査内容

The association between frailty status and the prevalence of LBP or ODI scores was examined using multivariate logistic regression analyses. Dependent variables were classified into two patterns: the group combining the frail and the prefrail groups, or the frail group alone. The model in the multivariate logistic regression analysis was adjusted for age, sex and body mass index (BMI). The adjusted odds ratios (ORs) for incidents related to frailty or those related to the increase in ODI scores by 1% were estimated with 95% confidence intervals (95% CIs). 

Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

体組成

筋肉量を評価するために、InBody770を用いて生体電気インピーダンス分析(BIA)を実施しています。

四肢の筋肉量を身長の2乗で割ったものを、Appendicular skeletal mass index(ASMI)と定義しています。

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腰痛

日常生活で最近腰痛を感じるか」という質問に対し、「はい」と答えた人を 腰痛を有する対象者(LBP) としました。

ODIは、LBPに関連する障害を評価するために最も広く使用されている尺度の1つであり、LBPに関連する機能的転帰を評価するためにODIスコアを使用しています。

ODIの10個の質問は、痛みと日常機能(痛みの強さ、身だしなみ、持ち上げ、歩く、座る、立つ、寝る、性的活動、社会的活動、旅行など)をカバーしていますおり、各項目は6段階(0~5)で評価され、スコアが高いほど、LBPに関連する障害のレベルが高いことを示します。

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フレイル

フレイルの表現型は、CHS(Cardiovascular Health Study)を用いて測定しました。

歩行速度が遅い、脱力、疲労、活動量が少ない、体重減少の5条件のうち3条件以上の制限によって定義しています。

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サルコペニア

サルコペニアの診断は、Asian Working Group for Sarcopenia (AWGS): 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment を用いて行われています。

被験者は、ASMIが正常(男性≧7.0 kg/m2、女性≧5.7 kg/m2)であればロバストと判断しました。

ASMIが低く、HGSが正常(男性≧28kg、女性≧18kg)、歩行速度が正常(≧1.0m/s)の場合、低骨格筋量(ASM)群に属すると診断しました。

ASMIが低く、歩行速度またはHGSが低い被験者はサルコペニアと診断されました。

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統計解析

フレイルの状態とLBPまたはODIスコアの有病率との関連を多変量ロジスティック回帰分析で検討し。ています。

従属変数は、フレイル群とプレフレイル群を合わせた群と、フレイル群のみの群の2パターンに分類されました。

多変量ロジスティック回帰分析のモデルは、年齢、性別、ボディマス指数(BMI)で調整されました。

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結果

Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

LBPの全体的な有病率は57.8%と比較的高かったが、ODIスコアが高い(40%以上)対象者は参加者のわずか1.9%(14人)であり、LBPによる障害を持つ高齢者はこの研究にほとんど含まれていないことが示されました。

単変量解析では、LBPはフレイル(P < 0.001)と有意に関連したが、サルコペニア(P = 0.523)とは関連はありませんでした。

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Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

上の3つのグラフはフレイルとODIの関連を示しています。

男女ともにフレイルになるにつれてODIが高値になっています。

 

下の3つのグラフはサルコペニアとODIの関連を示しています。

男女ともにサルコペニアとODIに関連は認められませんでした。

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Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

J-CHSによるフレイル診断の各要素とODIの関連も調査しています。

その結果、歩行速度が遅い、疲労感がある、握力が低いとODIが高値になっていました。

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Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

ロジスティック回帰分析の結果、年齢、性別、BMIを含めた調整モデルでは、LBPとODIはフレイルと関連していました。

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結論

In conclusion, we investigated the relationship between LBP, sarcopenia and frailty in 730 community-dwelling older adults and found that LBP was strongly associated with frailty status, but not with sarcopenia. These results suggest that not only the decline in physical function, but also neuropsychiatric factors including LBP, are associated with frailty, most likely forming a vicious cycle of frailty.

Low back pain is closely associated with frailty but not with sarcopenia: Cross-sectional study of rural Japanese community-dwelling older adults. Tsuji S, Shinmura K, Nagai K, Wada Y, Kusunoki H, Tamaki K, Ito M, Sano K, Amano M, Hasegawa Y, Kishimoto H, Maruo K, Iseki T, Tachibana T. Geriatr Gerontol Int. 2021 Jan;21(1):54-59

結論として、地域在住高齢者730名を対象にLBP、サルコペニア、フレイルの関係を調べたところ、LBPはフレイルと強く関連していたが、サルコペニアとは関連していませんでした。

これらの結果は、身体機能の低下だけでなく、LBPを含む神経精神医学的要因もフレイルと関連し、フレイルの悪循環を形成している可能性が高いことを示唆しています。

  

フレイルもサルコペニアも似たような印象がありましたが、腰痛を持つ高齢者はフレイルになりやすいという結果ですね。

サルコペニアは身体面の要素が大きいですが、フレイルは身体、心理、認知、社会といった複数の側面があることが影響しているようですね。

腰痛がある患者さんには、身体機能が問題なければ大丈夫ではなくて、心理・認知・社会性も含めたフレイルの評価・治療を検討する必要がありますね。

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まとめ
・地域在住高齢者の腰痛とフレイル,サルコペニアとの関連を調査した論文を紹介。

・腰痛はフレイルと強く関連していたが、サルコペニアとは関連していなかった。

・身体機能の低下だけでなく、腰痛を含む神経精神医学的要因もフレイルと関連し、フレイルの悪循環を形成している可能性が高いことを示唆している。

・腰痛がある患者は、身体機能だけでなく、心理・認知・社会性も含めたフレイルの評価・治療を検討する必要がある。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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