人工膝関節全置換術後の高強度運動は安全に実施可能!  

今回は、人工膝関節全置換術後に行う運動負荷として、高強度運動と低強度運動を比較した論文を紹介します。

 

前回は人工膝関節全置換術後の患者さんに対して早期からの段階的な筋トレを実施することの効果を検討した論文を紹介しました。

人工膝関節全置換術後の早期からの段階的な筋トレの効果は?  

2022年6月10日

段階的な筋トレを行うことで運動機能は改善しましたが、筋トレを含めないリハビリテーションでも同等の効果でしたので、筋トレに固執せずに機能的な運動中心でも大丈夫なのかもしれないという結果でしたね。

 

術後早期からガンガン運動したほうが改善しそうな印象がありますが、高強度の負荷で運動するのはなかなか大変ですよね。

そもそも術後早期から高強度の運動を行っても安全なんでしょうか?そして、その効果はどうなのでしょうか?

   

そこで、人工膝関節全置換術後に行う運動負荷として、高強度運動と低強度運動を比較した論文を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、人工膝関節全置換術後に行う運動負荷として、高強度運動と低強度運動を比較した内容になっています。

「Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.」 2017年に発行された論文になります。

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対象

Patients were consecutively recruited by 9 participating orthopedic surgeons from 4 institutions from August 2011 to November 2014. Patients were included if they were awaiting a primary, unilateral TKA secondary to knee osteoarthritis (OA) and aged 50 to 85 years. Exclusion criteria were:1) current smoker, 2) current cancer treatment, 3) uncontrolled diabetes (hemoglobin A1c level <7.0), 4) body mass index (BMI) greater than 40 kg/m2, 5) neurological, vascular, or cardiac problems that limited function, 6) discharge to location other than home after surgery (e.g. skilled nursing facility), 7) severe contralateral knee OA (> 5/10 pain with stair climbing) or other orthopedic conditions that limited function and necessitated alternative concurrent intervention (e.g. severe lumbar spinal stenosis, severe hip or ankle OA).

Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

対象は、変形性膝関節症(OA)に起因する片側一次TKAを待っている患者さんで、年齢は50~85歳です。

2011年8月から2014年11月にかけて、4施設の参加整形外科医9名により、患者を連続的に募集しています。

除外基準は、1)現在喫煙者、2)現在がん治療中、3)コントロールされていない糖尿病(ヘモグロビンA1c値<7.0)、4)BMIが40kg/㎡以上、5)機能を制限する神経、血管、心臓の問題、6)術後に自宅以外の場所に退院、 7)重度の対側膝関節症(階段昇降時の痛みが5/10以上)、または機能を制限し、別の同時介入を必要とするその他の整形外科疾患がある(重度の腰部脊柱管狭窄症、重度の股関節または足関節のOAなど)、ということになっています。

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方法

All patients were assessed 1 to 2 weeks preoperatively and at 1, 2, 3, 6, and 12 months postoperatively at the Clinical Translational Research Center of the University of Colorado. Following surgery, all patients received inpatient physical therapy twice daily prior to discharge.The HI and LI interventions were initiated 4.2 ± 1.2 (mean ± sd) days after surgery and took place at 4 different outpatient rehabilitation facilities in the Denver metro area. All patients were seen 3 times per week for the first 6 weeks and 2 times per week over the next 5 weeks. Testing sessions replaced a therapy session in weeks with a postoperative assessment for a total of 26 visits over 11 weeks. Treatment sessions averaged 45 minutes in length for both groups.

Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

術前1~2週間と術後1、2、3、6、12カ月目にコロラド大学臨床応用研究センターで全患者を評価しています。

手術後、すべての患者は退院前に1日2回の入院理学療法を受けました。

高強度(HI)と低強度(LI)の介入は術後4.2±1.2日(平均±sd)に開始されました。

すべての患者は、最初の6週間は週3回、次の5週間は週2回受診しました。

11週間で合計26回の受診で、治療セッションの長さは両群とも平均45分でした。

 

こちらが各群の運動プログラムになります。

 

【HI群】

①足関節底屈筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節外転筋、内転筋、臀筋、腸腰筋の筋トレ(8RMを8回×2セット)
体重負荷機能練習
バランス練習
アジリティ練習
週5日,30分の連続歩行→水泳、サイクリング、階段昇降機に移行
 

【LI群】

①最初の4週間は等尺性運動とROM運動に重点を置く
体重負荷運動への移行を遅くする
体重負荷運動の難易度をあまり上げない
体重または弾性バンド以上の抵抗はかけない
最初の4週間はADL以外の活動を制限し、 治療終了までに徐々に30分まで増やす

 

基本的にLI群は日常生活動作を中心に行いつつ、少しずつ筋トレや体重の負荷はあまりかけないようになっていますね。

 

高強度(HI)群84名、低強度(LI)群群78名で1,2,3,6,12ヶ月後の階段昇降テスト、TUG、6MW、WOMAC、SF-12、大腿四頭筋とハムストリングスの筋力を比較しています。

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結果

Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

こちらの表は、介入3ヶ月後の変化を2群で比較しています。

2群で改善の程度に差はありませんでした。

 

TUG、WOMAC、MCS、PCS、膝ROM、筋力、大腿四頭筋の活性化については、1、2、6、12ヶ月で群間差はありませんでした。

WOMACと大腿四頭筋の活性化は、1か月までに両群ともベースラインの性能に回復ていました。

TUG、6MW、PCS、MCSは2ヶ月までに両群ともベースラインまで回復した。

膝関節ROM、大腿四頭筋とハムストリングの筋力は、3か月までに両群ともベースラインレベルまで回復した。

12ヵ月後までに、6MW、TUG、WOMAC、PCS、大腿四頭筋とハムストリングの筋力、大腿四頭筋の活性化の結果は、ベースラインの成績を超えて改善した。

高強度でも低強度でもしっかり効果が出てるという結果ですね。

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Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

こちらの表は2群の有害事象の割合を示しています。

介入期間中、HI群では合計7件(参加者の8.3%)、LI群では合計8件(参加者の10.2%)の有害事象が発生しましたが、その割合は2群に差はなかったようです。

介入プロトコルの治療順守率は、HI群96.4±3.5%(平均±sd)、LI群96.8±3.1%でした。

治療者の治療アドヒアランスに群間差はありませんでした。

 

どちらの運動も有害事象はそれほど多くなく、実施率非常に高い結果になっていますね。

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結論

In conclusion, the HI intervention was safe to utilize however it did not lead to superior outcomes compared to the LI intervention. The effectiveness of the HI intervention may have been limited by arthrogenic inhibition. Both the HI and LI interventions led to improved strength and functional performance in the long-term.

Bade MJ, Struessel T, Dayton M, et al. Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

結論として、HI介入は安全に実施できたが、LI介入と比較して優れた効果は認められませんでした。

HI介入の有効性は、関節原性抑制によって制限された可能性があります。

HIとLIの介入は共に、長期的には筋力と機能的パフォーマンスの改善につながりました。

 

術後早期からの高強度の運動は安全に実施できるようです。

一方で、効果は低強度の運動とあまり差はないということになると、低強度運動を選択したほうがいいのか・・・、悩ましい結果ですね。

安全に実施できるので高強度運動を推奨しつつも、症状やモチベーションによっては、同等の効果がある低強度運動を選択するという形ですかね。

高強度運動の安全性と、低強度運動の効果が認められたことは、すごく有意義であると思います。

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まとめ
・人工膝関節全置換術後に行う運動負荷として、高強度運動と低強度運動を比較した論文を紹介。

・外来で週に2〜3回、11週間の運動を実施(合計26セッション)、高強度(HI)群84名、低強度(LI)群群78名で1,2,3,6,12ヶ月後の階段昇降テスト、TUG、6MW、WOMAC、SF-12、大腿四頭筋とハムストリングスの筋力を比較した。

・全ての項目において、12ヶ月まで改善は認めるが群間差はなかった。

・有害事象や実施率も群間差はなし。

・高強度運動の安全性と、低強度運動の効果が認められたことは、すごく有意義である。

・安全に実施できるので高強度運動を推奨しつつも、症状やモチベーションによっては、同等の効果がある低強度運動を選択するのがいいのかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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