ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法について解説

今回は、ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法についてまとめたレビューを紹介します。

以前サルコペニアの診断基準の一つとして、骨格筋量を超音波で測定しているISarcoPRMについて紹介しました。

超音波を用いたサルコペニアの評価:ISarcoPRMの特徴について解説

2023年3月1日

大腿前面の筋厚を超音波で測定することによって、サルコペニアを診断するんでしたね。

浮腫のような皮下組織の水分を区別できるので、BAIよりも有用かもしれないということでした。

サルコペニアは骨格筋量減少と筋力/身体機能低下が合併した状態ですが、実際の臨床現場では、重症な方ほどサルコペニアを合併しやすくなってきます。

 

やはり、ずっとベッド上だと、どんどん筋萎縮は進行していきますよね。

そして、重症な患者が入院しているのは集中治療室(ICU)であり、最近ではICUでも生命維持のことばかりでなく、機能予後を考え、筋萎縮の評価や予防を積極的に行うようになってきています。

 

それでは、ICUの患者はどのように筋萎縮が進むのでしょうか?

そして、ICUの患者の筋萎縮はどのように評価すればいいのでしょうか?

 

そこで今回は、ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法についてまとめた論文を紹介します。

まとめ
・ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法についてまとめた論文を紹介。

・このシステマティックレビューでは、3251人の重症患者を含む国際的な環境での53の研究の結果を調査した。

・85%の研究が筋肉量の評価に超音波を使用し、大腿直筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋の断面積または厚さを測定していた。

・重症患者の最初の1週間は、1日におよそ2%の筋肉量が減少し、ICU滞在期間中に筋肉量が減少していた。

・重症患者の半数はICU-AWを有していた。

・超音波は簡便で使用しやすいツールですので、実際にICUの場面でも使用されているようである。

・ICUのような重症患者さんでは1-2週間であっという間に筋萎縮が進んでしまうので、筋萎縮の評価とその予防が大事である。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法についてまとめた内容になっています。

「Fazzini B, Märkl T, Costas C, Blobner M, Schaller SJ, Prowle J, Puthucheary Z, Wackerhage H. The rate and assessment of muscle wasting during critical illness: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2023 Jan 3;27(1):2. doi: 10.1186/s13054-022-04253-0.」 2023年に発行された最新の論文になります。

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対象

Fazzini B, Märkl T, Costas C, Blobner M, Schaller SJ, Prowle J, Puthucheary Z, Wackerhage H. The rate and assessment of muscle wasting during critical illness: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2023 Jan 3;27(1):2. doi: 10.1186/s13054-022-04253-0.

こちらの図が、文献検索のフローチャートになります.

 

2000年1月1日から2022年1月31日の間に発表された研究を対象としています。

 

最初の文献検索では、MeSH用語と、(muscle mass OR muscle atrophy OR muscle wast* OR muscle loss OR muscle weakness OR muscle strength OR muscle function OR intensive care unit acquired weakness OR ICU-AW) AND (critical* ill* OR critical care OR intensive care unit OR ICU).を含むキーワードを組み合わせて使用しました。

 

侵襲的または非侵襲的な機械的換気を行っている重症患者を少なくとも20人登録し、入院日以降の任意の時点、またはICU滞在中の2つの時点で筋肉量またはICU-AWを評価したすべての査読付き研究が対象となっています。

2000年1月1日以前に発表された研究、②レビューとメタ分析、③書籍の章、コメント、論説、④ガイドラインと合意報告、⑤プロトコル研究、⑥ケーススタディとケースレポートは除外しています。

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結果

10,496件の研究のうち、53件の論文が残されました。

このうち、33件は経時的な筋萎縮を定量化したもので、4件は筋萎縮とICU-AWを測定し、20件はICU-AWのみを評価していました。

 

全体として、3251人の患者のデータを報告し、1773人(55%)が筋萎縮について、1478人(45%)がICU-AWについてでした。

 

オーストラリア、アジア、米国、南米、欧州で、1件のランダム化比較試験と43件の単施設および8件の多施設の観察研究が見つかりました。

 

Newcastle-Ottawaスケールで評価した観察研究は、すべて良質であり、バイアスのリスクは比較的低いことが判明しました。

無作為化比較試験はROBスケールで評価し、特に参加者と担当者の盲検化と結果評価の盲検化について、かなりのバイアスリスクがあると判断されています。

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評価方法


筋萎縮を評価するために使用された方法を分析したところ、筋肉の大きさを測定した33の研究のうち、28の研究(85%)が超音波を、5つの研究(15%)がCT を用いていることがわかりました。

 

超音波やCTと組み合わせて使用された追加の方法は、DNAに対するタンパク質の比率と病理組織学的分析、生体電気インピーダンス分析、血液中の尿素とクレアチニンの比率でした。

 

超音波で評価された主な筋肉は、大腿直筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋で、断面積または厚さを測定していました。

CTで測定した部位は、第3椎体(L3)レベルの骨格筋断面積と、矢状方向積分を用いた大腿筋体積の断面積です。

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筋肉量の変化

Fazzini B, Märkl T, Costas C, Blobner M, Schaller SJ, Prowle J, Puthucheary Z, Wackerhage H. The rate and assessment of muscle wasting during critical illness: a systematic review and meta-analysis. Crit Care. 2023 Jan 3;27(1):2. doi: 10.1186/s13054-022-04253-0.

こちらが、筋肉量の変化の推移になります。

 

重症化してから1週間、患者は毎日平均で大腿直筋の厚さを-1.75%(95% CI -2.05, -1.45)、大腿直筋の断面積を-2.10%(95% CI -3.17, -1.02)それぞれ減少しました。

大腿四頭筋の厚さは毎日-1.82%(95% CI -2.97, -0.66)ずつ減少しました。

上腕二頭筋断面積の1日の減少率は-2.23%(95% CI -2.60, -1.80)、上腕二頭筋厚さは-1.64%(95% CI -3.09, 0.19 )でした。

 

4つの研究では、大腿直筋の断面積と筋厚の両方を測定し、筋厚の測定は断面積と比較して筋萎縮を著しく過小評価することが示されています(p < 0.001)。これは上腕二頭筋についても同様でした。

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ICU-AWの有病率


ICU-AWの有病率を分析した研究は20件あり、ICU-AWの全有病率は48%でした。

これは研究によって異なり、MRCスコアによる臨床検査のみを用いた研究では43%、電気生理学的検査のみを用いた研究では55%、MRCスコア臨床検査と電気生理学的検査を併用した研究では、48%でした。

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筋力低下と関連するアウトカム

敗血症や敗血症性ショックの患者において、大腿直筋断面積の変化は、機械的換気をしている患者では、換気をしていない患者(10.76%)と比較して有意に高い(17.5%)、p = 0.001 と報告されています。

 

上腕二頭筋の質量が早期に低下することは、死亡率の予測因子であることが判明しました。

 

さらに、ある研究では、重症の最初の1週間で、大腿四頭筋の筋厚が1%減少するごとに、60日死亡率が5%増加することが指摘されました.

 

集中治療室での最初の1週間、大腿直筋の断面積が10%以上減少すると、ICU滞在期間(p=0.038)、病院滞在期間(p=0.014)、機械的換気時間(p=0.05)の延長と関連していました.

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まとめ

このシステマティックレビューでは、3251人の重症患者を含む国際的な環境での53の研究の結果を調査しました。

主な結果は、(1)85%の研究が筋肉量の評価に超音波を使用し、大腿直筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋の断面積または厚さを測定したこと、(2)重症患者の最初の1週間は、1日におよそ2%の筋肉量が減少し、ICU滞在期間中に筋肉量が減少すること、(3)重症患者の半数はICU-AWを有するということでした。

やはり超音波は簡便で使用しやすいツールですので、実際にICUの場面でも使用されているようです。

 

ICUのような重症患者さんでは1-2週間であっという間に筋萎縮が進んでしまうので、筋萎縮の評価とその予防が大事ですね。

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まとめ
・ICUの重症患者の筋萎縮速度と評価方法についてまとめた論文を紹介。

・このシステマティックレビューでは、3251人の重症患者を含む国際的な環境での53の研究の結果を調査した。

・85%の研究が筋肉量の評価に超音波を使用し、大腿直筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋の断面積または厚さを測定していた。

・重症患者の最初の1週間は、1日におよそ2%の筋肉量が減少し、ICU滞在期間中に筋肉量が減少していた。

・重症患者の半数はICU-AWを有していた。

・超音波は簡便で使用しやすいツールですので、実際にICUの場面でも使用されているようである。

・ICUのような重症患者さんでは1-2週間であっという間に筋萎縮が進んでしまうので、筋萎縮の評価とその予防が大事である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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