婦人科がん患者はリンパ浮腫ケアを行っているのか?

最近は、がん患者さんの運動実施の実態や、リンパ浮腫外来でのケアの実態について紹介してきました。

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今回の運動の実施もそうでしたが、がん患者さんの調査と言ったら乳がん患者さんが多くて、あまり婦人科がんのリンパ浮腫の研究は少ない現状です。

婦人科がん患者さんのリンパ浮腫のケアってちゃんとできているのでしょうか?

そこで、今回は、婦人科がん患者さんを対象に、リンパ浮腫予防のセルフケアの実施状況とその要因について調査した論文を紹介します。

まとめ
・婦人科がん患者さんを対象に、リンパ浮腫予防のセルフケアの実施状況とその要因について調査した内容の論文を紹介。

・多くの患者さんが少なからず不安を抱えていた。

・リンパ浮腫に関する指導は行われているが、その知識に関しては偏りが認められた。

・知識を持っている方がセルフケアを行う率が高い傾向だった。

・定期的にリンパ浮腫に関して学べる場が必要と思われる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、婦人科がん患者さんを対象に、リンパ浮腫予防のセルフケアの実施状況とその要因について調査した内容になっています。

「水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)」、2017年に日本で発行された論文です。

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方法

1.研究対象: 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会に登録している 北海道内の 15 施設に研究協力を依頼し,病床数 300 以 上の 3 施設から調査協力の同意を得られた.この 3 施 設の婦人科外来に通院している患者のうち,① 2013 年 以前に婦人科がんでリンパ節郭清術を実施,②手術から 10 年以内の成人女性,③同意の得られた方,を対象と した.

2.調査期間: 2013 年 11 月 1 日~2014 年 1 月 31 日.

3.データ収集方法: 対象施設の所属長に研究協力を依頼した.承諾を得ら れた施設の外来担当者に書面および口頭で研究の主旨を 説明し,外来通院中で対象となる患者に研究協力依頼書 と自記式質問紙の配布と記入を依頼した.回収方法は留 め置きとし,その場での記載が困難な場合は返信用の封 筒を用いて個別での郵送法とした.

4.調査内容: リンパ浮腫指導管理料の算定要因9) および先行文献10)11) を参考に,「個人属性およびリンパ浮腫に関連する現状」 「リンパ浮腫の知識:リンパ浮腫,初期症状,治療に関 する 21 項目」「セルフケア実施状況:体重管理,スキン ケアなど 8 カテゴリー 30 項目」について,独自に作成 した質問紙を用いた.質問紙作成に当たりリンパ浮腫に 関する専門家の確認を得,また婦人科がんリンパ節郭清 術後の方にプレテストを行い,内容の妥当性を検討し た.

水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

対象の条件は、10年以内にリンパ節郭清術を施行された婦人科がん患者さん176名となっています。

3つの施設から対象を選定しています。 

そして、対象の患者さんに質問紙を渡して、リンパ浮腫の知識やリンパ浮腫ケアの実施状況などを回答してもらっています。

いわゆるアンケート調査の研究ですね。

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結果

水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

こちらの表は対象者のリンパ浮腫の現状です。

60%以上の患者さんがむくみを経験しており、そのうち42%は現在むくみを自覚しています。

少しでも不安を感じている人は70%以上もいます。

リンパ浮腫はいつ発症するかもわからないので、やはり不安を多少は感じているんでしょうね。

 

水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

続いて、リンパ浮腫や初期症状、治療方法の知識について質問しています。

リンパ浮腫に関しては、「発症の可能性は生涯続く」103 名(58.6%),「手術と浮腫の関係」95 名(54%),「いつ発症するかは不明」 95 名(54%)の 3 項目のみが、半数以上が知っている項目でした。

それ以外の項目は半数以上の方があまり知らないというわけですね。

このブログでも解説している肥満が原因になることなどは非常に重要ですけど、あまり知られていないようです。

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初期症状に関しては、割と知られているようです。

どんな症状が出たら注意すべきかはわかっているみたいですね。

 

治療に関しては、圧迫やドレナージは半数以上が知られています。

しかし、運動やスキンケアは半数以上の方があまり知らないみたいです。

このブログでは、運動の重要性を強く説明していますが、やはりなかなか運動が治療の一つという認識は乏しいようですね・・・。

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水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

こちらは実施しているセルフケアについての結果です。

最も実施率の高いセルフケアは「清潔の保持」155 名(88%)で、次に、「就寝時の下肢挙上」123 名(69.8%), 「体重測定」121 名(68.7%),「適正体重の維持」113 名 (64.2%)となっています。

保存的治療である「弾性ス トッキングの着用」は 50 名(28.4%),「セルフドレ ナージ」は 76 名(43.2 %),「 バ ン デ ー ジ 」 は 6 名 (3.4%)です。

日常生活の注意はするけど、複合的治療までは行えていないというところでしょうか。

水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

こちらの表は、セルフケアとリンパ浮腫に関する知識の関係性を表しています。

数字が記載されている部分に関しては、この知識があればこんなセルフケアをする人が多かったですよという解釈になります。

最も高く関係していたのは、「左右差の確認」の実施と「スキンケア」の知識 (rs=0.529)でした。

次に関係していたのは, 「左右差の確認」の実施と「足や腰の違和感」の知識 (rs=0.521)でした。

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結論

1)リンパ浮腫予防のセルフケアの実施は,専門外来 を受診している,リンパ浮腫の診断を受けている,むく みの自覚があるものが有意に高く,リンパ浮腫を発症し ている,あるいは自覚症状の有無が関連していた.

2)セルフケアの実施とリンパ浮腫の知識には中等度 の相関が認められ,特に感染予防のセルフケアの実施に 知識が影響していた.

3)リンパ節郭清術後患者の約 7 割はリンパ浮腫につ いての説明を受けたと認識し,おもな情報源は看護師で あったが,具体的な知識の習得は低く偏りがあることから,十分な指導・教育を受けられる環境を整える必要性が示唆された.

水間 八寿子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ, 他. 婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防の セルフケア実施状況と関連する要因. 日本がん看護学会誌31 巻 (2017)

リンパ浮腫に関する指導を受けていながらも、知識の習得というのはなかなか難しいようです。

リンパ節郭清した方は不安も少なからず抱えているようなので、正しい知識を知っておくことが不安の改善や浮腫の予防につながるでしょう。

1度指導を受けただけじゃ覚えきれないでしょうから、定期的に指導を受ける機会があったらいいですね。

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まとめ
・婦人科がん患者さんを対象に、リンパ浮腫予防のセルフケアの実施状況とその要因について調査した内容の論文を紹介。

・多くの患者さんが少なからず不安を抱えていた。

・リンパ浮腫に関する指導は行われているが、その知識に関しては偏りが認められた。

・知識を持っている方がセルフケアを行う率が高い傾向だった。

・定期的にリンパ浮腫に関して学べる場が必要と思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

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