ウォーターベッドは自律神経に効果があるのか？どれくらいの時間がいいのか？

前回の記事では慢性疼痛への対応について紹介しました。

慢性疼痛患者が陥る悪循環から脱却する方法は？

2023年6月1日

過剰な安静になり過ぎずに、適度に運動することが大事でしたね。

　
ただし、運動を行った方がいいとわかっていても、痛みがあるとなかなか実施しにくいのも事実です。

そのため、薬物療法や物理療法で痛みを軽減させて、運動しやすいコンディションを整えてから、運動を実施することも一つの手です。

整形外科クリニックなんかには数多くの物理療法機器がそろえられていますが、その効果はご存じですか？

患者さんに人気のある物理療法の一つにウォーターベッドがあります。水圧でマッサージを行うような機器ですね。

そこで今回は、物理療法の一つであるウォーターベッドの効果について紹介します。

ウォーターベッドの一般的な効果

ウォーターベッドとは、水圧刺激により、全身の筋肉などをほぐし、血行の改善を促進する機器になります。

一般的な効果としては、

• ストレス解消
• 血液循環の向上
• 疲労物質の除去
• 体のリラクゼーション
• 筋の柔軟性改善

などが挙げられます。

実際に効果を検証した研究は少ないのですが、いくつかご紹介します。

調査方法

石 叡人　他：日本感性工学会論文誌. 2016

20代の健常者に対して10分間のウォーターベッドを行い、自律神経系への効果を検証しています。

マッサージの様々な部位やパターンが切り替わりながら、合計10分間のマッサージを行っています。

石 叡人　他：日本感性工学会論文誌. 2016

自律神経系とは交感神経と副交感神経からなり、簡単に言うと交感神経が働いていると緊張していて、副交感神経が働いているとリラックスしているということになります。

心拍間隔を周波数解析することにより、交感神経と副交感神経のどちらが優位に働いているかがわかります。

その結果を用いて、リラックス度を計算して、その変化を見ているという調査になります。

さらにウォーターマッサージ後にアンケート調査も行っています。

最も気持ち悪くなったが1、最も気持ちよくなったが5の5段階評価で、その効果を調査しています。

自律神経への効果

石 叡人　他：日本感性工学会論文誌. 2016

こちらはウォーターベッドの最中に30秒ごとのリラックス度の結果になります。

開始直後から効果が出ており、20-40%のリラックス度の改善が認められています。

石 叡人　他：日本感性工学会論文誌. 2016

こちらはリラックス度変化と主観評価との関係性を示しています。

リラックス度の改善が大きいほど、主観評価も高いことが示されています。

つまり、ウォーターベッドを10分間行うことによって、自律神経系の副交感神経が働きやすくなり、リラックスして気持ちよく感じることができるという結果です。

疼痛が強い患者さんというのは、自律神経系の調整する能力も低下しており、なかなかリラックスできていない方も多いようです。

そのような方には、ウォーターベッドは単純に筋肉をほぐして柔らかくするとか血行を良くするという効果だけでなく、自律神経系にも働いてリラックスしやすくなる効果が期待できそうですね。

今回の研究では10分間実施することで効果が認められています。

しかし、開始直後からリラックス度は改善しているので、時間がなければ10分未満の短時間でも効果が期待できるかもですね。

痛みが強くてリラックスできていない方は、一度ウォーターベッドを試してみてもいいかもしれません。