今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス（2016年版）より、がん患者さんの予後に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。
今まで、がん患者さんの運動療法の効果について紹介してきました。
多くの効果が認められましたが、がん患者さんの治療の最終目的は予後の改善になることが多いです。
最近では、運動やリハビリに関しても、予後に対する効果の報告もちらほら見られます。
そこで今回は、がん患者さんの予後に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。
記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。
・運動は，乳がんおよび大腸がん患者の死亡率を低下させる可能性があると考えられる。
・手術や抗がん剤と違って、運動は自分で努力できる治療方法なので、積極的に頑張りましょう。
がん種混在に対する効果
まずは、がん種が混合された患者さんを対象とした報告をまとめています。
①がんサバイバーを対象に，運動と死亡率などの関連について文献的考察を行った結果，27 件の観察研究で，運動は乳がんと大腸がんのすべての疾患特異的死亡率や全死亡率の低下に関連していたという一貫したエビデンスが示されていました。
しかし、他のがんに関しては，運動と死亡率との関連において十分なエビデンスは得られませんでした。
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乳がん患者に対する効果
① 乳がんサバイバーを対象とした運動と生命予後に関する文献的考察を行った結果，乳がんサバイバーにおける運動が生命予後に影響するという十分な知見は得られませんでした。
②乳がん患者を対象とした運動と死亡率の関連についてメタアナリシスを行った結果，乳がん診断前・後の運動が，乳がんの特異的死亡率と全死亡率の軽減に関連があると結論づけていました。
診断前に運動を実施している群の死亡リスクは0.82 で，診断前の低・中等度の運動群の死亡リスクは，0.81，0.83 でした（乳がん特異的死亡率）。
診断前の全死亡率も、診断後の乳がん特異的死亡率と全死亡率も同様でした。
特に，運動の介入によって，肥満女性は標準体重の女性と比較して，有意に死亡率が低下していました。
また，閉経後の女性は閉経前の女性と比較して，死亡率が有意に低下していました。
乳がん患者さんに対しては、運動は予後に影響ないとされる報告がある一方で、効果があるとされる報告もあるようです。
特に肥満や閉経後の患者さんには運動を推奨したほうがいいようですね。
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大腸がん患者に対する効果
①大腸がん患者を対象に，運動と死亡率の関連についてメタアナリシスを行った結果，診断前・後の運動は両群とも大腸がんの特異的死亡率と全死亡率の低下に関連していました。
診断前の運動群と非運動群の比較で，運動群の死亡リスクは0.75 でした（大腸がん特異的死亡率）。
診断前の高い運動群は低い運動群と比較して，死亡リスクは0.70 で，同様に診断後に何か運動をした群の死亡リスクは0.74，診断後の高い運動群の死亡リスクは0.65 でした。
診断前から運動している患者さんはもちろんのこと、診断後から運動を行っても十分遅くないようです。
運動強度は高強度の方が効果があるようですね。
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まとめ
運動は，乳がんおよび大腸がん患者の死亡率を低下させる可能性があると考えられます。
しかし，研究数や研究方法の限界があり，予後を改善するかまでは結論づけられないので、今後，長期的な観察研究や無作為化比較試験，メタアナリシスの可能性を含めた研究が必要であるとされています。
手術や抗がん剤は医師に行ってもらわないとどうしようもないですが、運動で予後が改善するんだったら、自分の努力が反映されるので頑張る気になりますね！
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・運動は，乳がんおよび大腸がん患者の死亡率を低下させる可能性があると考えられる。
・手術や抗がん剤と違って、運動は自分で努力できる治療方法なので、積極的に頑張りましょう。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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