変形性関節症患者への自己管理プログラムは自己効力感と不安を改善する

今回は、変形性関節症患者に対して、関節炎の自己管理プログラムを教育することの効果を検討した論文を紹介します。

 

前回は変形性膝関節症患者に対して、運動動画の配布と電話でのカウンセリングを行うことで、QOLが改善するかを検討した論文について紹介しました。

運動動画の配布と電話でのカウンセリングは、膝OA患者のQOLを改善させる

2022年6月4日

運動動画の配布と電話でのカウンセリングは、変形性膝関節症患者さんのQOLを改善させるという結果でしたね。

そんなに運動ができない方には認知行動療法や行動変容的な介入を検討してもいいかもしれないという考察でした。

 

認知行動療法という考え方になると、大事になってくるのが「自己管理」ということになります。

変形性関節症というのは、変形してしまった関節が改善するというのは難しいので、ある程度自己管理で付き合っていく必要があります。

どのような場面で、どのような対応を行うべきかを知っておくと生活がずいぶん変わるはずですので、教育といった観点も重要ですね。

 

さらには、介入の効果として疼痛強度や運動機能だけでなく、自己効力感というのも大事です。

疼痛の強さが同じでも、自己効力感が高ければQOLは高そうな気がしますよね。

 

今回は、変形性関節症患者に対して、関節炎の自己管理プログラムを教育することの効果を検討した論文を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、変形性関節症患者に対して、関節炎の自己管理プログラムを教育することの効果を検討した内容になっています。

「Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.」、2006年に発行された少し古い論文です。

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対象

We recruited participants between December 2000 and February 2003. Twelve month follow-up for all participants ended in March 2004.Patients were eligible if they were aged 50 or more, had been clinically diagnosed with osteoarthritis of the hips or knees (or both) for at least a year, and had had associated pain or functional disability (or both) during the past month. We excluded people who had been recommended surgery for arthritis or who had poor mobility, poor understanding of English, associated neurological signs, or cognitive impairment.

Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.

2000年12月から2003年2月にかけて、参加者を募集しました。

対象者は、年齢が50歳以上で、臨床的に変形性股関節症または変形性膝関節症と診断されて1年以上経過し、過去1ヶ月間に関連する痛みまたは機能障害(あるいはその両方)があった812名です。

関節炎の手術を勧められたことがある人、運動機能の低下、英語の理解力の低下、神経症状を伴う人、認知障害のある人は除外されています。

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方法

The intervention group received an education booklet and an invitation to participate in a local challenging arthritis course. The booklet was designed for the study and incorporated information available to the public from Arthritis Care and the Arthritis Research Campaign.

The control group received only the education booklet. This reflects standard primary care, where giving written information is common practice.

Outcomes were assessed through questionnaires completed by the participants at entry to the trial before randomisation and at four and 12 months .

Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.

介入群には、教育用のパンフレットを配布し、関節炎の自己管理に関する教育を行いました。

コントロール群はパンフレットの配布のみとなっております。

そして、4か月後、12か月後に自己記入式のアンケート調査で2群を比較しております。

 

介入群に行った教育プログラムは、1回2時間半のセッションを6回実施されています。

内容は以下の通りです。

 

① 関節炎/線維筋痛症に関する基本的な情報、状態に対するグループの感情を把握する

②持久力運動の開発とモニタリングにおけるグループの援助導入

③感情や疲労への対処法、コミュニケーション改善のための技法を紹介

④うつ病への対処法、 健康的な食生活の原則について

⑤リソースを利用する戦略、問題解決の原則を話し合い、スキルを実践

⑥関節炎治療薬の主な種類の適切な使用法を理解する、痛みの管理法を見直す、将来の自己管理プログラムに関する目標/問題を特定する

 

関節炎に関する知識を身に着け、様々の問題への対処法を考え、自分で自己管理できるための教育内容となっていますね。

運動や感情、食事、薬剤、痛みなど様々な側面に対する教育となっております。

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結果

Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.

介入群406名とコントロール群406名に群分けされています。

こちらはベースラインでの2群の結果の比較になりますが、2群の結果に差はなかったようです。

 

Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.

こちらは4ヵ月後と12か月後の変化を2群で比較している表となります。

介入群では、不安・抑うつ尺度(HADS)の不安スコアが12ヶ月目に有意に減少していました。

また、うつスコアは4ヶ月で-0.40(-0.76→-0.03)の有意な減少を認めました、これは12ヶ月までには消失していました。

関節炎自己効力感(ASE)スケールのについては、4ヶ月後と12ヶ月後に群間有意差を認めました。

 

つまり、自己管理プログラムを追加すると不安やうつの改善、自己効力感の改善が期待できる結果のようです。

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結論

Our study adds greatly to the literature on self management programmes for arthritis by reporting findings from a large randomised controlled trial of patients with osteoarthritis recruited from primary care and by using established and well validated outcome measures. Little doubt exists that such techniques provide some benefit for those with chronic conditions, but the best way to provide the intervention is unclear, and insufficient evidence exists to justify a policy of active recruitment of patients from primary care settings.

Buszewicz M, Rait G, Griffin M, et al. Self management of arthritis in primary care: randomised controlled trial. BMJ. 2006 Oct 28;333(7574):879.

今回の研究は、変形性関節症患者の大規模な無作為化対照試験から得られた知見を報告し、確立され十分に検証された結果指標を用いることにより、関節炎の自己管理プログラムの効果について大きく貢献するものであります。

 

前回のような運動動画配布やカウンセリングも効果が期待できますが、今回の結果を見ると自己管理の教育というのも大事なようですね。

今回の結果では運動機能を改善できるかは不明ですが、自己管理能力が高まることにより、不安やうつが改善し、自己効力感も高まるようです。

がん患者さんも不安やうつが強い方や自己効力感が低い方が多いことが報告されているので、このような教育プログラムを参考にしてもいいかもですね。

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まとめ
・変形性関節症患者に対して、関節炎の自己管理プログラムを教育することの効果を検討した論文を紹介。

・介入群には、教育用のパンフレット配布に加えて、1回2時間半の自己管理教育プログラムを6回実施した。

・自己管理プログラムを追加すると不安やうつの改善、自己効力感の改善が期待できるような結果であった。

・がん患者さんも不安やうつが強い方や自己効力感が低い方が多いことが報告されているので、このような教育プログラムを参考にしてもいいかもしてない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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