膝痛患者の理学療法に電話でのコーチングを追加すると効果があるのか? 

今回は、膝痛がある患者さんに対して、理学療法に加えて行動変容に関する電話でのコーチングを行うことの効果を検討した論文を紹介します。

 

前回は変形性膝関節症患者に対して、関節炎の自己管理プログラムを教育することの効果を検討した論文について紹介しました。

変形性関節症患者への自己管理プログラムは自己効力感と不安を改善する

2022年6月5日

自己管理プログラムを追加すると不安やうつの改善、自己効力感の改善が期待できるような結果でしたね

がん患者さんも不安やうつが強い方や自己効力感が低い方が多いことが報告されているので、このような教育プログラムを参考にしてもいいかもしれないと感じました。

 

前回紹介した論文はパンフレット配布に対して、パンフレット配布に教育セッションを追加したときの効果でした。

変形性膝関節症患者に対して理学療法を行うことも多いわけですが、運動の効果は今まで説明してきたとおりです。

早期膝OA患者に対する高強度マシントレーニングの効果

2022年5月31日

高強度の自転車運動は変形性膝関節症患者の痛みを軽減する

2022年5月30日

それでは、運動に教育的なプログラムを組み合わせるとより効果があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、膝痛がある患者さんに対して、理学療法に加えて行動変容に関する電話でのコーチングを行うことの効果を検討した論文を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、膝痛がある患者さんに対して、理学療法に加えて行動変容に関する電話でのコーチングを行うことの効果を検討した論文になっています。

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対象

A total of 168 inactive adults ages ≥50 years with knee pain on a numeric rating scale ≥4 (NRS; range 0-10) and knee OA were recruited from the community and randomly assigned to a physiotherapy (PT) and coaching group (n = 84) or PT-only (n = 84) group.

Bennell KL, Campbell PK, Egerton T, et al. Telephone Coaching to Enhance a Home-Based Physical Activity Program for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Jan;69(1):84-94

50歳以上の膝痛を有する不活発な成人168名を地域から募集し、理学療法(PT)とコーチングの併用群(n=84)またはPTのみ群(n=84)に無作為に割り付けた。

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方法

All participants received five 30-minute consultations with a physiotherapist over 6 months for education, home exercise, and physical activity advice. PT+coaching participants also received 6-12 telephone coaching sessions by clinicians trained in behavioral-change support for exercise and physical activity. Primary outcomes were pain (NRS) and physical function (Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index [WOMAC; score range 0-68]) at 6 months. Secondary outcomes were these same measures at 12 and 18 months, as well as physical activity, exercise adherence, other pain and function measures, and quality of life. Analyses were intent-to-treat with multiple imputation for missing data.

Bennell KL, Campbell PK, Egerton T, et al. Telephone Coaching to Enhance a Home-Based Physical Activity Program for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Jan;69(1):84-94

参加者全員に対し、理学療法士による教育、家庭での運動、身体活動に関するアドバイス(30分×5回)を6ヶ月間実施しました。

また、PT+コーチング参加者は、運動と身体活動の行動変容支援に関する訓練を受けた臨床医による6~12回の電話コーチングセッションを受けました。

主要アウトカムは、6ヵ月後の疼痛(NRS)と身体機能(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index [WOMAC])でした。副次的アウトカムは、12ヵ月と18ヵ月におけるこれらの同じ測定値、ならびに身体活動、運動継続性、その他の疼痛および機能測定、QOLとしました。

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結果

Bennell KL, Campbell PK, Egerton T, et al. Telephone Coaching to Enhance a Home-Based Physical Activity Program for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Jan;69(1):84-94

こちらの表は、0-18ヶ月の疼痛やWOMACの変化を2群間で比較しています。

合計142名(85%)、136名(81%)、128名(76%)の参加者が、それぞれ6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の測定に参加しました。

NRS疼痛(平均差0.4単位[95%信頼区間(95%CI)-0.4、1.3])およびWOMAC機能(1.8[95%CI-1.9、5.5])の変化は6ヵ月時点で群間差がなく、両群ともに臨床的に意義ある改善を示していました。

しかし、2群間では差は認められませんでした。

身体活動および運動行動に関連するいくつかの副次的アウトカムは、6ヵ月時点ではPT+コーチングに有利であったが、12ヵ月または18ヵ月時点では概して不利であった。他のほとんどのアウトカムでは群間差は認められなかった。

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結論

In summary, pain and function benefits of a 6-month physiotherapist-prescribed physical activity and exercise program were not augmented by simultaneous telephone coaching performed by a separate health professional, although selfreported physical activity levels and adherence to home exercise were generally increased in the short-term.

Bennell KL, Campbell PK, Egerton T, et al. Telephone Coaching to Enhance a Home-Based Physical Activity Program for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Jan;69(1):84-94

6ヶ月間の理学療法士による身体活動および運動プログラムの痛みと機能の効果は、短期的には自己申告の身体活動レベルと自宅での運動の遵守が概して増加したものの、別の医療専門家が同時に行った電話指導によって増強されることはありませんでした。

 

理学療法単独でも、理学療法に電話指導を組み合わせた介入でも、どちらでも効果はしっかり出るようです。

一方で、電話指導を追加しても理学療法単独と比べて、有意に改善するわけではないようですね。

しかし、今回の研究では、理学療法単独でもある程度の教育・指導は行っていますので、純粋には指導がいらないというわけではないでしょうね。

実際の臨床では、疾患や日常生活、考え方などに対する指導は非常に重要だと思いますし、私自身もかなり強調して行っています。

しっかりと自身の疾患や運動のメリットなどを把握している方が活動量が高いという論文は散見されますので、

がん患者の活動量を阻害・向上させる要因は?

2022年5月5日

高齢がん患者は運動に意欲はあるが実施率が低い!

2022年4月16日

やっぱり、医療者は患者さんに対する教育を行い、患者さんはそれらを理解しようとする意識は大事だと思いますよ。

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まとめ
・膝痛がある患者さんに対して、理学療法に加えて行動変容に関する電話でのコーチングを行うことの効果を検討した論文を紹介。

・参加者全員に対し、理学療法士による教育、家庭での運動、身体活動に関するアドバイス(30分×5回)を6ヶ月間実施した。

・また、PT+コーチング参加者は、運動と身体活動の行動変容支援に関する訓練を受けた臨床医による6~12回の電話コーチングセッションを受けた。

・2群とも時間とともに有意な改善が見られたが、2群間で改善の程度に差は認めなかった。

・理学療法とある程度の指導を行えば、それに加えて電話での行動変容の指導を行っても、さらに改善まではしないようである。

・しかし、実際の臨床では、疾患や日常生活、考え方などに対する指導は非常に重要だと思われるので、医療者は患者さんに対する教育を行い、患者さんはそれらを理解しようとする意識は大事だと思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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