今回は、スマホやウェアラブルデバイスを使って、がん患者さんの体調や症状を測ることができるという研究についてお話します。
スマホやウェアラブルデバイスは、私たちの動きや心拍数、睡眠などを感知して、データとして記録してくれます。
このデータを使って、私たちの健康状態を知ることができます。
例えば、歩数が少なかったり、心拍数が高かったり、睡眠が浅かったりすると、体調が悪いかもしれませんね。
がん患者さんの場合は、スマホやウェアラブルデバイスのデータが、とても役に立つかもしれません。
がん患者さんは、痛みや疲れ、吐き気などの症状に悩まされることが多いです。
また、がんの治療は、入院や手術、抗がん剤などが必要になることがあります。
これらの治療は、がん細胞をやっつけるのに効果的ですが、同時に体に負担をかけることもあります。そのため、がん患者さんは、治療中や治療後に、体力が低下したり、副作用が出たり、再入院や再手術が必要になったりすることがあります。
そこで、スマホやウェアラブルデバイスのデータを使って、
がん患者さんの体調や症状を測ることができたら、どうでしょうか?
そのデータが、医師や看護師に伝えられたら、どうでしょうか?
そのデータが、がん患者さんにフィードバックされたら、どうでしょうか?
このように、スマホやウェアラブルデバイスを使って、がん患者さんの体調や症状を測ることは、とても有益なことだと思いませんか?
しかし、これは本当に可能なことなのでしょうか?
実は、最近の研究では、このようなことが可能であるということが示されています。
今回は、スマホやウェアラブルデバイスを使って、がん患者さんの体調や症状を測ることができるという研究についてお話します。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、スマホやウェアラブルデバイスを使って、がん患者さんの体調や症状を測ることができるとかを調査した内容になっています。
「Low CA. Harnessing consumer smartphone and wearable sensors for clinical cancer research. NPJ Digit Med. 2020 Oct 27;3:140. doi: 10.1038/s41746-020-00351-x. 」
2020年に発行された論文です。
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腫瘍学研究におけるウェアラブルデバイス
ウェアラブルデバイスは、時計や指輪やネックレスのように身につけることができる機械です。
例えば、FitbitやApple Watchというものは、歩いたり走ったりしたときにどれくらい動いたかや、心臓の鼓動や体温などを測ることができます。
これらの機械は、がんの治療にどう役立つのでしょうか。
それは、がんの治療を受けている人の体や気持ちの変化をより正確に知ることができます。
例えば、歩いたり走ったりしたときにどれくらい動いたかを測ることで、体力や疲れやすさや痛みなどを知ることができます。
また、心臓の鼓動や体温などを測ることで、体の調子や病気の進み具合などを知ることができます。これらの情報は、医師や看護師にも伝えることができます。
そうすると、医師や看護師は、がんの治療を受けている人に合ったより良い治療やケアを提供することができます。
では、どのようにしてこれらの機械を使ってがんの治療に役立てるのでしょうか。
それは、がんの治療を受けている人が、スマートフォンやウェアラブルデバイスを持ったり身につけたりして、普段の生活を送るだけです。
すると、これらの機械は、がんの治療を受けている人の体や気持ちの変化を自動的に記録してくれます。
そして、その記録は、インターネットを使って、医師や看護師のところに送られます。
医師や看護師は、インターネットで送られてきた記録を見て、がんの治療を受けている人の体や気持ちの変化を分析し、がんの治療を受けている人にアドバイスしたり、治療やケアを変えたりすることができます。
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腫瘍学研究におけるスマートフォンセンサー
スマートフォンには、動きや場所、光や音などを感じるセンサーがたくさん入っています。
これらのセンサーは、がんの患者さんの体や心の状態を知るのに役立つかもしれません。
そこで、がん患者さんにスマートフォンを持ってもらって、センサーのデータを集め、患者さんが自分で答えた症状や生活の質、医師が調べた体の状態や治療の結果などを比べてみました。
すると、センサーのデータと、患者さんの症状や生活の質、体の状態や治療の結果には、関係があることがわかりました。
例えば、歩く時間が少なかったり、家にいる時間が多かったりすると、症状がひどくなったり、入院したり、亡くなったりするリスクが高くなったりしました。
これは、医師や看護師が、患者さんの状態を遠くから見守ったり、早く対応したりするのに役立つかもしれません。
また、患者さんや家族も、自分の状態を知ったり、生活を改善したりするのに役立つかもしれません。
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今までの研究
これまでに行われた研究の概要がまとめられています。
まず、対象についてですが、これらの研究では、がんの患者さんやがんのリスクがある人々が対象となっています。
これらの人々は、自分のスマートフォンやウェアラブルデバイスを使って、日々の生活の中でさまざまなデータを集めています。
例えば、歩いた距離や時間、心拍数、睡眠の質などです。
- 研究の目的: がん患者の予後や生活の質に影響する要因をモバイルセンサーデータで評価すること
- 研究のデザイン: 前向き観察研究や無作為化比較試験などの研究デザインを採用した研究
- 研究の対象: 乳がんや前立腺がんなどの様々ながん種の患者
- 研究の期間: 2014年から2020年までに発表された研究
- 研究の結果: モバイルセンサーデータは、がん患者の身体機能や症状、心理的状態、治療応答、生存率などの臨床的転帰と関連していることが示された研究が多かった
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課題と実際的な検討事項
がんの治療を受ける人の体や気持ちの変化を、スマホや時計などの機械で測って、治療の効果や安全性を調べる方法があります。
これを「モバイルセンシング」と呼びます。
モバイルセンシングのメリットは、以下のようなものがあります。
- 自分の体の状態を知ることができる。スマホや時計などの機械は、歩数や心拍数、睡眠時間など、いろいろなデータを測ってくれます。これらのデータは、自分の体の状態や健康度を知るのに役立ちます。例えば、歩数が少なくなったり、心拍数が高くなったりすると、疲れやすくなったり、体調が悪くなったりする可能性があります。そうしたら、医師に相談したり、休息したり、運動したりする必要があるかもしれません。
- 医師と連絡がとれる。スマホや時計などの機械は、測ったデータをインターネットで医師に送ることができます。医師は、そのデータを見て、治療の効果や副作用を判断できます。もし、データに異常があったら、医師から連絡が来たり、アドバイスがもらえたりするかもしれません。また、自分でデータを見て、医師に質問したり、相談したりすることもできます。
- 治療に役立つ情報を得ることができる。スマホや時計などの機械は、測ったデータを分析して、治療に役立つ情報を教えてくれることがあります。例えば、どんな運動や食事が体に良いか、どんな薬や放射線の量が効果的か、どんな生活習慣が健康に良いかなどです。これらの情報は、自分の治療に合わせて、個人に合ったものになります。自分に合った情報をもらうことで、治療の効果を高めたり、副作用を減らしたりすることができるかもしれません。
一方で、モバイルセンシングには、以下のような問題や難しさもあります。
- データの量が多すぎる。スマホや時計などの機械は、毎日、たくさんのデータを測ります。そのデータを全部見るのは大変ですし、どのデータが大切かわかりにくいです。そこで、データを整理したり、分析したりするために、コンピュータや数学の知識が必要です。しかし、コンピュータや数学は、難しいことが多く、誤りや間違いがあるかもしれません。また、データの意味や使い方を、医師や患者にわかりやすく説明するのも難しいです。
- データの取り方や使い方に問題がある。スマホや時計などの機械は、正しく使わないと、正しいデータが取れません。例えば、機械をつけ忘れたり、充電しなかったり、故障したりすると、データが取れなかったり、間違ったりします。また、機械の種類やメーカーによって、データの取り方や計算方法が違うかもしれません。そのため、データを比べたり、まとめたりするのが難しいです。さらに、データを医師に送ったり、見たりするためには、インターネットや電話などの通信機器が必要ですが、それらが使えない場所や状況もあります。
- データの扱いに注意が必要。スマホや時計などの機械は、個人の体や生活に関するデータを測ります。そのデータは、自分や医師にとって大切な情報ですが、他の人に知られたり、悪用されたりすると、困ったり、迷惑したりするかもしれません。そこで、データを送ったり、保存したりするときには、プライバシーやセキュリティに気をつける必要があります。また、データを使ったり、分析したりするときには、倫理や法律に従う必要があります。
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腫瘍患者をモニタリングするためのモバイル センシング フレームワーク
Low CA. Harnessing consumer smartphone and wearable sensors for clinical cancer research. NPJ Digit Med. 2020 Oct 27;3:140. doi: 10.1038/s41746-020-00351-x.
がん患者のモバイルセンシングフレームワークについて図1で示しています。
このフレームワークの詳細は以下のとおりです。
- 患者は、スマートフォンやウェアラブルセンサーなどのデバイスを使って、自分の行動や健康状態に関するパッシブセンサーデータを提供します。
- このデータは、患者が報告するアウトカム(例:痛みや生活の質)や電子カルテ(例:再入院や合併症)などの他のデータと組み合わせて、臨床的なリスク予測モデルを生成するために使用されます。
- これらのモデルは、臨床者や患者にアラートを送ることで、患者の健康状態の悪化を予測したり、個別化された介入を提供したりすることができます。
- 介入の例としては、身体活動や症状管理などの行動変容の推奨や支援があります。
- このフレームワークは、がん患者の日常生活におけるがんやその治療の影響をより深く理解し、患者によりタイムリーでパーソナライズされたサポートを提供し、臨床的なアウトカムを改善する可能性があります。
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まとめ
スマホやウェアラブルデバイスは、がんの治療にとても役立つ機械です。
これらの機械を使うことで、がんの治療を受けている人は、自分の体の状態を常に知ることができます。
そして、医師や看護師と連携して、がんの治療をより安全に、より効果的に受けることができます。
これは、がんの治療を受けている人の生活の質を高めることにつながります。
スマホやウェアラブルデバイスを、がんの治療にともに積極的に活用しましょう!!
コチラでは、コロナ禍でのがんサバイバーのウェアラブルデバイスの使用状況はどう変化したのかをまとめています。
参考にしてください。
・歩数や心拍数などのデータは、がん患者の疲れや痛みなどの症状や、生活の質や体力などと関係があった。
・スマホやウェアラブルデバイスで測ったデータを使って、がん患者に適切な運動や生活習慣のアドバイスをしたり、がん患者の気分や不安を和らげるようなメッセージを送ることにかつようできるかもしれない。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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