がんのむくみ、リンパ浮腫が出たときの治療方法は？複合的治療について解説

前回はリンパ浮腫の発症をチェックする方法について説明しました。

予防が大事！！リンパ浮腫の発症に気付く3つの方法？？

2023年6月8日

それでは、リンパ浮腫になってしまった場合にはどんな治療があるのでしょうか。

今回はリンパ浮腫の治療方法について解説します。

リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫に対する標準的な治療は複合的理学療法（複合的治療）といいます。

理学療法と記載されていますが、いわゆるリハビリテーションの理学療法とはちょっと異なります。

名称がややこしいですね・・・。

複合的理学療法は、①用手的リンパドレナージ，②圧迫療法，③圧迫下での運動療法，④スキンケア，⑤体重管理などのセルフケア指導から構成されています。

用手的リンパドレナージ

ドレナージとは「排液」という意味です。

以前はリンパマッサージとも言われていましたが、美容目的で行われているリンパマッサージと混合してしまうので名称が変わっています。

リンパ浮腫の治療では、リンパ液の流れを誘導して排液を促す、用手的リンパドレナージが用いられます。

リンパ浮腫外来などで、リンパ浮腫専門の医療者に行ってもらうのが望ましいですが、そんなに頻回に行ってもらうわけにもいかないので、

セルフドレナージを教わって、自分で適宜行うことが多いです。

圧迫療法

リンパ浮腫とは、毛細血管から水分が漏れ出ている状態です。

それを上から圧迫することで、血管から水分が漏れだすのを抑えることができます。

さらには、手足の圧を強くして、体幹に向けて徐々に圧を緩めることで、血液やリンパ液が、排液方向に流れやすくなります。

間違って、腕や太ももの圧が強く締め付けてしまうと、

流れが悪くなって、浮腫がひどくなることがあるので注意が必要です。

圧迫下での運動

ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれていることは知っている人も多いかもしれません。

ふくらはぎの筋肉を使ってポンプのように作用させることで、足の血流がよくなります。

最近は、座りっぱなしによる、エコノミークラス症候群の予防としても有名ですね。

そのように、運動で筋肉をポンプのように働かせることで、血液やリンパ液の流れが良くなります。

負担をかけないようにと指導されて、運動を控えてしまう人も多いですが、適度な運動は、リンパ浮腫にとって効果的です。

弾性包帯や弾性ストッキングなどで圧迫しながら運動することで、よりポンプ作用が強くなります。

せっかく運動するのであれば、圧迫しながら運動するとさらに効果的です。

スキンケア

スキンケアとは「清潔・保湿・保護」によって、皮膚のバリア機能を保ち、感染を予防することです。

リンパ浮腫患者さんの皮膚は乾燥しやすいので、しっかりと保湿することが重要です。

また、リンパ浮腫患者さんは免疫が落ちて、感染するリスクが高くなっているので、日々の観察が大事です。

リンパ浮腫発症のチェックの一つとして紹介したスキンチェックもこれに当たります。

予防が大事！！リンパ浮腫の発症に気付く3つの方法？？

2023年6月8日

むくみの程度の確認だけでなく、傷や赤みをチェックすることで感染予防や早期発見につながります。

セルフケア指導

リンパ浮腫患者さんは、日常生活で注意しなければならない点がいくつかありますので、

それを指導してもらい、自分でセルフケアすることが大事です。

肥満はリンパ浮腫増悪の危険因子ですので、体重管理は最も重要になってきます。

それ以外にも、先ほどの「感染予防」や「適度な運動」など、ご自分で管理できるようになりましょう。

手術療法

複合的理学療法には含まれませんが、リンパ浮腫に対して手術を行うこともあります。

手術には、リンパ管と静脈をつなぐリンパ管吻合術が、しばしば行われます。

それ以外にもリンパ節を移植する血管柄リンパ節移植術、浮腫が生じている個所の脂肪を吸引する脂肪吸引術などもあるようです。

薬物療法

こちらも複合的理学療法には含まれませんが、リンパ浮腫に対してお薬を使用することもあります。

利尿剤を使って、尿として余分な水分を排出して、リンパ浮腫を改善させようとすることが多いですね。

ただし、リンパ液は水分だけでなく蛋白が多いので、利尿剤では手足のリンパ液だけを排出するのは難しいです。

よって、基本的にリンパ浮腫に対して利尿剤は使用されません。