痛みを軽減する方法：オンラインの痛み管理プログラムの効果について

今回は、慢性の痛みを軽減するためのオンライン治療プログラムについて、調べてみました。

慢性疾患に苦しむ方々は、日常生活においてさまざまな制限を受けることがあります。

その中でも、痛みや身体機能の低下は、生活の質を大きく低下させる原因となります。

そこで、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々の生活の質を改善する可能性があるオンラインプログラムについて、システマティックレビューとメタアナリシスを行った論文を紹介します。

以前もリンパ浮腫治療のオンラインプログラムを紹介していましたね。

痛みの管理方法について知りたいと思っていることや、オンラインプログラムの種類やその効果について詳しく調べられており、自分に合ったプログラムを選ぶ際の参考になると思います。

是非、この記事を、慢性痛治療の参考にしてください。

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々の生活の質を改善する可能性があるオンラインプログラムについて、システマティックレビューとメタアナリシスを行った内容になっています。

「Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023 」 2023年に発行された最新の論文になります。

調査対象と方法

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

この図は、研究の選択プロセスを示したものです。

3546件の文献がデータベース検索から特定されました。その後、他の方法から7件の文献が追加されました。

そして、最終的に18件の文献が選択されました。PRISMAフローチャートは、これら18件の文献を選択するまでに除外された理由を示しています。

例えば、「言語制限」、「重複したデータ」、「非定量的なデータ」などが除外理由として挙げられます。これらは、分析対象として不適切だったためです。

対象は、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々であり、オンラインプログラムを受講した人々が対象でした。

調査方法には、文献検索、データ抽出、品質評価が含まれています。

解析方法

この研究では、「メタアナリシス」という統計手法が使用されました。

メタアナリシスは、複数の研究から得られたデータを統合し、全体的な傾向や効果を分析する方法です。

具体的には、この研究では「ランダム効果モデル」という統計手法が使用されました。

ランダム効果モデルは、異なる研究間でのばらつきを考慮した上で、全体的な傾向や効果を分析することができます。

また、この研究では「GRADEアプローチ」という手法も使用されました。GRADEアプローチは、エビデンスの質を評価するために使用されます。この手法により、エビデンスの質が高いか低いかを判断し、信頼性の高い結論を導くことができます。

これらの手法により、より正確な結論を導くことができます。

結果

この研究では、18件の研究が分析されました。

その結果、オンラインプログラムは、痛みの強度や身体機能の改善に有効であることが示されました。

ただし、エビデンスの質は低かったため、今後より高品質な研究が必要であることも示唆されています。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

このグラフでは、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々の痛みの強度に対するオンラインプログラムの効果が示されています。

また、異なる条件下での効果を比較するために、サブグループ分析が行われています。

グラフからは、オンラインプログラムが痛みの強度に有効であることが示されており、多くの研究で痛みの強度が減少していることがわかります。

条件別のサブグループ分析では、線維筋痛症群では有意な改善が見られましたが (SMD -0.51、95% CI -0.82 ～ -0.20、p  = 0.001)、他の条件では改善されませんでした。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

こちらは慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々に対するオンラインプログラムの効果について、痛みが日常生活に与える影響（Pain interference）を評価したグラフです。

このグラフからは、オンラインプログラムと比較して通常の治療法が痛みの干渉を改善することが示されていますが、オンラインプログラムと通常治療法の間に統計的に有意な差は見られませんでした。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

こちらは慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々に対するオンラインプログラムの効果について、痛みのコーピング（Pain coping）を評価したグラフです。

このグラフからは、オンラインプログラムと比較して通常の治療法が痛みのコーピングを改善することが示されていますが、オンラインプログラムと通常治療法の間に統計的に有意な差は見られませんでした。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々に対するオンラインプログラムの効果について、痛みの破局的思考（Pain catastrophizing）を評価したグラフです。

オンラインプログラムと通常治療法の間に統計的に有意な差は見られませんでした。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

このグラフでは、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々の健康関連QOL（Health-related quality of life）に対するオンラインプログラムの効果が示されています。

また、異なる条件下での効果を比較するために、サブグループ分析が行われています。

グラフからは、オンラインプログラムが健康関連QOL（Health-related quality of life）に有効であることが示されており、多くの研究で健康関連QOL（Health-related quality of life）が改善していることがわかります。

条件別のサブグループ分析では、線維筋痛症群では有意な改善が見られました。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

このグラフでは、慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々のうつに対するオンラインプログラムの効果が示されています。

また、異なる条件下での効果を比較するために、サブグループ分析が行われています。

グラフからは、オンラインプログラムがうつに有効であることが示されており、多くの研究で健康関連うつ病スコアが改善していることがわかります。

条件別のサブグループ分析では、線維筋痛症群では有意な改善が見られました。

Chew MT, Chan C, Kobayashi S, Cheng HY, Wong TM, Nicholson LL. Online pain management programs for chronic, widespread musculoskeletal conditions: A systematic review with meta-analysis. Pain Pract. 2023

慢性的な筋骨格系の痛みを抱える人々に対するオンラインプログラムの効果について、不安を評価したグラフです。

オンラインプログラムと通常治療法の間に統計的に有意な差は見られませんでした。

まとめ

このシステマティック レビューの調査結果は、オンラインの疼痛管理が疼痛強度の軽減、健康関連の生活の質の改善、特に線維筋痛症患者のうつ病の軽減に効果的であることを示しています。

しかし、疼痛強度を軽減するという結果は、効果の大きさは小さく、バイアスが大きかったため解釈には注意が必要なようです。