前回は、乳がんサバイバーのレジスタンストレーニングはリンパ浮腫を悪化させないというシステマティックレビューを紹介しました。
複数の論文を吟味したものなので信用性は高いかなと思います。
だけど、システマティックレビューの結果というのは、表を見てもいまいちイメージつきにくいですよね。
今回はイメージしやすいように、ランダム化比較試験という2群に分けて検証する論文を紹介します。
簡単に言うと、運動する群としない群でその効果を検証しましょうといった感じですね。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、乳がん術後患者に対して中等度の運動プログラムがQOLや身体機能,リンパ浮腫発症におよぼす影響を調査した内容になっています。
「Anderson RT, Kimmick GG, McCoy TP, et al. A randomized trial of exercise on well-being and function following breast cancer surgery: the RESTORE trial. J Cancer Surviv. 2012 Jun;6(2):172-81.」
2012年に発行された論文です。
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調査内容
対象はステージI〜IIIの女性の乳がんと診断された104人の成人女性です。
参加者の基準は、(1)腋窩またはセンチネルリンパ節郭清を伴うTNMステージI〜III乳がんの診断がある、(2)乳がんの既往歴がない、(3)18歳以上、(4)毎週のセッションへ参加できる(5)適度な運動プログラムに参加できる、でした。
除外されたのは、運動に関してリスクがある方でした。車椅子を使用している方、認知症、末梢動脈疾患、不安定狭心症といった疾患が除外されています。
また、すでにリンパ浮腫の診断がついている場合も除外されました。
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介入方法
運動は週に2回実施されています。
5分間の有酸素ウォームアップ、30分間の中程度から高強度のウォーキング上半身と下半身の筋力トレーニングの20分、およびストレッチの10分を実施しています。
参加者は、低レベルで歩き始め、強度を上げて徐々に進むように指示されています。
運動の負荷は、最初の1〜2週間は50%の負荷から開始しています。
そして段階的に、上肢は500g~1.0kg、下肢は500g~2.5kg程度の負荷をアップしています。
その運動負荷で12回2セットの筋トレを実施しています。
最初の3か月間は集中フェーズとして、臨床研究センターで週2回の監視下での運動を実施しています。
4か月から6か月の間に、参加者は在宅運動に移行するオプションが与えられ、臨床研究センターでの運動は週1回に減らされました。
7か月から12か月の間は、在宅での自主練習に移行して、非監視下での運動となっています。
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結果
Anderson RT, Kimmick GG, McCoy TP, et al. A randomized trial of exercise on well-being and function following breast cancer surgery: the RESTORE trial. J Cancer Surviv. 2012 Jun;6(2):172-81
こちらの表は、6分間歩行(持久力)およびFACT-Bスコア(QOL)の変化を表しています。
運動群の参加者は、通常のケアと比較して、18か月で6分間の歩行の合計距離が有意に高いという結果になっております。
グループごとに歩いた調整平均距離は、それぞれ593.2 mと558.9 mでした。
QOLには有意差はありませんでした。
さらに、上肢の体積の18か月での変化の調査しています。
上腕体積の変化量はコントロール群の対60.4mlに対して、運動群は33.5mlでした。有意に減少したとまでは言えませんでしたが、少なくとも悪化はしていないようです。
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結論
手術から4〜12週間以内に開始された運動は、リンパ浮腫のリスクを高めることなく身体機能を改善できることを示しました。
1時間程度の運動を週2回実施しても、リンパ浮腫の悪化とは関係ないようですね。
システマティックレビューのような複数の論文を吟味したものは大変参考になりますが、1つの論文を読む方が運動内容が具体的にわかりますね。
ひとつひとつの論文の対象や介入方法を確認しておいた方がいいということです。
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・ウォーミングアップ、ショーキング、筋トレ、ストレッチを合計60分間、週2回、12か月間実施した。
・運動後18ヶ月で持久力が改善、リンパ浮腫の増悪は認めなかった。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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