看護師ががん患者にプレハビリテーションを助言する障壁と促進因子とは

     

がん患者の手術前のリハビリは効果があることは、以前紹介しました。

    

大腸がんの手術前のリハビリは持久力改善や合併症予防に効果がある

2022年5月22日

          

プレハビリテーションとは、がん治療に備えて、食事や運動、心の健康などを改善することで、治療の効果や体調の回復を高める取り組みのことです。

         

           

この論文では、がん看護師やがん専門看護師が、がん患者さんにプレハビリテーションのアドバイスをする際に、どのような知識や態度、信念を持っているか、そしてどのような障害や促進要因があるかを調査しています。

          

           

がんは、多くの場合、複数の治療法を組み合わせて行われますが、それぞれに副作用や困難が伴います。

             

プレハビリテーションは、もともと手術前の準備として考えられていましたが、他のがん治療にも適用できると考えられています。

                 

プレハビリテーションは、多職種のチームで行われるべきですが、その中でも看護師の役割は重要です。

                    

看護師は、がん患者さんとの信頼関係をもとに、プレハビリテーションのアドバイスや紹介を行い、患者さんのニーズや状態を定期的に評価し、適切なケアを提供することができます。

                 

看護師は、患者さんに個別化された、人間中心のケアを提供することで、患者さんが自分の病気や治療に積極的に関わることを支援することができます。

            

            

しかし、これまでの研究では、プレハビリテーションに関する知識や実践が不十分であることが示されています。

             

プレハビリテーションの意義や実施方法についての認識が低いことや、ガイドラインや紹介プロセスが不明確であることが、障害となっていることが報告されています。

             

また、時間や知識の不足や、自分の役割として認められていないことなども、プレハビリテーションのアドバイスを行うことを妨げていることが指摘されています。

                 

そこで、この論文では、がん看護師やがん専門看護師が、現在の実践でプレハビリテーションのアドバイスをどのように行っているか、そしてどのような要因がそれに影響しているかを調査しています。

      

                       

       

     

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今回紹介する論文の概要

    

   

今回紹介する論文は、がん看護師やがん専門看護師が、現在の実践でプレハビリテーションのアドバイスをどのように行っているか、そしてどのような要因がそれに影響しているかを調査した内容となっています。

 

   

「Renouf T, et al. Barriers and facilitators to giving prehabilitation advice by clinical nurse specialists and advanced nurse practitioners in oncology patients. Support Care Cancer. 2024 Feb 15;32(3):158. doi: 10.1007/s00520-023-08273-6.  」。

2024年の論文になります。

    

    

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対象と方法 

   

この論文の目的は、がん看護師やがん専門看護師が、がん患者さんに健康的な食事や運動、禁煙や飲酒の減量などのアドバイスをする際に、どのような障壁や促進要因があるかを探ることです。

これらのアドバイスは、がん治療の前に行うと、治療の効果を高めたり、副作用を軽減したりすることが期待されます。これを「プレハビリテーション」と呼びます。

この論文の方法は、インターネット上でアンケート調査を行うことです。

イギリスでがん患者さんを担当しているがん看護師やがん専門看護師に、プレハビリテーションに関する知識や態度、行動などについて、23の質問に答えてもらいました。

質問は、過去の研究や文献を参考にして作られました。アンケートは3か月間(2022年3月から6月)にわたって実施され、415人の回答が得られました。

アンケートの結果を分析するために、統計的な手法を使いました。

具体的には、回答者の特徴やアドバイスの内容、信頼度、障壁などについて、数字や割合で表しました。

また、回答者の信頼度とアドバイスの内容や障壁の関係について、カイ二乗検定という方法で調べました。

カイ二乗検定とは、二つの変数の間に関連があるかどうかを判断する方法です。

このようにして、この論文では、がん看護師やがん専門看護師が、がん患者さんにプレハビリテーションのアドバイスをする際に、どのような状況や課題があるかを明らかにしました。

                 

       

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結果

Renouf T, et al. Barriers and facilitators to giving prehabilitation advice by clinical nurse specialists and advanced nurse practitioners in oncology patients. Support Care Cancer. 2024 Feb 15;32(3):158. doi: 10.1007/s00520-023-08273-6. 

 

Table 1 は、この研究に参加した415人の臨床看護師(CNS)と上級看護師(ANP)の特徴を示しています。以下にその内容をわかりやすく説明します。

  • 地域別では、イングランドで働く看護師が91%と最も多く、次いでウェールズ(3.6%)、スコットランド(3.4%)、北アイルランド(1.2%)と続きます。回答しないとした看護師は0.8%です。

  • がん患者のタイプ別では、複数のタイプの患者と関わる看護師が43.4%と最も多く、次いで医学的腫瘍学(25.5%)、外科(23.1%)、複数の腫瘍タイプ(19.8%)、肺(12.5%)と続きます。回答しないとした看護師は1.7%です。

  • 現在の役割に就いている期間別では、11年以上の看護師が29.6%と最も多く、次いで2~5年(32.3%)、6~10年(22.4%)、1年未満(15.2%)と続きます。回答しないとした看護師は0.5%です。

  • がんに関する資格別では、がんに関する資格を持たない看護師が43.1%と最も多く、次いでがんに関する学位(19.3%)、がんに関する修士(13%)、がんに関する専門学位(12.5%)と続きます。回答しないとした看護師は12%です。

  • 臨床実践の主な分野別では、外来で働く看護師が84.1%と最も多く、次いで入院(11.8%)、地域(3.1%)と続きます。回答しないとした看護師は1%です。

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Renouf T, et al. Barriers and facilitators to giving prehabilitation advice by clinical nurse specialists and advanced nurse practitioners in oncology patients. Support Care Cancer. 2024 Feb 15;32(3):158. doi: 10.1007/s00520-023-08273-6. 

      

       

この表は、健康的な食生活に関する信頼できるガイダンスを受けているかどうかと、そのようなアドバイスを与えることに対する自信の度合いとの関係を示しています。以下にその内容を説明します。

  • 表の行は、信頼できるガイダンスを受けているかどうかの4つの選択肢(はい、いいえ、わからない、該当なし)を表しています。

  • 表の列は、健康的な食生活に関するアドバイスを与えることに対する自信の度合いの5つの選択肢(非常に自信がある、自信がある、やや自信がある、自信がない、該当なし)を表しています。

  • 表の各セルは、その行と列の組み合わせに該当する回答者の数を表しています。例えば、左上のセルは、信頼できるガイダンスを受けていると回答した人のうち、非常に自信があると回答した人が34人いることを示しています。

  • 表の下部には、カイ二乗検定の結果が示されています。これは、信頼できるガイダンスの有無と自信の度合いとの間に統計的に有意な関係があるかどうかを判断するための検定です。p値が0.001より小さいことから、この関係は有意であると言えます。つまり、信頼できるガイダンスを受けているかどうかは、健康的な食生活に関するアドバイスを与えることに対する自信に影響を与える要因であると考えられます。

  • 表から読み取れる傾向としては、信頼できるガイダンスを受けている人ほど、自信があると回答する人の割合が高くなっていることがわかります。例えば、信頼できるガイダンスを受けている人のうち、非常に自信があるか自信があると回答した人は72%(139人)ですが、信頼できるガイダンスを受けていない人のうち、非常に自信があるか自信があると回答した人は55%(65人)にとどまっています。これは、信頼できるガイダンスがあれば、健康的な食生活に関するアドバイスを与えることに対する自信が高まることを示唆しています。

      

      

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Renouf T, et al. Barriers and facilitators to giving prehabilitation advice by clinical nurse specialists and advanced nurse practitioners in oncology patients. Support Care Cancer. 2024 Feb 15;32(3):158. doi: 10.1007/s00520-023-08273-6. 

 

Table 3は、アルコールに関するアドバイスを与える自信と、専門の医療従事者に紹介する頻度との関係を示しています。この表から以下のことが分かります。

  • アルコールに関するアドバイスを与える自信が高いほど、専門の医療従事者に紹介する頻度も高くなります。例えば、自信が「非常に高い」と答えた人のうち、常に紹介すると答えた人は**36%ですが、自信が「低い」と答えた人のうち、常に紹介すると答えた人は0%**です。

  • 逆に、アルコールに関するアドバイスを与える自信が低いほど、専門の医療従事者に紹介しない頻度も高くなります。例えば、自信が「低い」と答えた人のうち、決して紹介しないと答えた人は**35%ですが、自信が「非常に高い」と答えた人のうち、決して紹介しないと答えた人は2%**です。

  • この関係は統計的に有意であり(p値<0.001)、アルコールに関するアドバイスを与える自信と専門の医療従事者への紹介との間には強い相関があることを示しています。つまり、自信が高い人は患者のニーズに応じて他の専門家に紹介することができる一方、自信が低い人は紹介することに消極的になる可能性があると考えられます。

       

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Renouf T, et al. Barriers and facilitators to giving prehabilitation advice by clinical nurse specialists and advanced nurse practitioners in oncology patients. Support Care Cancer. 2024 Feb 15;32(3):158. doi: 10.1007/s00520-023-08273-6. 

 

この表は、信頼できるガイダンスを受けた看護師が、他の医療専門家に患者を紹介する可能性が高いことを示しています。

例えば、身体活動のアドバイスについてガイダンスを受けた看護師の73%が、他の医療専門家に患者を紹介していますが、ガイダンスを受けていない看護師の59%しか紹介していません。

つまり、ガイダンスの有無が紹介の頻度に影響していると考えられます。この表は、身体活動のアドバイスに限らず、他のプレハビリテーションの要素についても同様の傾向が見られることを示しています

                     

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考察

                                      

この論文の主な発見は、プレハビリテーションのアドバイスに関するガイダンスや資料の不足と、看護師の自信や紹介の頻度との関係です。

            

ガイダンスや資料が提供されている看護師は、プレハビリテーションのアドバイスを与える自信が高く、他の専門家に紹介することも多いことがわかりました。

        

逆に、ガイダンスや資料が不足している看護師は、自信が低く、紹介することも少ないことがわかりました。

         

つまり、看護師がプレハビリテーションのアドバイスを効果的に行うためには、教育や情報提供が必要であることが示唆されました。

         

これは、他の研究でも指摘されている課題です。

          

               

次に、プレハビリテーションのアドバイスを行う際の障壁についてですが、この論文では、時間の制約、患者さんの関心や関与の低さ、患者さんへの影響の自信の低さ、患者さんの負担や圧倒感、個別化の必要性、コミュニケーションの困難さ、スタッフの協力の欠如などが挙げられました。

                  

これらの障壁は、プレハビリテーションのアドバイスを行うことの重要性や効果に対する看護師の認識や態度に影響を与える可能性があります。

              

また、これらの障壁は、患者さんのニーズや状況に応じて、プレハビリテーションのアドバイスを適切に提供することを妨げる可能性があります。

             

したがって、これらの障壁を克服するためには、がん治療の過程にプレハビリテーションのアドバイスを組み込むことや、他の医療従事者との連携を強化することが必要です。

           

            

最後に、この論文の限界についてですが、この論文では、イギリスで働く臨床看護師や高度看護師に限定してアンケート調査を行っているため、他の国や地域の状況とは異なる可能性があります。

          

また、専門のがん病院で働く看護師が多く回答しているため、一般の病院で働く看護師の意見が十分に反映されていない可能性があります。

             

さらに、アンケートの質問や回答の選択肢は、既存の研究や文献に基づいて作成されているため、プレハビリテーションのアドバイスに関する看護師の知識や態度、行動に影響を与える他の要因が見逃されている可能性があります。

          

            

プレハビリテーションのアドバイスは、がん患者さんの健康と満足度を高めるために有効な取り組みですが、その実施にはさまざまな課題があります。

          

看護師は、プレハビリテーションのアドバイスを行うことの重要性や効果を理解し、患者さんのニーズや状況に応じて、個別化されたアドバイスや紹介を提供できるようになることが望まれます。

          

そのためには、教育や情報提供、ガイダンスや資料の整備、他の医療従事者との連携などが必要です。

         

この論文は、プレハビリテーションのアドバイスに関する看護師の現状や課題を明らかにすることで、今後の研究や実践に貢献すると考えられます。

                    

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活動量を向上させるための障壁や促進因子についてはコチラにを参考にしてみてください。

がん患者の活動量を阻害・向上させる要因は?

2022年5月5日

    

まとめ
・プレハビリテーションのアドバイスを行う看護師に対する調査研究。

・オンラインアンケートで415人の回答を分析した。

・アドバイスの実施率は89%であり、ガイダンスやリソースの不足が主な障害となることが判明した。

・ガイダンスやリソースの提供があれば、看護師の自信や患者への紹介が増えることが示唆される。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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