がんの症状に対してマッサージは効果があるのか?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するマッサージの効果について記載している内容を紹介します。

前回はがんの症状に対する健康食品の効果について記載している内容を紹介しました。

がんの症状に対して健康食品は効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年7月24日

体重減少や悪液質、QOL、予後などに効果的な可能性がある食品はあるようですが、あまり強くは言えないような結果でしたね。

過剰摂取にならない程度に試してみるのはいいかもしれません。

 

健康に気を使っている方は定期的にマッサージに行ったりもしてますね。

確かに痛みに対してマッサージって効果がありそうな気もしますが、心配で行っていいかわからないと言われる患者さんも多いです。

 

そこで、今回は、がんの症状に対してマッサージの効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するマッサージの効果について記載している内容を紹介。

・マッサージは、痛みや悪心・嘔吐、倦怠感の改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・マッサージは、不安・抑うつの改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・マッサージは、QOLの改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・明らかな有害事象も認められていないので、効果があるのであれば、マッサージを補助的に活用するのはいいと思われる。

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マッサージの概要

マッサージとは,主に手を用いて身体表面に「さする」「もむ」「圧する」などの物理的刺激を与え,生体の変調を整える方法を指します。

マッサージの作用機序としては,主に,①疼痛軽減のゲートコントロール理論,②副交感神経の活動の増加,③セロトニンとエンドルフィンの増加,④血流量の増加,⑤リンパ循環の改善,⑥信頼関係の構築,などが挙げられます。

 

しかし、一方で以下のようなマッサージの注意点も記載されています。

 

  • 通常のがん治療の代用として使用すべきでない。
  • 熟練したセラピストが行えば,安全で最大の効果が得られる。
  • 凝固障害,転移性骨腫瘍の場合は,軽い圧力(やさしくなでるなど)で行う。
  • 炎症部位,出血傾向,開放創,放射線皮膚炎の場合は,その部位への直接的なマッサー ジを避ける。

 

マッサージを活用する場合には注意するようにしておきましょう。

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身体症状に対する効果

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

24編のシステマティックレビューをスクリーニングして、最終的に4編のレビューから検討しています。

痛み

痛みに対しては、マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 は1 日~8 週間で,マッサージ介入群は対照群と比較し て,痛みの軽減に有効であったという報告があります。

また、乳がん患者を対 象としたリフレクソロジーの介入効果(介入時間は1 回20~60 分,期間は1 回~ 8 週間)として,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,痛 みの軽減に有効であったいう報告もあります。

他にも、乳がん患者を対象に,マッサージの介入効果(介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間)として,マッサージ介入群は対照群 と比較して,1 件のみ痛みの軽減に有効であったが,他の1 件は有効でなかったと報告されています。

よって,マッサージは,がん患者の痛みの軽減に有用かもしれないが,研究 の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

消化器症状

消化器症状に対しては、1 回10~30 分,1 日~8 週間のマッサージの介入効果として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,悪心の軽減に有効であったと報告されています。

乳がん患者を対 象としたリフレクソロジーの介入効果(介入時間は1 回20~60 分,期間は 1 日~8 週間)として,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,悪 心・嘔吐の軽減に有効であったと報告されています。

よって,マッサージは,がん患者の悪心・嘔吐の軽減に有用かもしれないが, 研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

呼吸器症状・泌尿器症状・睡眠障害

呼吸器症状、泌尿器症状に対しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

倦怠感

倦怠感に対しては、1 回10~30 分,1 日~8 週間のマッサージの介入効果として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,倦怠感の軽減に有効であったと報告されています。

乳がん患者を対 象としたマッサージの介入効果(介入時間は1 回20~90 分,期間は 1回~6ヶ月)として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,倦怠感の軽減に有効であったと報告されています。

よって,マッサージは,がん患者の倦怠感の軽減に有用かもしれないが, 研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

マッサージは痛みや悪心・嘔吐、倦怠感の改善に有効な可能性はあるようですね。

特に痛みに関しては、がん性疼痛だけでなく、筋肉のこわばりなどで痛みが出る場合も多いですので、そのような痛みに対しては効果が期待できそうですね。

がんの症状に対して健康食品は効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年7月24日
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マッサージの精神症状に対する効果

不安・抑うつ

不安・抑うつに対しては、マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 は1 日~8 週間で,マッサージ介入群は対照群と比較し て,不安・抑うつの軽減に有効であったという報告があります。

他にも、乳がん患者を対象に,マッサージの介入効果(介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間)として,マッサージ介入群は対照群 と比較して,不安と抑うつに有効であった論文が認められたと報告されています。

一方で、乳がん患者を対 象としたマッサージの介入効果(介入時間は1 回20~90 分,期間は 1回~6ヶ月)として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,不安と抑うつの軽減に有効でなかったとの報告もあります。

よって,マッサージは,がん患者の不安や抑うつの軽減に有用かもしれないが, 研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

ストレス・怒り

ストレス・怒りに対しては、マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 は1 日~8 週間で,マッサージ介入群は対照群と比較し て,ストレスの軽減に有効であったという報告があります。

一方で、乳がん患者を対 象としたマッサージの介入効果(介入時間は1 回20~90 分,期間は 1回~6ヶ月)として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,怒りの軽減に有効でなかったとの報告もあります。

よって,マッサージは,がん患者のストレスの軽減に有用であり,怒りには有用でないかもしれないが、 研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

マッサージは痛みや不安・抑うつやストレスの改善に有効な可能性はあるようですね。

マッサージはやはり気持ちいいことが一番のポイントでしょうから、精神面にはいい効果がありそうな気はしますけどね。

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マッサージのQOLに対する効果

QOLに対しては、マッサージの介入時間は1 回10~30 分,期間 は1 日~8 週間で,マッサージ介入群は対照群と比較し て,QOLの改善に有効であったという報告があります。

また、乳がん患者を対 象としたリフレクソロジーの介入効果(介入時間は1 回20~60 分,期間は 1 日~8 週間)として,リフレクソロジー介入群は対照群と比較して,QOLの改善に有効であったという報告があります。

他にも、乳がん患者を対象に,マッサージの介入効果(介入時間は10~30 分,期間は3 日~5 週間)として,マッサージ介入群は対照群 と比較して,QOLの改善に1件は有効であり、1件は有効でなかったと報告されています。

一方で、乳がん患者を対 象としたマッサージの介入効果(介入時間は1 回20~90 分,期間は 1回~6ヶ月)として,マッサージ介入群は対照群と比較し て,QOLの改善に有効でなかったとの報告もあります。

よって,マッサージは,がん患者のQOLの改善に有用かもしれないが, 研究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

前述した身体症状や精神症状が改善されれば、QOLも改善しそうな印象ですが、強くは言えないという結果のようですね。

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マッサージの有害事象

有害事象に対して、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

著明な有害事象を認める報告はないので比較的安全な印象ですが、逆に安全であると結論付けている報告もないので、注意は必要ですね。

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治療等に伴う有害事象に対する効果

乳がん患者を対象としたマッサージ介入(介入時間は1 回20~90 分,期間は1 回~6 カ月)では,マッサージ介入群は対照群と比較して,上肢リンパ浮腫の改善に有効でなかったと報告されています。

よって,マッサージは,がん患者のリンパ浮腫の軽減に有用ではないかもしれないが,研 究の質に課題があるため,最終的な結論づけはできないとされています。

 

リンパ浮腫に対する治療の一つとして、リンパドレナージ(リンパマッサージ)も含まれますが、なかなか効果が認められる論文が少ないという現状のようですね。

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マッサージの予後に対する効果

予後に対して、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

マッサージは基本的にはリラクゼーション目的の印象ですので、一時的に身体症状や精神症状が改善したとしても、予後の改善までは難しいのかもしれないですね。

 

マッサージの効果があるとも、有害事象がないとも言い切れない結果となっていますが、比較的有害事象がない治療になりますので、個人的には行って気持ちいい感じがあって、主観的な効果が認められるのであれば活用してもいいと思います。

ただし、マッサージに頼りきりになって依存的になってしまうと、自分で運動を行って改善しようとする気持ちが低下してしまいますので、あくまで補助的に活用するように意識したほうがいいと思います。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するマッサージの効果について記載している内容を紹介。

・マッサージは、痛みや悪心・嘔吐、倦怠感の改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・マッサージは、不安・抑うつの改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・マッサージは、QOLの改善に有効な可能性はあるが、その有用性は最終的には結論付けられない。

・明らかな有害事象も認められていないので、効果があるのであれば、マッサージを補助的に活用するのはいいと思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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