自覚的運動強度は筋トレの運動強度評価にも使用できる

以前の記事で、筋トレの運動強度の評価方法について紹介しました。

運動強度の評価方法~筋トレ編~、がんサバイバーも知っておこう!

2021年4月8日

筋トレの運動強度も1RMをきちんと評価するのは難しそうですね・・・。

今回は、簡単に筋トレの運動強度を評価する方法を論文から紹介します。

まとめ
・重錘で測定した運動負荷と自覚的運動強度の関係性を検討した論文の紹介。

・1RMで測定した負荷量と自覚的運動強度はかなり一致していた。

・自覚的運動強度を「5」にすると、1RMの50%とかなり一致していた。

・今回の対象は要支援、要介護認定高齢者であるが、日常生活に少し支障を感じているがんサバイバーも、筋トレの運動負荷の目安の一つとして、自覚的運動強度を使ってみてもいいと思う。

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、介護保険の要支援・要介護に認定されている高齢者に対して、「OMNI-RES」という簡便的な運動負荷強度設定方法が、重錘負荷で測定した1RMの運動強度と関連しているかを検証している内容です。

「荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.」2015年に発行された論文です。

対象

対象は某通所リハビリテーションを利用している要支援2から要介護度2の高齢者16 名(年齢(平均 ± 標 準偏差):74.3 ± 7.1 歳,男性:7 名,女性:9 名)であ る.対象者の除外基準は,1)要介護度 3 以上の方, 2)本研究に対する説明を理解困難な認知症を有する方, 3)運動を中止するような疼痛の発生を有する方,4)急 速に進行中の進行性疾患や疾患の末期症状,急性疾患や 不安定な慢性疾患,6 ヵ月以内の心筋梗塞や下肢骨折, インシュリン依存性糖尿病等,重度な疾患を有す方,5) かかりつけ医から運動の制限を受けている方,6)対象 とする筋の筋力が Manual Muscle Testing で 3 未満の方,とした.対象とする筋は,下肢の代表筋であり,加齢に伴う筋萎縮(サルコペニア)が著しいとされる大腿四頭筋(膝関節伸展筋)とした.

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

対象は、要支援・要介護認定を受けており、通所リハビリテーションを利用している高齢者16名です。

要支援・要介護認定とは、日常生活に少し支障が出ているので、介護保険を使用して心身が弱らないようなサービスを受けたり、手すりや歩行器などの日常生活を支援してもらう道具を購入したり、ヘルパーさんのような日常生活を支援してもらうサービスを受けている方のことですね。

少し日常生活に支障が出てきて、送迎付きのリハビリに通っている高齢者というイメージでいいと思います。

要介護3以上の方が除外されています。要介護3というのは、「立ち上がりや歩行が自分では困難で、日常生活全般に全介助が必要。また認知症の症状があり、日常生活に影響がある状態」ですので、少なくとも手すりや杖を使って、自分で動ける方が対象のようです。

認知症や疼痛、著明な筋力低下で動けない方も除外されていますので、要介護3に認定されていなくても、動くのが困難な方は除外しているということですね。

方法

検証1.OMNI-RES の再現性と負荷質量との関係性

重錘バンド(カラー重錘バ ンド;酒井医療社製)を負荷し,最大挙上点までの膝関 節伸展運動を実施させ,最大挙上点で 3 秒間保持が可能 であった場合を成功とした 11) .重錘バンドの負荷質量 を 0.5 kg 単位で変化させ,最大挙上点で 3 秒間保持が 可能な最大質量を 1RM として採用した.また,このよ うに重錘バンドの質量を変化させ,直接 1RM を測定す る方法を直接法と定義した.そして,1RM の質量を 100%とし,その相対値である 25%,50%,75% 1RM の 質 量 を 算 出 し た. 最 後 に,1RM の 25,50,75, 100%の負荷質量をランダムに与え,最大挙上点で 3 秒 間保持する膝関節伸展動作を実施させ,それぞれの負荷 を与えた際の OMNI-RES を聴取した.

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

まずは、重錘を使用して測定した1RMと自覚的運動強度の関係性について調査しています。

1RMは、座った状態で足首に重錘という重りを巻いて、3秒間膝を伸ばせたらクリア!、という検査を行っています。

少しずつ重錘を重くしていき、3秒保持できなかった重錘の1つ前の重さが、その方の1RMという検査ですね。

自覚的運動強度には下図の「OMNI-RES」という評価を行っています。

Robertson RJ, FL Goss, J Rutkowski, et al.: Concurrent validation of the OMNI perceived exertion scale for resistance exercise. Med Sci Sports Exerc, 2002, 35(2): 333-341

0 の「extremely easy」は「非常に楽である」,2 の「easy」 は「楽である」,4 の「somewhat easy」は「やや楽であ る」,6 の「somewhat hard」は「ややきつい」,8 の「hard」 は「きつい」,10 の「extremely hard」は「非常にきつい」 との日本語訳を当てはめた.

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

よく使用する「0-10」で点数化する検査ですね。筋トレバージョンに作成されたもののようですね。正直、私は初めて見ました(笑)。とりあえず、「0-10」で確認すればいいと思います。

そして、1RMの25%、50%、75%、100%の重錘をランダムに装着して運動してもらい、自覚的運動強度を確認ストという研究です。

1RMが12kgであれば、25%=3kg、50%=6kg、75%=9kg、100%=12kgの重錘をつけて、「どれくらいきついですか~」って確認する感じですね。

検証 2.OMNI-RES を用いた簡便的な運動負荷強度設定方法の信頼性と妥当性

無負荷の状態から 0.25 kg ずつ 重錘バンドの負荷を増加させ,各負荷質量における OMNI-RES を聴取した.そして,検証 1 で求めた 50%1RM を与えた際の OMNI-RES の中央値を示す質量まで 負荷を増加させ,50% 1RM の推定を行った。

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

先ほどは、1RMを基準に重錘を調整して、その重錘負荷に対して自覚的運動強度がどのような関係かを調査していましたが、次の検証は反対に、自覚的運動強度で1RMの50%の負荷が予測できるかという調査になります。

1RMの50%で感じた自覚的運動強度の中央値を計算して、その自覚的運動強度を感じる負荷で運動すると、誰でも1RMの50%くらいになるのかといった内容ですね。

結果

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

こちらが検証1の結果になります。

表の見方は、上の25%、50%、75%、100%というのが、負荷量を表しています。その下の1st、2ndというのは、測定の1回目、2回目という意味です。

その下の数値は真ん中くらいにある中央値に注目してください。

中央値というのは、その母集団の中でちょうど真ん中の結果だった人の数値ということです。

今回は16人の対象者なので、8-9番目の数値の方を中央値とするわけです。

数値を見ていくと、自覚的運動強度が1RM25%で「2」、1RM50%で「5」、1RM75%で「7」、1RM100%で「10」となっています。

統計の結果は、重み付きκ係数に注目してください。ちなみに、κは「カッパ」と読みます。

重み付きκ係数の意味としては、完全に評価が一致している場合を 1、最も評価が隔たっている場合を 0ということになります。つまり、重み付きκ係数が1に近づくほど、1RMで測定した負荷量と自覚的運動強度が一致しているということです。

具体的には、は≦ 0.40:poor,0.41-0.74:fair to good, 0.75-1.00:excellentと記載されています。相関係数と同じような感じですね。

今回の結果では、重み付きκ係数が0.7~0.9になっているので、1RMで測定した負荷量と自覚的運動強度はかなり一致しているということになります。

OMNI-RES を用いた簡便的な運動負荷強度設定方法 (OMNI 法)の信頼性と妥当性の検証では,検証 1 より 50% 1RM の OMNI-RES の中央値が 5 であったため, OMNI-RES が 5 となるまで重錘バンドの負荷を 0.25 kg ずつ増加させた.また,OMNI-RES が 5 となる質量が複数あった場合は,平均値を採用した.そして,直接法 での 50% 1RM と OMNI 法での 50% 1RM の一致率は, 検者 A では 0.85,検者 B では 0.76 という結果が得られ た.そして,検者 A と検者 B の検者間信頼性は 0.95 で あった.

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

こちらが検証2の結果になります。

1RMの50%負荷の自覚的運動強度の中央値は「5」となっていますので、少しずつ重錘の負荷を重くしながら「5」に感じた時の重錘の重さがどれくらいの負荷になっているのかを確認しています。

具体的な重錘の重さの数値は記載されていませんが、2つの測定方法の一致率は0.85と0.76となっていますので、自覚的運動強度を「5」にすると、1RMの50%とかなり一致するという結果です。

結論

以上より,本研究で考案した OMNI 法は,適応する 対象を選定する必要があるものの要支援・軽度要介護高 齢者に対する運動負荷強度設定方法として有用な方法で あることが示唆された. 最後に,本研究における今後の課題としては,対象者 数を増加し,今回考案した運動負荷強度設定方法である OMNI 法がより精度の高い運動負荷強度設定方法であっ たかを検証する必要性が挙げられる.また,ベルトでの 固定箇所の減少,測定姿勢の変更等の工夫を行い,再度 OMNI 法の信頼性と妥当性の検証を行うことによって, より臨床場面において活用しやすい方法を確立すること ができると思われる.さらに,本研究は,膝関節伸展運 動のみを対象としていることから,他の筋群へ直接適応 することはできないと考えられる.そのため,今後は複 数の筋群に対して同様の検証行い,さらなる検討が必要 であるといえる.

荒井 友章, 杉浦 令人, 櫻井 宏明, 他. 要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案 . 理学療法科学. 2015: 30; 187-192.

要支援・要介護認定されているような、日常生活に少し支障を感じている高齢者に対しては、「0-10」の自覚的運動強度で運動強度を設定することが有用である可能性が認められました。

がんサバイバーも、病気や治療の影響などで、日常生活に少し支障を感じている方も多いですので、自覚的運動強度で運動強度を設定してもいいかもしれませんね。

自覚的運動強度を「5」くらいにすると、1RMの50%くらいになるようです。筋力増強を狙いたいのであれば、1RMの75%くらいを目標に、自覚的運動強度を「7」くらいで頑張ってもいいようですね。

有酸素運動で紹介したフェイススケールと同じような感じですね。

簡単な運動強度の評価は、フェイススケールがおすすめ

2021年4月4日

以前もいいましたが、低強度の運動の効果の報告もありますので、無理に強い負荷をかけようとしなくても大丈夫ですよ!!

この研究の限界としては、膝を伸ばす筋トレだけでの検証ですので、腕の筋トレやスクワットなど別の種類の筋トレにも同じことを言えるかはわからないことです。

検証はできていませんが、どんな筋トレでも自覚的運動強度を目安の一つとしてもらっていいとは思いますよ。

まとめ
・重錘で測定した運動負荷と自覚的運動強度の関係性を検討した論文の紹介。

・1RMで測定した負荷量と自覚的運動強度はかなり一致していた。

・自覚的運動強度を「5」にすると、1RMの50%とかなり一致していた。

・今回の対象は要支援、要介護認定高齢者であるが、日常生活に少し支障を感じているがんサバイバーも、筋トレの運動負荷の目安の一つとして、自覚的運動強度を使ってみてもいいと思う。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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