肺がんの手術前運動の効果~メタアナリシスでの検討~

以前、肺がん患者が手術前にリハビリテーションを行った方がいいという、がんのリハビリテーションガイドラインの内容について紹介させていただきました。

肺がん患者は手術前にリハビリを行った方がいい【ガイドライン解説】

2021年3月16日

さらに、ガイドラインで引用されていたメタアナリシスの論文も紹介しました。

肺がんの手術前リハビリテーションは入院期間を減少させる

2021年3月21日

今回も、肺がん患者の手術前運動トレーニングの効果に対して、メタアナリシスで検討している論文を紹介します。

まとめ
・肺がん患者の、術前運動トレーニングの効果を調査した論文の紹介。

・手術前に運動トレーニングを行うことで、呼吸機能の改善、術後在院日数の減少、術後合併症の減少が期待できる。

・「ややきつい」と感じる少し息が上がる程度の運動は手術前に行っておいた方がよいと思われる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、肺がん患者の手術前の運動トレーニングの効果について検討したメタアナリシスです。

「Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.」2016年に発行された論文です。

今回は、メタアナリシスといって、肺がん患者を対象として、手術前の運動トレーニング効果について研究した論文を集めて、その結果をまとめるという統計手法を用いています。

メタアナリシスという統計手法は、論文の中では最も質が高い根拠として位置づけられています。

ちなみに、ガイドラインでは、メタアナリシスも含めた多くの論文内容を吟味して、効果を検証しております。少しややこしいですね・・・。

対象と方法

CINAHL, EMBASE, MEDLINE, Pubmed, PEDro and SCOPUS was undertaken in September 2015 yielding a total of 1656 references. Two independent reviewers performed the assessment of the potentially eligible records against the inclusion criteria and finally, 21 articles were included in the review. Articles were included if they examined the effects of an exercise-based intervention on at least one of the selected outcomes: pulmonary function, (functional) exercise capacity, health-related quality of life (HRQoL) and postoperative outcomes (length of stay and postoperative complications). 

Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.

肺がんに対する肺切除術を行う予定の患者を対象とした論文を集めています。今回は非小細胞肺がん以外の肺がん患者を対象としている論文もわずかに含まれています。対象に肺がん患者以外のがんや肺疾患等も混在している論文も含まれています。手術方法は関係なく、開胸術も胸腔鏡(傷口が小さい手術)も集めているようです。

今回は、ランダム化比較試験といって、手術前に運動トレーニングを行う群と行わない群を作って、その2つを比較するという質の高い論文以外も解析しております。

運動トレーニングの内容は、「筋力トレーニング」か「持久力トレーニング」、またはその両方を組み合わせたものが必須条件で、呼吸筋トレーニングやストレッチなども追加されている論文も含まれております。

そして、以下の内容について運動トレーニング実施群と非実施群で比較検討しています。

  • 運動能力
  • 呼吸機能
  • HRQoL
  • 手術後の状況(入院期間、術後合併症)

今回はHRQoLについても検討しています。HRQoLとはHealth-Related Quality of Lifeの略で、日本語訳では「健康関連の生活の質」となります。運動トレーニングを行うことが生活の質にどのように影響するかとのことですね。

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結果

Fourteen studies were further selected for a meta-analysis to quantify the mean effect of the intervention and generate 95% confidence intervals (CIs) using the Cochrane Review Manager 5.0.25. For two of the outcomes included (exercise capacity and HRQoL), studies showed large heterogeneity and thus, a meta-analysis was considered inappropriate. Pulmonary function (forced vital capacity and forced expiratory volume in 1 s) was significantly enhanced after the intervention [standardized mean difference (SMD) = 0.38; 95% CI 0.14, 0.63 and SMD = 0.27, 95% CI 0.11, 0.42, respectively]. In comparison with the patients in the control groups, patients in the experimental groups spent less days in the hospital (mean difference = −4.83, 95% CI −5.9, −3.76) and had a significantly reduced risk for developing postoperative complications (risk ratios = 0.45; 95% CI 0.28, 0.74). In conclusion, preoperative exercise-based training improves pulmonary function before surgery and reduces in-hospital length of stay and postoperative complications after lung resection surgery for lung cancer.

Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.

論文検索サイトで1656の論文が条件に該当しました。その内容を吟味して、不適当な論文を除外して、最終的に14の論文が調査対象となっております。

運動の実施期間は1週~10週間で、中央値が4週間となっております。運動強度は中~高強度となっています。

運動強度について詳細を知りたい方はコチラ

運動強度の評価方法~有酸素運動編~、がんサバイバーも知っておこう!

2021年4月3日

解析の結果、運動機能とHRQoLは研究間で統一されてないことが多く、解析には不適切となってしまっております。

Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.

こちらの図は呼吸機能についての結果を表しています。Aが強制呼気量、Bが強制肺活量です。メタアナリシスで使用されるフォレストプロットという結果になります。

細かい内容は難しいので、右の横棒とひし形だけに注目してください。

ひとつひとつの横棒は、ひとつひとつの論文の結果を表しています。横棒が真ん中の「1」の縦線より左に寄るほど術前運動トレーニングを行うと呼吸機能が低下する、右に寄るほど術前運動トレーニングを行うと呼吸機能が改善するという結果になります。

そして、下のひし形が、それぞれの論文の結果を統合した結果となります。つまり、このひし形が左に寄るほど術前運動トレーニングを行うと呼吸機能が低下する、右に寄るほど術前運動トレーニングを行うと呼吸機能が改善するという結果になります。

術前リハビリテーションを行うことが、何かしらの影響を及ぼすという結果は、ひし形が左か右に寄った場合だけです。ひし形が真ん中の「1」の縦線に重なる場合には、術前リハビリテーションを行うことは、行わないことと比較して変化はないという結果になります。

今回の結果では、、ひし形が右に寄っているので、術前運動トレーニングを行うと呼吸機能が改善するという結果になります。

Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.

こちらの図は手術後の在院日数を表しています。

ひし形左に寄っているので、術前リハビリテーションを行うと入院日数を減少させるという結果になります。

Sebio Garcia R, Yáñez Brage MI, Giménez Moolhuyzen E, et al. Share Functional and postoperative outcomes after preoperative exercise training in patients with lung cancer: a systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):486-97.

こちらの図は術後合併症のリスクについてを表しています。

ひし形が左に寄っているので、術前運動トレーニングを行うと術後合併症のリスクを減少させるという結果になります。

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考察

今回の研究で、肺がん患者の術前運動トレーニングは、呼吸機能を改善させ、術後の在院日数を減少させ、術後の合併症のリスクを減少させていました。

前回紹介したメタアナリシスと同様の結果ですね。質の高いメタアナリシスで同じ結果が出たということは、より信頼性が高い結果と思われます。

しかし、患者さんにとっては術後の生活の質が最も重要ですので、QOLの結果が解析できなかったのは残念ですね。

今後、QOLに関する論文等も紹介できればと思います。

いずれにしろ、中~高強度の運動トレーニングは手術前から行っておいた方がよいようです。中等強度というと、「ややきつい」くらいの強度なので、早歩き~ジョギングくらいの少し息が上がるくらいの負荷はかけていいようです。

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まとめ
・肺がん患者の、術前運動トレーニングの効果を調査した論文の紹介。

・手術前に運動トレーニングを行うことで、呼吸機能の改善、術後在院日数の減少、術後合併症の減少が期待できる。

・「ややきつい」と感じる少し息が上がる程度の運動は手術前に行っておいた方がよいと思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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