簡単な運動強度の評価、フェイススケールとは?

以前の記事で、運動強度の評価方法について紹介しました。

有酸素運動の運動強度はどのように設定するか

2021年4月3日

正直なところ、運動強度の評価を行うのは難しいですね。どれくらいの運動負荷が自分にとって適切かと悩んじゃうと思います。

今回は、簡単に運動強度を評価する方法を論文から紹介します。

お腹周り-14.4cm【VアップシェイパーEMS】

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、高齢者と心房細動のある患者さんに対して、フェイススケールといった表情から運動強度を選んでもらう評価が、最大酸素摂取量を検査することとと同じような効果があるのかを検証している内容です。

「Nashimoto S, et al. Relationship between the face scale for rating of perceived exertion and physiological parameters in older adults and patients with atrial fibrillation. Physiol Rep. 2021; 9: e14759. doi: 10.14814/phy2.14759.」2021年に発行された論文です。

お腹周り-14.4cm【VアップシェイパーEMS】

対象と方法

A total of 90 patients with sinus rhythm (SR) (74 men, 16 women) and 22 with AF were enrolled. Participants’ responses were recorded using the RPE‐face scale and compared with exercise intensity, heart rate, oxygen uptake, and minute ventilation during the exercise test. We determined the AT by the V‐slope method.

Nashimoto S, et al. Relationship between the face scale for rating of perceived exertion and physiological parameters in older adults and patients with atrial fibrillation. Physiol Rep. 2021; 9: e14759. doi: 10.14814/phy2.14759.

対象は、心房細動といって、心臓が小刻みに震えて働きが悪くなるような症状で病院に紹介された184名です。心房細動は、運動時に注意が必要なものではありますが、自覚症状がない患者さんも多いです。

184名から除外基準に該当したものを除外して、最終的には、運動テスト中に心房細動が出なかった群(SR群)90名と運動テスト中に心房細動が出た群(AF群)22名に群分けしています。

対象者は、エアロバイクを使用して最大酸素摂取量という運動強度を測定しています。その測定中に1分ごとに、運動のきつさについて「フェイススケール」というものを使用した評価を行っています。

Morishita, S. , et al. Face scale rating of perceived exertion during cardiopulmonary exercise test.  BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2018; 17, 10.1136/bmjsem-2018-000474

顔の表情を見てから、自分のきつさが0~10のどれくらいかを判断するわけです。

表情がある分わかりやすい評価ですよね。0が「まったくきつくない」、2が「少しきつい」、4が「ややきつい」、6が「きつい」、8が「非常にきつい」、10が「これ以上耐えられないほどきつい」といった感じですね。

もともとフェイススケールは痛みの評価に使用されていますが、それを運動強度の評価に置き換えて使用してみた研究です。

エアロバイクで測定した最大酸素摂取量や心拍数での運動強度と、フェイススケールで評価した運動強度に関係性があるのかを調べています。

お腹周り-14.4cm【VアップシェイパーEMS】

結果

Correlations between RPE‐face scale and physiological parameters were significantly positive for men with SR and women with SR and AF. However, differences in the correlation coefficient between age and SR or AF were not statistically significant. The cutoff value for AT of the RPE‐face scale was “4,” showing high sensitivity and specificity.

Nashimoto S, et al. Relationship between the face scale for rating of perceived exertion and physiological parameters in older adults and patients with atrial fibrillation. Physiol Rep. 2021; 9: e14759. doi: 10.14814/phy2.14759.
Nashimoto S, et al. Relationship between the face scale for rating of perceived exertion and physiological parameters in older adults and patients with atrial fibrillation. Physiol Rep. 2021; 9: e14759. doi: 10.14814/phy2.14759.

こちらの表は、エアロバイクで測定した最大酸素摂取量や心拍数での運動強度と、フェイススケールで評価した運動強度との関係性を示しています。

最初の行のSinus rhythmというのが、心房細動がない患者の群という意味です。その下の行のMenが男性、Womenが女性となります。

その下の行の「≥65 years old」は65歳以上、「<65 years old」は65歳未満となります。

一番右端のAtrial fibrillationというのが、心房細動がある群という意味です。

その下の行のn=○○というのは人数のことです。

つまり、心房細動のない群のうち、65歳以上の男性が37名、65歳未満の男性が37名で、65歳以上の女性が10名、65歳未満の女性が6名で、心房細動がある患者が22名ということです。

結果の項目は左の列に記載されています。とりあえず、「HR」が心拍数、「VO2」が最大酸素摂取量ということがわかれば大丈夫です。

そして、それぞれの数字はその関係性を表しています。()内の数字はとりあえず気にしなくて大丈夫です。

例えば、65歳以上の男性と最大酸素摂取量の場所には、0.93という数字が書いています。それが65歳以上の男性と最大酸素摂取量の関係性ということです。

数字の意味としては、1に近づくほど関係性が高くなるということになります。

大体、「0.2-0.4」:わずかに関係性がある、「0.4-0.7」:中くらいの関係性がある、「0.7-1」:強い関係性があるといった感じです。

つまり、心房細動がない65歳以上の男性では、最大酸素摂取量で評価した運動強度とフェイススケールで評価した運動強度は強い関係性があるということがわかります。

改めて数値を見ますと、HRとVO2の列は全てが0.9より大きい数値になっていますので、心房細動があってもなくても、65歳以上でも以下でも、男性でも女性でも、すべての人において、エアロバイクで測定した最大酸素摂取量や心拍数での運動強度と、フェイススケールで評価した運動強度は強い関係性があるということになりますね

Nashimoto S, et al. Relationship between the face scale for rating of perceived exertion and physiological parameters in older adults and patients with atrial fibrillation. Physiol Rep. 2021; 9: e14759. doi: 10.14814/phy2.14759.

最大酸素摂取量を測定すると、ATという有酸素運動から無酸素運動に変わるタイミングの運動負荷がわかります。

ウォーキングや自転車こぎは有酸素運動なので、無酸素運動にならないギリギリの運動負荷がいいとされていますので、このATを運動負荷として用いることも多いです。

この図は、そのATの運動負荷が、フェイススケールでいえばどのくらいになるかを示しています。

図の見方は難しいので省略しますが、結果としてはフェイスケール「4」の「ややきつい」が、ATのカットオフ値となっています。つまり、フェイススケールが4を超えると運動負荷がATに達している可能性が高いということです。

お腹周り-14.4cm【VアップシェイパーEMS】

結論

今回の研究では、心房細動があってもなくても、65歳以上でも以下でも、男性でも女性でも、すべての人において、エアロバイクで測定した最大酸素摂取量や心拍数での運動強度と、フェイススケールで評価した運動強度は強い関係性があるということがわかりました。

運動強度の評価っていうのは少し複雑ですので、6つの表情を見る評価だけでできるのであればすごく簡単ですね。

自分で運動を行った後に、フェイススケールを見て、「4」くらいになる運動負荷にしておけば問題ないと思います。

高強度の運動を行う報告も多いので、自分が耐えられるのであればフェイススケールが「4」を超えても、そんなに気にしなくていいでしょう。

あまりきつくて続けられないのであれば、運動強度を下げて「4」くらいに調整してもいいと思います。

運動強度が「4」より小さいと、運動強度が低い可能性があります。

最近では、低強度の運動に関する報告もありますので、低強度であっても効果はあると思いますが、運動強度をアップできそうであれば、「4」を目標に運動強度を上げてみましょう。

いずれにしろ、継続できる運動負荷にするのが、まずは一番です。

今回の結果は、心房細動のある患者さんが対象で、平均年齢が60歳くらい、さらに女性の対象者が少なかったので、すべての方に同じことが言えるわけではないことにはご注意ください。

がん患者さんにまったく同じように使用できるかはわかりませんが、運動強度の評価の一つとして、参考にしてもらえれば幸いです。

お腹周り-14.4cm【VアップシェイパーEMS】
まとめ
・フェイススケールを使用した運動強度の妥当性を検討した論文の紹介。

・最大酸素摂取量や心拍数での運動強度と、フェイススケールで評価した運動強度は強い関係性があった。

・ATの運動強度のカットオフ値は、フェイススケールの「4」であった。

・フェイススケールの「4」前後を目標に運動負荷を調整していいと思われるが、年齢・性別を含めたすべてのがん患者に適応するかは検討が必要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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